逃げるが勝ち?
「次はどうするの?もう終わり?」
レリカにはノアンとベニカの攻撃を受けても全然余裕があるようにみえる。
「ッ・・・‼︎ベニカ!逃げる準備をするんだっ!」
「な、何を言って・・・」
ノアンが急に大声で堂々とここから逃げる宣言をした。当然レリカにも聞こえている。
「何を考えているんだ・・・⁇」
ノアンの行動に全く理解が追い付かないベニカは唖然としている。
「ここから、逃げる?逃がすわけないじゃ〜ん!それに、仮に逃げられたとしても追跡可能だから追いかけて殺せば良いしね」
レリカの言う通りである。ノアン達がここから逃げられる可能性はほぼゼロに近い。
「レリカ、君がどんな方法で僕らを殺そうとしていても僕らはここから逃げる」
「だから〜、逃げても追いかけるよ〜?ていうか、今すぐ死ぬから逃げるとか考えても意味ないよ?」
レリカが魔力の剣を両手に持ってゆっくりと近づいてくる。
「たとえ、君の能力がどれだけ強力でもここで僕らを殺すことはできない」
実力の差ははっきりとしているのに、なぜかノアンは自信たっぷりに『殺すことはできない』と言い切った。
「冗談を言うのはやめなよ、全然笑えない」
「冗談なんて言ってない、僕は本気だ。今から全力で逃げる!くらえっ!これが今、僕が思いついた中で一番の大技だぁ!!」
「大技〜?なにそれっ?」
ノアンの言動を本気にしていないレリカは油断していた。
「さっさと死のうか!ノアン!」
レリカとの距離は十分にあった。ノアンは落ち着いてペンを構え、ゆっくりと唱えた。
「僕とベニカを追ってくる為の手段、情報そして、時間!その全てがレリカに有ることを無にする」
その瞬間、レリカからノアン達を追う為に必要な手段、情報、時間が失われた。
「ベニカ、逃げるぞ」
「・・・あっ、ああ、わかった」
ノアン達はその場から離れようとしている。その間レリカは追いかけようとすると足が言うことを聞かなくなり、視界は真っ暗で、レリカだけの時が止まるという、不思議な状態に陥っていた。
「(こ、これはどうなっているんだ⁈でも、何をしようと無駄だよ〜)事象消去」
レリカはノアンが唱えたことを掻き消し、ノアンとベニカの元へ行こうとする。しかし、ノアンもすぐに対応した。
「事象を消したことによって無になったものを有にする」
「くっ、またか!なら、また掻き消すだけ・・・‼︎」
またレリカに掻き消されては拉致があかないと思ったノアンは欠かさず追い討ちをかけた。
「君に事象を掻き消す能力が有ることを無にする」
「事象消去・・・?あれ?事象消去!・・・あれ?」
レリカがセファから書き写した“事象を掻き消す能力”が発動しない。どうやら本当にレリカから能力が無くなったようだ。
「・・・本当に、余計な事してんじゃねーよ!!・・・ノアン、覚えておけよっ!絶対後でぶっ殺すから!それに、今も新たな復讐者が私の下僕になる頃だ。私の陣営は増える一方だ、必ず復讐を果たし、ノアン、お前も殺す」
レリカはブチ切れるが、ノアン達を追うことはできない。そして、レリカが怒っていることを知りつつノアンは構わず、気になったことを質問した。
「新たな復讐者?どこにいるの?そこを詳しく教えて」
新たな復讐者とは戦闘が始まる前にこの世界に転移してきた復讐者で、デヒトに任せてある復讐者のことだ。
「お前に教える訳ないだろ」
「僕達は親密な関係でしょ?隠し事は無しにしようよ!」
ノアンの能力でレリカとは親密な関係になっているのだ。そして、それを利用して情報を聞き出そうとしている。
「だ、黙れ!お前なんかと親密なわけ・・・がっ‼︎くっ、新たな復讐者は今スナハ王国内でデヒトが交戦中だよ」
レリカは堪えようとしたが、無理だった。ノアンに新たな復讐者の居場所を教えてしまった。
「そう、ありがとう!それじゃ、ベニカ、逃げよう!」
「今ならこいつの息の根止められるんじゃないのか?」
「だめだ、こっちから向かって行っても勝てない。今は僕らが逃げればレリカも手が出せないから逃げるしかないんだ」
「よくわからんが、お前がそういうなら逃げよう」
ノアンとベニカはその場から逃げ、シャブニカ達が向かった地下水路へ向かった。
「くそっ!くそっ!くそくそくそっ!書き写した能力が無くなっただけでこのありさまか〜。・・・負けたのは結構悔しいな〜」
レリカの能力は能力を書き写す能力だ。そのため自分の能力だけでは全く戦力にならないのだ。
「(そういえば、新たな復讐者のこと聞いてきたな)一応デヒトに連絡しておこう」
“詠唱、通信魔法・・・魔力通話”
『あー、あー、デヒトー聞こえる?』
クレンの部下達の記憶を書き換えていたら急にレリカから通信魔法がきた。
「レリカ様っ!お久しぶりです!そちらは順調ですか?」
『まあまあってとこ。それより、今そっちにノアンが向かってるかもしれないの、もし現れたら半殺しにして捉えておきなさい!奴は敵よ』
突然、通信魔法がきたと思ったらその内容はノアンを見つけたら半殺しにしろという内容だった。
「えっ?わ、わかりました。半殺しですね」
デヒトは少し戸惑ったが、すぐに適応した。
『訳あって私はノアンの事は追うことができないの。だからデヒト、ノアンの事はあなたに任せるわ。殺したら殺すから』
「りょ、了解です、お任せください!」
『あー、それとそっちにセファはいるの?』
「セファですか?いないですね。最後にセファを見たのは商店街にあるレリカ様のお店ですよ」
『そう・・・お店ね』
「セファがどうかしたんですか?」
『なんでもないの、とりあえず、わかったわ。そっちはよろしくね』
「は、はい!」
デヒトとの通信魔法を終えた。
「ノアンのことはデヒトに任せておいてっ、私はセファの所に行ってまた一回能力を書き写さないと!」
レリカは計画を実行中だったが、ノアンに能力を消されるというダメージを受けた為、砂漠の十二星座のリーダー狩りは一旦休憩だ。
「まずは商店街に戻ろうか」
レリカはシャブニカに吹き飛ばされた二人と戦意を喪失しているメメネを回収して商店街へと向かった。
一方その頃、地下水路を走っている二人はこの後のことについて話していた。
「ベニカ、逃げるのもいいんだけど、少し寄り道して人助けをしてもいい?」
ノアンがベニカに寄り道の提案をした。しかし、逃げている途中で人助けとはまったく余裕があるのかないのかわからなくなってきた。
「人助け?誰を助けるんだ?それに私達は今、逃げているんじゃないのか?」
ベニカの言う通り、今はレリカから逃げている最中だ。
「レリカからは逃げているよ。でもさ、逃げる途中でも、助けが必要な人達がいたら助けてあげるでしょ?」
「当然だ。私は砂漠の十二星座、焔赤兜の副将だぞ、助けを必要としている人がいるならそれを見過ごすなんてもってのほかだ」
「なら決まりだね!デヒトの居場所をナビゲートしてくれる地図が無いことを有にする」
すると、ノアンの手元に突然、地図が現れた。その地図には王都から東で商店街より少し下のあたりに赤い点が印してあった。
「この赤い点を目指していけばいいのかな?」
「そうなんじゃないのか?というか、お前が出したのに使い方を知らないのか?」
ベニカは呆れた顔をしてノアンを見ている。
「いや、だって初めてだし、説明書とか無いし、わからないでしょ」
「そ、そうか。とりあえず赤い点を目指そう、それしか目印は無いんだし」
「そうだね!よし、行こう!人助けだー!」
ノアンとベニカは行き先をシャブニカ達が向かった王都の城から、デヒトのいる場所を示していると思われる赤い点へと変更して、再び走り出した。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!やっと梅雨明けですか?やー、長かった梅雨が明けたと思ったら尋常じゃない暑さがきましたね。30度以上って、暑すぎですよ。熱中症が心配になってきます。ところで皆さんは水分補給などの熱中症対策はしていますか?私は熱中症の対策として、ポカリスエットを飲んでいます!水分補給としては最適の飲み物ですよ!皆さんも是非‼︎それでは、また次回〜




