スナハ王国で一番大きな家
俺は今スナハ王国という国にいるらしい。そこで出会った王国騎士団直属の砂漠の十二星座のレオン隊副隊長のクレンとその部下と一緒にクレンのお財布を探している。クレンは紅葉のような色合いの短めの髪が特徴的女騎士だ。年は15〜20歳の間くらいかな?ちなみに俺は19歳の未成年だ。
「よし!とりあえず犯人の特徴を教えてくれ」
「お前の服装と一緒」
あー、そうだった。俺とほぼ同じだったな。
「じゃあ、財布!財布はどこで盗まれたんだ?」
「財布はずっと家に置いてあったんだ。それをやられたみたい」
持ち歩いていなかったのか。
「家か、そこに案内してくれ」
「よし、わかった。普通なら案内とかはできないけどニーゼは特別だ」
特別?どうことだ?何かしらの事情があるのかな?
そう考えながらしばらく歩くとこの国で一番大きな建物についた。
「お前達はここで待て」
「「「了解です!お気をつけて!」」」
入り口には門があって、中に入ると大きな玄関、中庭や噴水、すごく高い天井、その天井に吊り下げられてるシャンデリア。とても豪華な家みたいだ。クレンに案内されながら家の中を進んでいくと何やら立派な椅子に座る偉そうなおっさんがいた。
「クレン、お前の家・・・お城じゃねぇーか!そこのおっさん絶対王様じゃん!この国のトップじゃん!」
「そ、そうだよ〜。だ、だから特別って言ったじゃん!ちゃんとお父さんには連絡してOKもらったし」
「お父さん⁉︎そこのおっさんが⁉︎」
「お前さっきから おっさん おっさん うっさいな!私は王だぞ!少しは気にしろ!」
つまりはこういうことか。ここはお城で目の前の椅子に座ってるおっさんがこの国の王様、その王様がクレンのお父さんだからクレンは王女様だ。
「お、おま、お前、王女だったのか・・・」
「うん!王女とレオン隊副隊長やってます!」
やってます!って王女が戦って大丈夫なのか?
「なぁ、おっさん!クレンが騎士やってんのは知ってるのか?」
「ああ、知っている」
「王女が騎士なんて聞いたことないぞ」
「事情があるんだ。おっさん呼ばわりするお前には関係ない」
「そうか、わかった。もうこの話はしねぇよ」
(ご、ごめん。ニーゼ、お父さんはまだお前が信頼できる人間かわからないだけで)
「わかってる、会ったばっかのやつに色々喋って情報漏洩とかしたらまずいしな」
「ところでクレン、何か用があって来たんだろ?」
「うん、ニーゼを私の宝物庫の鍵が置いてあった鍵の部屋に連れて行きたいんだけど、いい?」
なんで宝物庫なんだ?財布は?
「あの部屋はクレンの鍵が盗まれてから完全封鎖だからな。何故その男を連れて行きたいのだ?理由を述べてみろ」
「ニーゼは私の宝物庫の鍵をニーゼの不思議な力で一緒に探してくれるの、それでまずは盗まれた場所を見たいって」
「不思議な力?」
「ちょっと待て!!宝物庫の鍵だと⁉︎お財布はどうした?」
さっきまで盗まれたのはお財布って言ってただろ。
「あー、ごめん。言ってなかったね。さっきさ私の部下が国家最大級の犯罪って言ってたでしょ?」
「ああ、でもそれはあの騎士の奴がふざけて言っただけじゃ・・・ないの?」
おっさんとクレンが首を横に振って否定した。
「あれはまじで国家最大級の犯罪なんだよ。盗まれたのが私の宝物庫の鍵だから、この国の王女の財産が盗まれるかもしれないの!」
「宝物庫の鍵を外ではお財布って言ってたのか。なるほど。いや、なるほどじゃねーよ!最初から鍵って言えよ!てか王女の財産だろ?まじでやばいじゃねーか!」
おいおい、まじかよ。これ見つけられるのか?国の王女の財産が目当てってなに?テロリスト?普通じゃねーなこれ。ペン一本でどうにかなるのか?でもまあ、手伝うって言ったしやるしかないか。
「大丈夫なのか?その男、事件の内容をよくわかってないみたいだったが」
「あ、ああ、大丈夫だ。鍵、取り戻してやるよ。探すのがお財布から鍵に変わっただけだろ?盗られたやつを取り戻すのは変わらない平気だ」
「ありがとう。ニーゼ」
「ところでニーゼとやら、お前の不思議な力とは何だ?」
あー、そっか。どうすっかな。
「えっと、俺の力は世界を書き換える能力で、詳しく言うとこの世界に存在するもの設定を書き換える能力だ」
おっさんは誰が見てもわかるくらい不思議そうな顔をしている。
「まあ、そうだよな。今から実際に能力を使うからよく見ててくれ」
「なにするの?」
「大丈夫だ、クレン。おっさんの座ってる椅子の素材を木にするだけだ」
「じゃあ、ちょっと待ってなんならこの国で一番質のいいエクリの木にしてよ!」
エクリの木?やってみるか。
「ライト!その椅子の素材を全てエクリの木に変更する」
ペンを構えて詠唱した・・・が、椅子に変化はなかった。なぜだ?書き換えられなかった理由はなんだ?俺はチャンスの女と言った通りに能力を使った。書き換える対象は生き物ではない。なんだ?何かが足りないのか?
「ニーゼ?力使った?変化がないみたいだけど」
「わかってる。何かがダメだったみたいだ」
他のもので試すか。
「ライト!その柱の素材を全て木に変更する!」
同じようにペンを構えて詠唱したら今度は成功した。城の柱が一本だけ木に変わった。
「ふぁっ!?」
おっさんは目が飛び出そうなくらい驚いている。
で、できた。石英の柱が木になりやがった。多分これで能力のことはわかってくれたと思うが、なぜ椅子はできない?
「おーい、ニーゼこれエクリの木じゃないぞ!」
「え?ああ、忘れてたわ」
ん?ちょっとまて、エクリの木に変更することはできなくても、普通によくある木ならできた。違いはなんだ?
「ニーゼ、これは街中やうちの中庭にもある珍しくもなんともないラクリの木だよ」
ラクリの木・・・知らない。だが、見たことはある。中庭の木ならここに来る途中に見た。それに比べてエクリの木は見たことがない!違いはこれか!
「クレン!エクリの木は城にあるのか?」
「えっ、あ、あるけど?どうしたの?」
「見せてくれないか!多分見ればエクリの木に換えることができるかもしれない!」
「よ、よくわからないけど、いいよ。こっち!付いてきて!」
俺はクレンの後を追いかけた。この時おっさんが一人で柱が木に変わった玉座の間に取り残され、状況の理解が追いついかなくて密かにパニックになっていたのは誰も知る由もない・・・
クレンについて行くこと数分、城の裏側にやってきた。そこに一本天高く伸びた立派な木が立っているのが見えた。その木の周りにはたくさんの植物が生い茂っていて城の中庭とは比べ物にならないほど豊かに育っていた。
「すごいな」
この言葉しかでてこなかった。凄すぎて呆気にとられてしまったのだ。
「すごいでしょ!エクリの木はね、自分が成長する為の養分を周りの植物にも分け与え一本たりとも枯らすことなく、それでもなお一番大きく立派に育つ植物の王様なの。だから世界中の国の王様達は必ずと言っていいほど、この国みたいに城の近くにこの木を生やして、自分が一番大きな存在でありながら、決して独裁者に成り下がることなく国民一人一人が豊かに暮らせる国をつくること誓っているの!」
「なるほどな〜、本当に凄い木なんだな。そんな気持ちが込められているなんて・・・あっ」
ずっと見てられそうな気持ちになるけど、おっさんが待ってるのを思い出した。
「クレン、そろそろ戻ろうぜ。ずっと待ってるだろあのおっさん」
「あー!そういえば!忘れてた!ニーゼの能力を見せて早く鍵を取り戻しに行かないと‼︎」
俺とクレンは急いで玉座の間に戻ってきた。
「お、おう!おっさん、今から椅子をエクリの木に書き換えるからな!」
柱を木に変えたことなど忘れて俺はおっさんの座る椅子にペンを向けて唱えた。
「ライト!その椅子の素材を全てエクリの木に変更する!」
今度は成功した!おっさんの座る椅子は金属製の立派な椅子だったが、今はエクリの木で作られた木製の椅子に変わった。おっさんはまたもや目が飛び出そうになりながら自分の座る椅子にびっくりしている。
「どう?お父さんいい?私の隊のレオード隊長を頼ろうとしても連絡がつかないの。今はニーゼの力に頼るしか・・・」
「えっ?あ、ああ、わかった。いいだろう。ニーゼ、クレンの鍵を頼む」
おっさんは柱と椅子を警戒しながら見たり触ったりしていたが、俺の力に偽りがないことがわかり鍵の部屋へ行く許可をくれた。
「やった!」
「おう、任された!」
「レオン隊のレオード隊長のことは王国騎士団の方でなんとかしよう」
そう言ってクレンになにかの鍵を渡した。おそらく鍵の部屋の封鎖を解除する為の鍵だろう。
「ありがとうお父さん!」
「なに、当然のことだ!はっははは」
なーに、にやにやしてんだ。さっきまで柱と椅子にびびってたくせに、クレンに感謝された瞬間デレデレしやがって。まあ、この国がいい国ってことかな。
「ほら行くよ!ニーゼこっち!こっち!」
「わっ、わわっ、ひっぱるなってー」
クレンに手を引かれながら城の中の階段を上って、最上階まで来た。すると目の前に頑丈そうな扉があらわれた。その扉をクレンが先ほど王様からもらった鍵で扉の封鎖を解きゆっくりと開けた。中を覗くと様々な形をした鍵がたくさん壁に掛かっている。
「この部屋に私の鍵があったはずなの」
「すごい量の鍵だな。この中からお前の鍵だけが盗まれたのか?」
「そうみたい・・・」
この中からクレンの鍵だけが盗まれたのはただの偶然なのか?
「うーん・・・鍵が盗まれるようなことしたのか?例えば人の物盗んだり、人の人生ぶっ壊したりとか」
「してないよ!そんなこと!」
「わー!ごめんごめん!悪かったって、剣を抜こうとするな!えっと、この部屋は普段は誰でも入れるのか?」
「え?うん、許可証があれば誰でも鍵を預けたり取りに来たりできるよ。あ、でもこの部屋には必ず一人で入る決まりがあるよ!誰がどの鍵の持ち主かを特定させない為ってお父さんは言ってた」
許可証があれば誰でもか、でも部屋には一人でしか入れないからなー。
「その許可証を持ってる人ってのはどんな人達なんだ?」
「お父さんが信頼できる人で騎士として国に貢献してる人達と城で働いてるメイドさんと執事さんだよ。城下町には別の鍵の部屋があるから、この鍵の部屋を使える人は騎士とメイドさんと執事さんだけかな」
そんな人達がおっさんを裏切って鍵を盗んだりするのか?この人達じゃなかったら、外部の人間か。
「あ、そうだ。普段この部屋に二人で入ったらどうなるんだ?」
今は部屋の機能は全て消して二人で部屋に入っているが、普段はそんなことはできない。
「二人で入ったら入り口が自動で閉まってお父さんに連絡がいくようになってるよ。その後はお父さんの命令を受けた王国騎士団が対処する仕組みかな」
なるほど、二人で入ったらわかるようになってるのか。うーん、これだけじゃ犯人なんてわからないな。犯人の特徴なら目撃証言でわかったんだけどな〜。
「はっ!そうだよ!目撃証言は誰から聞いたんだ?」
「えっと、白い服を着た人だったかな。見たことない人だったから外から来た人だと思う」
国民の顔を一人一人覚えてるのか。この国の王女なだけあるな。さすがだ。
「じゃあ、まずはそいつを探しに行くぞ!念のため宝物庫の方にも兵士を向かわせておけ」
「わかった。私の部下は城の外で待ってるからとりあえず外に出よう」
俺とクレンは城の外に出て門と近くで待っていたクレンの部下と合流した。
「「「副隊長!犯人はわかりましたか!」」」
「いや、まだだ。これから探しに行く、お前達は二手に分かれてくれ。片方は宝物庫の警備、もう片方は私達についてこい!」
「「「わかりました!」」」
「私に注目!それじゃあ、行くぞー!」
「「「「最初はグー、じゃんけん・・・ほい!」」」
「よっしゃあ!勝ちだ!」
「ちくしょう!負けか・・・」
「あいこだとぉぉぉ!」
クレンとクレンの部下達が急にじゃんけんを始めて喜んだり、悔しがったり、叫んだりしている。何かを決めるときにじゃんけんをする文化はどの世界でも同じみたいだ。
「じゃあ、負けとあいこは宝物庫、勝ちはついてこい」
「わっかりました!」
「わかりましたー」
「わかりましたぁぁぁ!」
クレンが慣れた感じで部隊を分け、部下も指示に従っている。こういう事をよくやっているのか?なんとも面白い部隊だ。
「そんじゃー、行くか!クレン!」
「おお!行くぞー!」
「「「おおー!!」」」
「宝物庫は頼んだぞー」
「「「おおー」」」
温度差がすげぇな。クランと離れるのがそんなに嫌なのか。そんなこんなで俺たちは目撃証言をした奴と宝物庫に目的を分け行動する事になった。
どうもこんにちは!作者のユウキ ユキです。毎週金曜日に投稿しています!今回も少し長くなってしまいました!ですが、それでも最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!もっとたくさんの人たちに読んでくれるように努力はしているつもりですが、まだまだ未熟者なので、書き方がおかしいところもあるかもしれませんが、応援よろしくお願いします!では、また次回〜