遅れた突撃
「レリカ様!逃げられました」
「はぁ⁈逃げられた⁉︎あの状況でどうやって逃がすんだよ」
玉座の間にいた下僕の十二星座から予想外の報告を受けたレリカは失望した。
「あー、冷静に考えてみるとあっちにもいるのか」
ニーゼとノアンがいる事をど忘れしていた。それにその二人だけでなく、他にも腕の立つ戦士がいる事を思い出した。
「レリカ様!今度は城門に敵が現れました‼︎」
「城門に⁈あいつら、もうそんなに移動したのか⁉︎」
先程まで自分の下の階にいた星放社がこの短時間で城門まで移動するには早すぎる。
「いえ、あれはおそらく蟹座を司る、焔赤兜、唯一レリカの下僕にならなかった砂漠の十二星座です!」
「なんだ、あいつらか。タイミング的にニーゼ達とは仲間か?それとも偶然が重なったか。まぁ、どちらにせよ、ここに攻めてきたんだから殺そうか。もう下僕は十分だからね〜」
「了解しました、では私が行っても?」
デヒトが自分が向かってもいいかレリカに許可を求める。
「う〜ん・・・いいよ!・・・・あー・・・」
玉座の間から落下して星放社は下僕の十二星座からの攻撃を回避し、追っ手を振り切った後にすぐ近くにあった小部屋に入り込んでいた。
「一時的に僕達を認識できなくした、この部屋から出たらすぐに見つかるけど、とりあえずここは安全だ」
「はぁ、助かったぁ〜」
危機的状況から脱出し、緊張がほぐれたのか力が抜けたようにクレンはその場に座り込んだ。
「今は助かったけど、クレン、俺たちは国を取り戻しにきたんだ」
「そうだね、こんなところで休んでる場合じゃないね・・・」
ニーゼの言う通り、目的はまだ成し遂げてない。クレンは気持ちを切り替えてゆっくりと立ち上がろうとした。
「でも、休んでる場合じゃなくても次の戦いでやられない為にもこの休息は必要だよ。今はしっかりと休もう」
疲労が溜まった状態での運動は身体に負荷がかかってしまう。どんな状況でも自分の体調をしっかりと考えて行動した方がいいのだ。つまり、“無理は禁物”ということだ。
「う、うん」
クレンは気持ちを落ち着かせてしばらく休息をとることにした。
「・・・それで、あの人数差をどうするかなんだよね」
小部屋の中に避難したはいいが、外にいる大人数の敵をどうするかについてレオネ達は作戦会議をしていた。ニーゼとノアンも会議に参加したが、なかなかいい案が出てこない。すると、外を見張っていたレグルから良い知らせが来た。
「なんか、外の奴らが凄い勢いでどっか行ったぞ」
「なんだって⁉︎」
「でも、どうして急に?」
外の下僕の十二星座の行動に驚きと同時に疑問が出てきた。
「“城門がなんとか”って言ってた」
“城門”という言葉を聞いて国の奪還作戦を考えたニーゼはピンときた。
「・・・っ⁉︎あいつらだ!焔赤兜が自分達で判断して攻め込んだんだ!」
本来ならニーゼ達が玉座の間について合図をしたら焔赤兜が攻め込み、城門に敵を引きつけ、レリカを倒す作戦だったのだが、合図の方法を話し合っていなかった。そして今、そのことに気づいた焔赤兜が自分達のタイミングで城門に攻め込んだようだ。
「でも、私達でさえあの人数を相手に逃げ出したのに。・・・焔赤兜だけじゃ戦力的に厳しいんじゃ・・・」
クレンはさっきの状況の経験で戦力差の恐ろしさを実感し、焔赤兜の心配をする。
「・・・ニーゼ、僕が援護に向かうよ」
「ノアン⁈」
「なにいってんだ!おまえ と ニーゼ の ふたり でレリカを たおすんじゃないのか⁈」
レリカを倒せるのはレリカと同じ復讐者しかいない。そのことは星放社のみんなも知っている。
「確かにレリカを倒すのは難しくなると思うけど、やっぱり仲間達の命が一番大事かなって。誰か一人でもかけたら、この戦いに勝っても僕は悲しい。みんな笑顔でハッピーエンドにはこれしかないと思うんだけどいいかな?」
ノアンはレリカを倒すことが難しくなることをわかった上でニーゼに相談していた。
「・・・わかった。それで行こう」
ニーゼは少しだけ考えてノアンの提案を受け入れた。
「ニーゼ‼︎それで、もしレリカを倒せなかったら・・・」
ニーゼの判断をレオネは止めようとした。
「大丈夫、俺たちは復讐者だ。やられっぱなしにはしない!レリカは俺が必ず倒す」
レオネ達の不安を消し去るようにニーゼは自信満々で答えた。
「頼んだぞ、ノアン!」
「ああ!そっちもな!」
ニーゼ達とノアンは別れて焔赤兜の救援に向かった。
その頃、城門では激闘が繰り広げられていた。
「シンク、一人で戦うな!我らは共に戦っているんだ!二人以上で敵一人を相手にしろっ!」
城門に攻め入った焔赤兜の作戦はこうだ。全員がバラバラに戦ったら一瞬で制圧されてしまう。しかし、相手はレリカの手によって即席で作られた下僕の十二星座という気持ちも戦い方もバラバラな複数の部隊の寄せ集めだ。それならば長年どんな時も共に戦ってきた仲間達と息を合わせて立ち回れば、簡単にはやられない最強の焔赤兜になるというわけだ。
「この空気の剣という剣は使いにくいな」
ノアンからもらった空気の剣の使い心地がベニカにはイマイチだったようだ。
「私が紅華で敵を行動不能にするからお前たちがこの剣で解放してやってくれ」
「了解しました!お任せください副将!」
「いくぞ、紅華」
ベニカは空気の剣を部下に預けて、腰に差してあった愛刀“紅華”を鞘から抜き、目の前の敵を行動不能(致命傷)にしていった。
「さすがはベニ姐だ、私もそろそろ本気出すかな!」
「「「「えっ・・・」」」
「“詠唱、必殺魔法・・・真紅破叉廻”そして、“廻る炎の剣”」
今回も前回同様、空気の剣に炎を纏わせ、必殺の剣を作り出した。
「いくぜェ!うぉぉぉ!!」
“廻る炎の剣”に斬られると切り傷から発火し、やがて全身を焼き尽くす。もはやシンクには下僕になった十二星座を下僕から解放して仲間にするという考えはないようだ。しかし、元々は国を守る為に戦っていた戦士たちだ、燃やすわけにはいかない。なので、シンクと一緒に戦っている人たちはシンクよりも先に敵を切り倒す為、シンクが“廻る炎の剣”を発動させたその瞬間から限界を超えて常時全力で戦っていた。
「シンクに斬らせるなァァァ!!」
「うぉぉぉぉ!!!」
「お前達は俺たちが救ってやるぞぉぉぉ!!」
この戦場で密かに“シンクvs下僕を丸焼きから救うべく立ち上がった人たち”の戦いが始まった。
一方、焔赤兜のことはノアンに任せて、玉座の間に向かうことになったニーゼ達だが、まだ避難した小部屋にこもっていた。
「勝てるか心配なのか?」
不安そうな顔を浮かべていたレオネに実の弟であるレグルが声をかけた。
「だって、ノアンが居なくなっちゃったし・・・」
「大丈夫だよ!レオ姐!みんなでやれば勝てるって‼︎」
すぐそばにいたクレンもレオネを励まそうする。一方で、ニーゼもなにやら何かを考えているような少し暗い顔をして佇んでいた。すると、ザギンが声をかけてきた。
「ニーゼ、ノアンがいなくても かてるのか?」
「それは俺の能力でどうにかするさ!ただ・・・」
「あ?なんだよ、じしん が なくなったのか?」
「いや、戦って負ける気は全然しないんだけど、なんか嫌な予感がするんだ」
レリカとの勝負に関して不安は全く無いニーゼだったが、何か他のことに不安を感じていた。
「しっかりしろ!おまえが まけたら だれが かわりに たたかうんだ!」
「そうだな、俺はレリカとの勝負に集中するよ!他のことは頼むぞ、ザギン!」
「まかせておけ!」
こうして星放社は小部屋から出て、レリカのいる玉座の間へと移動を始めた。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!最近、アニメ作品の原作を購入して読み始めました!テレビで見るアニメとはまた違う魅力があったり、作者の作品に対する想いが凄く伝わってくるような気がしたりして、読んでいてとても楽しいです。これを機に他の作品の原作も読んでみたいと思います!では、また次回〜




