レリカの計画
「セファ、締めの料理おねがーい!」
「はい!今持ってきますね、少し待っててください」
そういってセファは厨房に戻った。しばらくして白いものと茶色いものがお皿の真ん中で綺麗に別れているものが出てきた。
「せ、セファ・・・これは?」
「な〜に?このちゃいろいの。食べられるの?」
僕とレリカはこれか食べられるものには見えなかった。なぜならこんなにも汚い色をしてドロドロとしているものと一緒に虫の卵のような白いつぶつぶがたくさんあって、気持ちが悪いからだ!
「えっ?なにって、カレーですよ!カレー」
「かれぇ?何ですかそれ?」
「私も知らない〜」
ノアンとレリカの二人はカレーを知らないみたいだ。おそらく二人の元いた世界に“カレー”というものが存在しなかったのだろう。
「レリカ様、カレーを知らないのですか?」
どうやらデヒトは知っているみたいだ。
「し、知らないわ‼︎そんな気色の悪い物」
「そ、そんな‼︎大丈夫ですよ!汚物を見るような目で見ないでください‼︎食べれますから!」
レリカは全く信用してない。というか、あまりにも衝撃的な見た目の物が出てきたので驚きで食欲がどこかへ行ってしまった。
「ぼ、僕は食べてみようかな・・・」
「おっ!どうぞどうぞ!」
「私はもういいや、ごちそうさまでした。その汚物以外は美味しかったです。それじゃ、計画を実行してくる。ノアンまたね」
そう言ってレリカは店から出て行った。
「・・・汚物・・・私の料理は汚物・・・はぁ」
「・・・。よ、よーし!食べるぞー!」
さっきの例があるから、たとえ見た目が変でも美味しい料理のはず!
「いただきます!はむっ」
“もぐもぐもぐ”
「⁉︎」
「ど、どうだ?美味いか?」
ノアンはレリカがいなくなったことに気がついた。辺りをキョロキョロと首を横に振って確かめたが、やはりレリカはいなかった。
「ガッ⁉︎ま、まずいのか・・・」
セファはノアンが首を横に振って“美味しくない”と表現したと勘違いしてショックを受けている。しかし、今のノアンはそれどころではない!
「しまった!おい!レリカはどこに行ったんだ⁈」
「んあ?レリカ様は多分、“リーダー狩り”に出かけたよ」
「リーダー狩り?」
「・・・あ、これ行っちゃだめだった。おい、セファ今の無かったことにしてくれ。・・・セファ?」
「ノアンは食べてくれたが、口に合わず・・・。レリカ様は・・・カレーを見ただけで食欲が無くなってしまった‼︎・・・これは完全に私の力不足‼︎申し訳ありませんでしたー!!次はもっと食べなくなるようなカレーを作ってみせます!うおぉぉぉ!!!」
セファは全く見てなかった。それどころか自分の作ったカレーで食欲を無くしたレリカをみて深く反省していた。
「うるっせー!早く今のを無かったことに・・・あ!お前見てないとダメなのか。くそっ、俺が消すしかねーか」
デヒトはペンを取り出し、ノアンへ向けて構えた。
「それじゃ、恨みはねえが。記憶、喪失してもらうぜ、ライト、忘却!」
デヒトの攻撃がノアンに命中したと思われたが、ノアンはそこに平然と立っていた。何事も無かったかのように。
「なぜだ?なぜ平然と立っていられるんだ?記憶を消したんだぞ‼︎少しくらい混乱してもおかしくないのに・・・はっ⁉︎まさか、いや、ありえん!」
デヒトはノアンの記憶を覗き込んだ。
「ば、バカな⁉︎なぜ記憶を失わない⁈」
ノアンの記憶には書き換える前と全く同じ記憶が存在していた。いや、正確には書き換えられる前ではなく、ノアンの記憶は書き換えられてすらいないのだ。記憶を書き換えられていない。つまり、デヒトの放った攻撃がノアンには無意味だったということになる。
「そっか、覚えてないのか。まぁ、でもだからといって教えないけどね。そんなことより、僕の質問に答えてもらうよ。“リーダー狩り”とはなんだ?」
“リーダー狩り”、レリカが“計画”と言っていたことに関係があるみたいだ。
「ノアン、お前は一体何者なんだ‼︎」
デヒトにとってノアンは友達で親しい人物ということになっている。そして、そのノアンが今は自分たちの計画を暴こうとしている。
「僕の質問に答えろ、“リーダー狩り”とはなんだ?」
ノアンがもう一度同じ質問を繰り返す。
「・・・それは言えない」
「デヒトの手足に自由が有ることを無にする」
すると、デヒトの手は机にくっつき、足は床から離れなくなった。
「うおっ⁉︎な、なんだこれは!ノアン、お前がやったのか⁈」
「質問に答えろ。次はその腕、捥ぐぞ」
「お、教えることはできない!」
「わかった。僕がこの店から出るまでの間、お前が僕の質問に答えない時、お前の関節が一つづつ外れることが無いことを有にする」
ノアンが能力を使った。
「な、なにをした?」
「今から僕が問いかける質問に答えないと、お前の関節が外れていくようにした。僕の質問に答えれば無傷で済む。簡単でしょ?」
「質問に答えないと関節が外れる?嘘くせえな、そんなことあるんけねーだろ」
デヒトは全くノアンの忠告を気にしていない。
「じゃあ、試してみるか?お前の性別はなんだ?」
ノアンがデヒトに向けて質問を問いかけた。
「男だ」
「・・・答えてどうする」
「あっ!わ、わりぃ、つい答えちまった」
「ま、まあいい!今は答えたから何も起きなかったが、答えなかった時はお前の関節が外れていくからな‼︎」
デヒトが質問答えたことに関して少し不満な様子だ。
「怒るなって・・・」
「怒ってない!いいから“リーダー狩り”についての情報を教えろ!無条件で関節外すぞ!」
「くそっ、わかったって!お前ろくな死に方しないぞ」
「そうだね、僕は地獄にでも落ちるのかな。でも、簡単には死なない!この世界の全てを明らかにし、僕の目的を果たすまでは絶対に死なない」
「・・・そうか」
デヒトはノアンの能力の脅しに屈し、“リーダー狩り”についての情報を教えてくれた。
「それじゃあ、まず、砂漠の十二星座って知ってるか?」
「砂漠の十二星座・・・いや、知らない。関係あるのか?」
「砂漠の十二星座ってのは」
“バキバキバキッ”
「痛ってぇぇぇぇっっ!!!」
「あ、ごめん。質問しちゃった」
「“質問しちゃった”じゃねーよ!お前にはただの質問かもしれないけど!こっちは俺自身の関節がかかってんだよ!」
ノアンの能力で関節が外れてしまったのだ。だが、幸いにも外れた関節は人差し指の関節(全て)だったので、他の関節と比べるとまだ軽い方だ。でも、それでも関節は関節。痛いものは痛いのだ。
「だから、ちゃ、ちゃんと謝ってるじゃん!それに僕は忠告はしたし、質問を無視して答えなかったお前も悪いと思うぞ‼︎」
「そ、それもそうか。って!納得できるかぁぁぁ!」
「わかった。それは治すよ。その状態が有ることを無にする」
“コキカキゴキッ”
デヒトの人差し指の関節が全て元に戻った!
「おお!戻った!ありがとう!・・・っていや、お礼を言うのはなんか違う気がするぞ?」
「別にお礼はいいよ。それより話を進めてくれ」
「あ、ああ。わかった」
デヒトは話を再開した。
「砂漠の十二星座が関係あるかについての質問だが、関係もなにもその砂漠の十二星座のそれぞれのリーダーを自分の下僕にする計画が“リーダー狩り”なんだ」
「なるほど・・・。ところで砂漠の十二星座とは何だ?」
「あー、そっか。さっき知らないって言ってたな」
ノアンはこの世界のことについてはほとんど無知なのだ。
「砂漠の十二星座ってのはこのスナハ王国の周辺の砂漠に存在する十二個の集団だ。それぞれの集団には司っている星座があり、集団を束ねるリーダーもいる。これが砂漠の十二星座だ。そして、今まさに我らがレリカ様がそのリーダー達を下僕にするべく、行動しているのだ!」
「へぇー、でも、集団なんだろ?さすがに一人じゃ無理だろ」
「そう思うだろ?だけどな、今日が何の日だかわかるか?」
今日はスナハ王国では一番大事な日だ。
「わ、わからない」
「今日はこのスナハ王国の建国記念日らしいぞ」
「け、建国記念日だと⁉︎知らなかった・・・」
砂漠の十二星座のことも知らないノアンがこの国の建国記念日の日など知るわけがない。
「これでもう、わかっただろ?レリカ様が一人で行っても大丈夫な理由が!」
「わからん」
「わからんのかい!えっとな、今頃、砂漠の十二星座はそれぞれのアジトで飲んだり食ったりでどんちゃん騒ぎだろうよ。そんな中、奇襲されても誰も対応できないってわけだ!わかったか?」
建国記念日はとてもおめでたい日だ。この国に住む国民はこんな日に飲まずにはいられないだろう。
「なるほど理解した。じゃあ、それを僕が防げばレリカの計画を止められるんだな」
ノアンは頭の中で得た情報を整理した。
「は?何言ってんだお前・・・」
「それじゃ!情報提供感謝する」
そう言って店から出て行こうと出口に向かった。
「ノアン〜!店から出て行くほど不味かったのか〜い。次はもっと美味しく作るからまた来てくれよ〜‼︎」
セファの言葉には耳を傾けず、ノアンは急いで店から出て行った。すると固定されていたデヒトの両手両足が解放された。
「うおっ!動けるぞー!いや、今はそれどころじゃねー!あいつレリカ様を止めるとか言ってたな。あいつは危険すぎる‼︎レリカ様に会わせるわけにはいかない!」
そう言ってデヒトもノアンの後を追うように急いで店から出て行った。
「まさか!お前も逃げるのか⁉︎食べてもいないのに‼︎お、おい!待ってくれよ〜!」
お店には心に大ダメージを負ったセファが一人残った。
こんにちは。作者のユウキ ユキです!突然ですが、終わってしまいましたね・・・。ゴールデンウィーク。あっという間でした。私は結構休めたんですけど、特にすることが思いつかずにダラダラと生活していて気がついたら後1日しか無い‼︎という感じでした。皆さんは有意義に過ごせたでしょうか?私は来年はもっと連休を有効活用したいと思います!ではまた次回〜




