一人よりも二人
二人はほぼ同時に唱えていた。ノアンはシャブニカを記憶を書き換える能力から守る為に、レリカはシャブニカの記憶を消して下僕にする為に。
「どっちが早かったの⁈」
「ぼ、僕に決まってる‼︎・・・そうだよな?シャブニカ?」
レリカとノアンは自分達でも、シャブニカがどちらの能力の影響を受けたのかわからない。この場で唯一わかるのはシャブニカ自身だ。
「・・・」
「おい、喋らないぞ」
「動きもしないな」
シャブニカはその場で固まった。フリーズしてしまった。
「どうなってんだ⁈・・・こ、これは、レリカ、お前のせいだ!」
「は⁈ノアンが私の邪魔をするからでしょーが‼︎」
二人はやけくそでお互いの責任転嫁をし合っている。そこにアクセス達がベニカ達に追われながらやってきた。
「や、やあやあ、レリカ様っ!申し訳ありません!そこの復讐者の足止めも出来ずにレリカ様の後を追わせてしまいました」
アクセスとレオードは顔を下に向けレリカに謝罪をしている。その後ろでベニカ達がこちらに向けて走ってきている。メメネの姿はどこにも見当たらない。
「それに加えて我々も奴らから逃げてきた始末。なんと詫びればいいのか・・・れ、レリカ様?」
何も言い返してこないレリカを不思議に思ったアクセスはレリカに目線を向けた。
「お前の計画は良くない方向に進んでるからだ!」
「そんなのノアンには関係ない‼︎とにかく、焔赤兜のリーダーが動かないのは私のせいじゃないっ!」
二人はまだ、責任の押し付け合いをやっていた。
「ライト、あなたは私の下僕となり、私の命令に逆らえない!」
「な、何してんだ!」
「記憶の消去ができてると仮定して記憶を書き換えたの!もしかしたら私のが早かったのかもしれないからっ!」
すると、シャブニカがようやく口を開いた。
「・・・あ・・あ・・・レリカ・・様」
シャブニカの口から“レリカ様”という名前の呼び方か聞こえた。ノアンの能力は付与されなかったようだ。
「ッ⁉︎シャブニカ⁈そんな・・・僕のが遅かったのか」
ノアンは自分の不甲斐なさを悔やんだ。
「やったぁ!私の勝ち!いや〜、商店街の情報もだてじゃないね!」
「・・・どういうことだ?」
言葉の意味がわからないノアンは素直に質問した。
「いやね、見た情報だと一つだけ隠された十二星座があるって話だったから」
「誰から教えてもらった⁈」
「別に教えてもらってないよ?私が自分の能力で見ただけだから。それで、能力で十二星座のアジトの場所を正確に感じ取ることのできる能力を付け足したの!付け足した甲斐があったよ!ここが見つかったんだもんっ!」
レリカは自分の行動が素晴らしかったことに気づいてテンションが上がっている。
「レリカ様、私は」
「名前は?」
シャブニカのセリフを途中で止め、構わず名前を聞いた。
「シャブニカと言います」
「そう。じゃあ、シャブニカ・・・ん?アクセスとレオードもいたの⁉︎びっくり!」
「や、やあやあ。さっきからずっといました・・・」
「お取り込み中だったから仕方ない」
「後ろから来る連中を死なない程度によろしく〜!新入りのシャブニカと一緒なら勝てるでしょ?なんせ、ここのリーダーなんだから」
「了解。シャブニカとやら行くぞ」
「了解」
今の返事にノアンは聞き覚えがあった。
「えっ?あいつ、もしかして・・・忘れてないのか?」
アクセス達を追いかけていたベニカ達がやってきた。
「ノアンっ!将軍は!シャブニカ将軍は無事なのか⁈」
シンクがノアンにシャブニカ将軍の安否を尋ねた。
「シャブニカ将軍は・・・」
「やあやあ!君達お喋りしてる暇はないよ〜!」
アクセスは先ほどと同様十本のナイフを一本の剣にして、シンクに斬りかかろうとしてきた。その時、
「我は・・・無事だァ!!」
シャブニカが自身の矛で目の前のアクセスをぶっ飛ばし、ついでに近くにいたレオードもぶっ飛ばした。
「「将軍ー〜!!」」
「無事でしたか、シャブニカ将軍」
「おお、ベニカ。お主も無事だったか!ノアンが我に不思議な力をくれてな。なんとか、奴の攻撃を防いだのだ」
「シャブニカ将軍よかった、僕の無効化する力が付与されてたのか。気がつくまで、てっきりレリカの下僕になっちまったかと思ってたよ」
「はっはっは!我の演技はなかなかのもんだったろう!」
「焔赤兜のリーダーさん、嘘をつくのはいけないよ〜」
シャブニカの背後から怒りのこもった声が聞こえた。
「・・・れ、レリカ‼︎み、みんなここから逃げるぞ!」
ノアンがみんなに撤退の合図を出したが、レリカが素直に見逃すわけがない。
「事象消去、事象消去、事象消去」
逃げようとしているが、全員元の場所に強制的に戻されてしまう。その間にレリカがこちらに近づいてくる。
「な、なんだよこれ!これじゃ逃げられねぇよ!」
「全然動けな〜い!」
シンクとセツキが何か打開策がないのか?とノアンに期待の目を向ける。ノアンはそれに応えたいと思っているが、状況は二人と同じで全員をこの場から助ける方法が思いついていない。
「ベニカ、よく聞いてくれ」
「なんだ?」
「ここから全員脱出して助かる方法だが・・・」
「何かあるのか?」
「全く思いつかない・・・」
ベニカの顔がキレ気味の顔になった。
「で、でも‼︎僕があいつと一対一でここに残って時間を稼げば君達は多分助かる!・・・いや、“必ず”助ける!」
ノアンが思いついたのはここからノアンを含めた全員が無事に逃げる方法ではなく、ノアンを含まない焔赤兜のメンバーのみがここから逃げる為の方法だった。それも、ノアンがここに残って時間を稼ぐという方法だ。
「その方法はダメだ!」
いつも常に冷静だったベニカが初めて冷静さを捨ててノアンのことを心配した。
「うわっ⁉︎(ベニカも感情的になることあるのか・・・)で、でも、これしか・・・」
「私も残る」
「ふぁっ⁉︎」
予想外の言葉に変な声が出てしまった。
「私とノアンを除く全員をここから逃す」
ベニカの目からは覚悟が伝わってきた。これで、断ったら後でベニカに殺される。
「・・・わかった。レリカがあと三歩進んだら仕掛ける」
「了解」
作戦を聞いたベニカは静かに返事をした。
「お、お主ら、な、何をこそこそと話しておるのだ⁈や、奴が迫ってきておる!ど、どうにかせねば‼︎」
シャブニカは自身の部下をどうやって守るかという事で頭がいっぱいな様子だ。
「二、三!その場に立っていられる筋肉が有ることを無にする!」
レリカが三歩目の足を地面につけた瞬間にノアンがレリカに向けて唱えた!すると、
「えっ?」
レリカは立っていることができずにその場に倒れてしまった。
“ドサッ”
その瞬間をベニカは見逃さない‼︎
「紅華、目の前の敵を殺すぞ」
「・・・斬る?できると思ってるの〜?」
ベニカの刀がレリカを斬ったと思ったが、レリカは魔力を操り、アクセスと同様の一本の剣を魔力で生成してベニカの攻撃を防いでいた。
「一筋縄ではいかないか、みんな!今のうちに逃げろ!」
「え?、何を言って・・・」
「いいから、早く逃げろっ」
「ベニカ、お主まで・・・ッ⁉︎お主ら、もしや・・・シンク、セツキ。仲間を連れて地下水路へ逃げるぞ‼︎」
「シャブニカ将軍!あの二人を置いていくのかよっ⁈」
「シンク!二人の覚悟を無駄にするな、ここは二人に任せる」
「そうだ、任せておけシンク!なぁに、別に時間を稼ぐだけだ、すぐに追いつくさっ!」
「くっ、わ、わかった!絶対だぞ‼︎」
シンクはシャブニカ将軍とセツキ達と一緒にアジトの地下にある地下水路へ向かった。
「事象消去。その刀、自分で受けたことある?」
筋肉を無にされた事象を消して、意味不明な質問をベニカに問いかけた。
「は?・・・ッ‼︎うぐぁっ!」
意味のわからない質問にベニカは一瞬戸惑ってしまった。レリカはその隙を見逃さず、ベニカの持つ紅華を操り、ベニカに攻撃をした。ベニカは自分の持っていた刀がひとりでに動き、宙に浮いたかと思ったら自分に斬りかかってきたのをとっさに反応して避けようとしたが、間に合わず右腕に切り傷がついた。血が流れるように出てくる。
「ベニカ!くそっ、傷が有ることを無にする!」
すると、ベニカの傷が綺麗さっぱり無くなった。まるで斬られたことが嘘のようだ。
「あーあ、逃げられちゃったじゃん。まっ、とりあえず能力を書き写すっと!」
シャブニカ達が逃げたことはあまり気にしていないみたいだ。
「空気の剣!」
今度はノアンがレリカに斬りかかった。
「うふっ、あー、やばい‼︎空気の剣!」
なんと‼︎レリカが自分と同じ空気の剣を生成したのだ。
「・・・ッ⁉︎」
ノアンはレリカの生成した空気の剣が自分の空気の剣と全く同じだということに驚いたが、戸惑うことなくそのままレリカに空気の剣を振り下ろす。
“カキンッ!”
レリカがノアンと同じ空気の剣でノアンの攻撃を防いだ。そして、魔力で生成した剣。魔力の剣とでも名付けよう。レリカが魔力の剣をもう片方の手に生成し、ノアンを斬りつけた‼︎
「がはっ‼︎く、くそ、き、傷が有ることを・・・無にする・・・」
「しっかりしろ、平気か?」
「な、なんとか・・・」
正直、一人だと全く歯が立たないってことに気づいたノアンは、元々一人で残ろうとしていた自分の考えが甘かったと反省した。そして、今はベニカがいることにとても救われている。しかし、それでも二人とレリカの間にはとてつもないほどに実力の差がありすぎたのだ‼︎
一方、地下水路では・・・
「ベニカ副将とノアンがいる。二人なら大丈夫だ!とにかく今は信じて逃げるぞ‼︎」
「そうだな。我らがやられれば、あやつらの覚悟が無駄になってしまう」
「それだけはダメ〜!」
部下を連れて地下水路を逃げているが、二人のことが心配なのがよくわかる。それでも、二人の稼いだ時間と覚悟を無駄にしない為に砂漠の十二星座、焔赤兜は全力で逃げている。
「このまま行けば、王都の城まで行ける。そこまで逃げれば我らの勝ち!目指すは王都の城だぁー!!」
「「おー〜!」」
こんにちは!作者のユウキ ユキです!私が小説を書きたいと思うきっかけになったアニメのBlu-rayが自宅に届きました。ずっと買いたいと思っていたのですが、値段が値段なので、なかなか手が出せずにいました。でも!貯金が貯まってきたし、またアニメを見たい!と思ったので、買っちゃいました!全巻全て買いました!(大人買いってやつですね)初めて買ったアニメのBlu-rayなので慎重に開封しました。休みの日にじっくりアニメを見たいと思います!では、また次回〜




