門番たる者、怪しい者は通すべからず
ノアンは走っていた。それはなぜか?その理由は簡単。人を待たせているからだ。
「く、クレンちゃん!も、もうそろそろ王都だよ‼︎」
「えっ?あ、そうですね!では出口が見つかり次第、ここから出ましょう!」
ノアン達はかなりの距離を走っていた。それなのにノアン以外の人達は全員、息を切らしていなかった。
「み、みんな、なんでそんなに元気なの?僕はもう疲れてきたよ、はぁはぁ」
「それはまぁ、一応、私達はこの国を守る為の組織に所属していますから、それなりの体力はありますよ」
そうだ、クレン達は砂漠の十二星座の獅子座を司るレオン隊に所属している。しかし、ノアンは特に軍隊などには所属していない。なので、体力も平均なみだ。国を守る為に日々訓練をしている者と特に何もせず普通に暮らしているのでは体力に大きな差があるのは当たり前だ。
「そうか、そうだよね・・・国を守るんだもんね、当然か」
「はい!レオン隊に所属する者は日々の鍛錬を怠りませんよ!なので、体力面では強いのですっ!おや、あれは出口じゃないですか?」
クレンが少し奥に地下水路から地上へ上がる出口を見つけた。
「おっ、やっとかー!よし、あそこから出よう」
「了解です!」
ノアンとクレンそして、クレンの部下達と共に元からある正式な出口から地上へ出た。
「うおっ、なんだここ⁈川?」
「いや、これはこの国の城の周りにある人工水路だよ」
ノアン達が出てきたところは城の周りにある川のような人工水路の側面に位置する、人が一人歩ける程度の細い足場だった。その足場から、この人工水路に架かる一本の橋に階段で行けるようになっており、ノアン達は足場から階段を使って橋の上まできた。
「よし、これで全員来たか?」
最初にノアン、その後にクレンの部下達が上がってきて、最後にクレンが上がってきた。
「うん!私が最後だから全員出たよ」
「それじゃ、城まで行きたいんだけ・・ど」
後ろを振り返ったノアンが言葉を失った。クレンもノアンが向いた方向を見るとノアンが絶句した理由がよくわかった。今現在ノアン達がいる端から北の方角を見るとそこにはスナハ王国の城が見えるのだが、今の城は普段とはかなり違っていた。
「なに・・あれ、多すぎない?」
「確かにいつもより、多いです。でも、どうしてあんなに警備兵を置いているのですか?」
「いや、僕に聞かれても・・・」
「そ、そうですよね‼︎と、とりあえず私達の目的地はあの警備兵の奥にあるので、行けるとこまで近づいてみましょう‼︎」
いつもなら城門の門番も兼ねた警備兵は二〜三人程度なのだが、今はいつもの十倍の人数がいた。なにやら、城の警備も担当している王国騎士団が焔赤兜から国の存亡を脅かす程の敵の存在を聞いて城の警備をいつもより強化したらしい。
「お前たちどこへ行こうとしているのだ?ここから先へは通すことはできない。お引き取り願う」
「あちゃー、やっぱり止められちゃったか・・・」
門番として当然だ。見知らぬ人が来たら通すわけにはいかないので、いたって普通の対応である。
「えーっとですね、僕達は決して怪しいものでは無くて、えーと、中にいる焔赤兜に用があってきたんですけど・・・」
ノアンが正直にここに来た理由を説明した。
「なぜ中に焔赤兜がいることを知っている⁈・・・はっ⁉︎もしや貴様だな!例の国の存亡を脅かす存在というのは!」
門番は焔赤兜が、自分達しか知らない地下水路の秘密のルートを使って直接城内に入って来たのにそれを知っているノアンが例の存在だと勘違いしてしまった。
「えっ⁈ち、違いますよっ!僕はただの・・・ただの、えーっと」
「ただのなんだ!」
「た、旅人ですっ!」
「怪しすぎだな、貴様は城は城でも城の地下に来てもらおう。・・・そして、そっちの集団はどういった集団なのだね?」
門番がノアンの背後にいるレオン隊に質問を問いかけた。
「私達は砂漠の十二星座の獅子座を司る、レオン隊です。そして、私はレオン隊副隊長を務めています、クレンと言います」
「レオン隊がここに何の用だ?お前達も例の存在のことか?」
「父に会うために来ました」
「父親?お前の父がこの城にいるのか?」
「そうです!」
「ふん、お前の父親は王国騎士団に所属しているのか?」
「いいえ、王国騎士団ではなく、王です」
「「「・・・は?」」」
「・・・ん⁇⁇」
王国騎士団はクレンの言った言葉に理解が追いついていない。そして、ノアンも言葉の意味はわかっているが、それをよく考えると自分の助けた相手が実は物凄く偉い人だということに戸惑いを隠せないでいる。
「いえ、だから、王です。この国の王様をやってます」
「お、王だと・・・」
門番達はクレンの言っていることが信じられなかった。なぜなら、王が父ということはクレンは王の娘、つまり王女様ということだ。その王女様が砂漠の十二星座という国を守る為の組織に所属していることなどありえないからだ。
「お前達は引き返せ、そして、そのような戯言は冗談でも言うもんではない。以後、気をつけたまえ」
「え⁉︎嘘じゃないってば!お父さんに、王様に会わせてくれればわかるって‼︎」
「ダメだ!お前達が城内に入ることは許可できん!」
「なんで⁈私は娘なの!この国の王は私のお父さんなの!」
「ダメなものはダメなのだ!」
門番は頑なに城内に入ることを許してくれない。
「じゃあ、城内に入らないから!私、クレンが王様に会いたいと伝えるだけでいいから!」
「伝えても結果は見えている。王様はお前達に会うほど暇ではないのでな、伝えたところでなんの意味もない」
会えないのなら、そう伝えるだけでいいとクレンは門番に言ったのだが、意味がないと言われ伝えることもしてくれなかった。
「えぇ⁉︎いいじゃん!伝えるくらい、減るもんじゃないし!」
「ええい!何をしてもお前達はこの門を通ることはできん!さぁ、帰った帰った!」
「なにそれ〜!ひどい!さいてー!」
クレンと門番が城門の前で言い合いをしていると、門の奥から大剣を背中に背負った女性が近寄ってきた。
「なにを騒いでいるのだ、どうした?」
「こ、これはっ!副団長殿!どうしてこのような場所に⁈例の存在のことで玉座に向かわれたのではないのですか⁈」
「そりゃ、お前、アレだよ。えっと、あれだけ騒いでいたら誰であろうと気になるだろう。なにがあった?」
「そ、それはっ、この者たちが中に入りたいと言っており、私が何度ダメだと言っても聞かなくて困っていたところです。しまいには“私はこの国の王の娘だ”という始末でして」
「レオ姐!レオ姐だぁ!久しぶりですっ!!」
クレンが副団長と呼ばれてる女性に声をかけた。
「き、貴様!なんだそれは!副団長に向けて何を言っているのだ!レオネ副団長とお呼びしろっ!」
当然、門番は副団長への無礼を見逃さず注意をした。
「ん?おお!クレンじゃないか!久しぶりだなー!元気にしてたか?」
「へっ?」
しかし、副団長はクレンの無礼など全く気にかけずにそれどころか楽しく会話を始めてしまった。これには門番は頭がこんがらがってしまった。
「はい!さっきまでは凄く元気でした!この門番のせいで少し元気が無くなりました」
「なっ!貴様何を言っているのだ!副団長の前でこの私を愚弄する気か!」
いちゃもんをつけられた門番がクレンを怒鳴った。
「そうカッカするな、落ち着け。なんだ?クレンどうしたんだ?」
「中に入りたいんですけど、この人がここを通してくれないんですよ!私は王の娘だって言っても信じてくれないし」
クレンは今までの討論を簡単にレオネに説明した。
「まあ、それは信じられないだろうな。よし、ならオレが許可しよう」
「えっ!ちょっといいんですか⁉︎こんな王の娘を自称するやつを入れても‼︎」
門番が副団長が許可したことに凄く驚いている。
「心配するな。自称じゃなくて、クレンの言っていることは全て事実だ。そこの奴もお前の仲間か?」
「あ、うん、そう!」
「そうか、おい!そいつを解放してやれ」
副団長の一言でノアンが王国騎士団から解放された。
「あ、ありがとうございます」
「ああ、まぁ、気にするな。それじゃあ、行こうかクレンとその仲間達」
「はいっ!」
城門を通ることを許可されたノアンとクレン達は門番の前をゆっくりと通って中に入った。
「くそっ、勘違いするなよ!ここを通すのは副団長の許しがあるからだ!決して貴様の戯言を信じたわけではない」
門番は納得いかないみたいだが、副団長にまで意見するわけにはいかないみたいだ。
「ハイハイ、わかったわかった」
こうして、ノアンとクレン達は門番の固い守備を副団長レオネの力を借りて突破し、なんとか城の中に入ることができた。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!皆さん、お盆はどこか遊びに行きましたか?私はどこにも行けませんでした。唯一、出かけたのが親の実家に行ったくらいです。あ、でも!その実家でおやつに人生で初めてスイカバーを食べました!とても美味しかったです!皆さんも水分補給だけでなく、冷た〜いアイスなども食べて暑い夏を乗り切りましょう!では、また次回〜




