紅き刃
現在、城門では焔赤兜vs下僕の十二星座達との戦いが繰り広げられていた。
「おーい、私にも焼かせろよ!」
シンクの目の前では自分が斬ろうと狙いを済ました相手が何回も何回も横取りされるように斬り倒されていた。
「(ダメだ!振り返ってはいけない‼︎)」
「(聞こえないフリだ!聞こえないフリをしろぉ!)」
「(下僕を救う為だぁぁ!!)」
シンクに斬られたら最後、敵は丸焼きになってしまう。三人は死に物狂いで下僕の十二星座をシンクより先に倒していく。
「この調子でいけば・・・っ⁉︎こ、これは」
「戻され・・・ぐあっ!!」
「お、おい!どうした!何があっ、ぐはっ‼︎」
突如、三人を何者かが襲った。
「なっ、お前ら!なんで、何があった⁈」
ノアンからもらった空気の剣で順調に敵を斬り倒していた三人が急にぶっ飛んできた。
「あ、あいつが・・・変な術を使って・・・」
「・・・っ⁉︎なんであいつがここに・・・くそっ‼︎」
倒されたシンクの部下達の目線の先にいたのはなんと、多重能力者となった復讐者のレリカだった。これは数分前のデヒトとの会話だ。
『了解しました、では私が行っても?』
デヒトが自分が向かってもいいかレリカに許可を求める。
『う〜ん・・・いいよ!・・・・あー、やっぱりダメ!』
『えっ・・・。どうしてですか⁈』
『私が行くから。ニーゼ達の相手は任せるね〜』
そして今、レリカは城門でシンクの目の前に立っていた。
「どうすんだよ・・・っ‼︎(ニーゼとノアンを呼ぶにしてもあの二人は城の中だぞ⁉︎)」
シンクはノアンの能力付与で下僕にされることはないが、レリカと戦って勝てる可能性など皆無だ。それにレリカと同じ復讐者のニーゼとノアンはレリカを倒す為に城の中に入っている。
「蟹座の皆さん、こんにちは〜。会うのは二回目だね!今回は殺しにきました〜!」
「“終炎の剣戟”!うらぁ!!」
シンクがいきなり大技をレリカに放った。
「考えたけど何も思い浮かばないからとりあえず自分の最強技を使ってやったぜ!どうだ!」
シンクの攻撃を見た焔赤兜の仲間達が集まってきた。
「そんな大技使って急にどうした?」
「レリカだ、“例の存在”がきやがった・・・」
「そ、それは本当か⁈ニーゼやノアン達は⁉︎城の中に攻めていった奴らはやられたのか⁉︎」
「それはわからないけど・・・」
焔赤兜の将軍シャブニカはレリカが現れたことに困惑している。
「とりあえず、そのレリカはどうした?」
こんな状況でも冷静なのは副将ベニカだ。将軍と副将を入れ替えたほうがいいんじゃないか?と、思うかもしれないが実力ではシャブニカの方が少し勝っているので役職の交換はしないようだ。
「レリカは私の攻撃をくらって、その辺にいるはず・・・っ⁉︎どこ行きやがった!」
「全員戦闘態勢、武器を構えて警戒!」
レリカの居場所がわからなくなった瞬間、ベニカは焔赤兜の皆に指示を出し、全員指示通りに武器を構え、円を作るように全員で固まりながらあたりを警戒する。
「ライト、地面を蟻地獄に変更」
レリカの声だけが聞こえた。すると、次の瞬間、焔赤兜が密集していた地面の一部分が崩れ落ちた。そして、そこからどんどん周りに広がり、蟻地獄が形成された。
「なっ!なんだこりゃぁ!地面が!」
「うわぁ!!吸い込まれるっ!!」
「副将ー!!助けてくれー!!」
レリカの作った蟻地獄に焔赤兜の真ん中いた人達から順に体が砂に埋もれていく。
「全員、防御の体勢をとるんだ!私の剣で蟻地獄もろともこの辺りをぶっ壊す」
「ん〜、そうはさせないよ」
突如、何もないところからレリカが出てきた。おそらく、レリカは自分が持っている能力を使って自分の姿を隠していたのだろう。
「防げるものなら、防いでみろ。“紅炎の一閃”」
そう言ってベニカは自身の魔力を愛刀“紅華”に集中させる、すると、“紅華”の刀身が紅く輝き始めた。そして、その紅く輝く刀身をベニカは勢いよく地面に突き刺した。
「“防ぐ”よりも安心安全な方法を教えてあげる!それは起こったことを瞬時に無かったことにすること〜!はい、“事象消去”。まぁ、それができるならだけどね」
蟻地獄を破壊するために放ったベニカの攻撃はその攻撃の事象を掻き消され、無かったことになってしまった。そして、焔赤兜は為す術がないままどんどん砂に埋もれていく。
「くそっ!もがけばもがくほど埋まっていく‼︎」
「“紅炎の一閃”!」
「何度やってもむーだ!“事象消去”」
ベニカはもう一度攻撃をしたが、さっきと同じようにレリカに掻き消されてしまった。
「蟹座はここで終わりでーす!大人しく生き埋めになってください!」
「・・・諦めてたまるか!私らはニーゼやノアン達がお前を倒すまで戦い続けるんだ!」
「その通りだ!よく言ったぞシンク!我ら焔赤兜はどんな状況でも決して諦めたりはせん!」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、めんどくさそうだから、さっさと終わらそうか。“高波”をアレンジ、“砂塵の高波”」
レリカは“高波”の水を砂で代用し、新たな技を作り上げた。そして、その砂の波は焔赤兜に向けて放たれた。
「くっ、これは流石に万事休すか・・・っ⁉︎」
「くっそぉぉぉぉ!!・・・っ⁉︎」
シャブニカとシンクが死を悟った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。
「ベニカに復讐者の能力に対する因果が有ることを無にする!今だベニカ!」
「なっ、なぜノアンがここに⁉︎」
「目的は蟻地獄からの脱却と砂の波の破壊。いくぞ、“紅華”。“紅炎の一閃”!」
そう強く言い放って“紅華”の紅く輝く刀身を勢いよく地面に突き刺した。
「まっず、ノアンに気を取られてた、“事象消去”」
レリカは今まで通りに事象を搔き消した。しかし、次の瞬間、これまでとは違い辺り一面が紅く染まり一瞬にして蟻地獄もろとも城門前の地面が吹き飛んだ。レリカの能力が全く通じていなかった。
「な、何がっ‼︎私は唱えたはず・・・」
レリカは目の前で起きたことが理解できていなかった。しかし、これで焔赤兜の動きを封じていた蟻地獄が無くなった。だが、まだピンチは続く蟻地獄は破壊されたものの、レリカが“高波”をアレンジして作り上げた“砂塵の高波”がすぐそこまで来ていた。
「ノアン、セツキをここに転送できるか?状況は伝えてある」
「わかった、任せて!“レオン隊のアジト”と“この場”をつなぐ空間が無いことを有にする!」
すると、何もない空気の中に亀裂が入り、レオン隊のアジトへと続く“次元の裂け目”が出来上がった。
「完全復活〜!みんなおまたせ〜」
ノアンの作り出した“次元の裂け目”から傷を治し完全に復活を果たしたセツキが飛び出てきた。
「セツキ!早速やるぞ!」
「おっけ〜」
シンクとセツキの二人は“砂塵の高波”の目の前まで歩いて行った。そして、そこで自分の短刀を抜いて構え、魔力を短刀に集中させた。二人の短刀が二人の魔力によって、紅く輝く。
「「合剣技!!“赤爪の爻剣撃”」」
二人の息ぴったりの合剣技は“砂塵の高波”を見事に粉砕した。しかし、その時レリカは目の前で起きた散々な出来事を理解し、その原因である焔赤兜を全力で殺しにきていた。まず、最初に狙われたのは合剣技を放ったシンクとセツキの二人だ。
「死になさい、“加魔刺突”」
レリカは腰に差してあった“レイピア”を抜いて魔力を纏わせた状態で二人めがけて突き刺そうとする。
「レリカとの距離が有ることを無にする!せやっ!」
「私の優秀な部下達をそう容易く殺されては困る」
レリカの行動に気づいていた二人がレリカの攻撃を受け止めた。
「ノアン!」
「ベニ姐〜!」
シンクとセツキの二人はノアンとベニカに感謝した。
「レリカ、君の復讐は終わりだ」
「くっ!うるさいっ!お前ら何も知らないくせに‼︎私の復讐を邪魔するなぁぁぁァァァァァ!!!!!」
こんにちは、作者のユウキ ユキです。最近、昔よく聴いていた曲を聴いています。とても懐かしい思い出が次々と思い浮かんで、その時の自分に戻ったような気持ちになります!昔聴いていた曲を思い出して聴いてみるのもなかなか面白いですよ!皆さんも是非!では、また次回〜




