スナハ王国の名物食材
ノアンは拡大した部分の商店街を歩いている。
「どこにもいないぞ・・・。もしかして、もうお店を手に入れたとか⁉︎」
あの二人が商店街へ来た目的は自分達のお店を経営し、そのお店に隠れて拠点を構えることだ。
「いくらなんでも早過ぎないか?・・・いや、常識的に考えてはいけないな、あいつらは復讐者だ。僕と同じようにそれぞれ特殊な能力を持っている。お店一つ手に入れるなんて簡単なことだ」
ノアンは拡大した商店街のお店の中を一個一個確認していった。
「ここかー?」
「へいっ、らっしゃーい!さあさあ!お客さん!今日も安いよー!・・・おや?見ない顔だね、旅人さんかな?それじゃあ、このスナハ王国でしか採れないスナスサボテンなんてどうかなー?」
ここは八百屋のようだ。ちなみ“スナスサボテン”というのはスナハ王国の領土のみに自生しているムラサキ色のサボテンだ。見た目はかなり毒々しいが、実際食べてみると、とても良い食感と味がクセになるくらい美味しいらしい。
「あ、ご、ごめんなさい!違うんです、えっと・・・今日はちょっと買うお金がなくて、その・・・」
「なんだよ⁉︎金がないのかぁ。それじゃあ、これはおじさんの奢りだ!」
「えっ⁉︎いいですよ‼︎大丈夫ですって!」
「いいんだいいんだ!旅人なんだろ?」
「え、ま、まあ」
「なら!このスナスサボテンを貰ってくれ!こいつの食感と味を知らないなんて、勿体無すぎる!おじさんはただこいつの良さを食べて感じて欲しいんだ!ダッハッハ」
笑いながらスナスサボテン渡された。
「あ、ありがとう。そ、それじゃ!」
急いでその場から離れた。なぜなら長居するとまた何か渡されそうな気がしたからだ。
「おう!また来いよー!ダッハッハ」
ノアンはスナスサボテンを手に入れた!
「いやー、この美味しそうなスナスサボテンが無料で貰えちゃったよ!今日は運が良いな!・・・って、ちがーう!僕はスナスサボテンじゃなくて、二人のお店を探してるんだー!!」
「またあの人叫んでるよー?」
「だから見ちゃいけません!行くよほら!」
またもや変人扱いだ。だが、そんな事は別に気にしていないというか、気づいていないノアンは再び二人が経営するお店を探し始めた。
「まさか、元々の商店街の方でお店をやってるとか⁉︎いやでも、そしたら商店街を拡大した理由がわからん」
ノアンは商店街の拡大したことに周りが気づいていない理由を二つ目に思いついた“自分だけが除外される復讐者の能力発動”だと考え、それがレリカかデヒトの能力発動と仮定して二人のお店を探していた。
「・・・は⁇」
ノアンは“あるもの”を見てしまった。
「す、スコップがっ‼︎・・・か、勝手に穴を掘ってる・・・」
それはレリカの力でお店の地下室を作っているスコップだった。
「ど、どうなってんだ⁈」
夢でも見ているのかと、ノアンは目をこすったり、頰をつねったりした。
「ゆ、夢じゃない‼︎えっと、どうなってんだ?」
頭の中で状況の整理が追いついていない。
「あ、あの!この世界のスコップは、か、勝手に穴を掘るんですか?(僕は何を聞いてるんだ‼︎)」
すぐそこを歩いていた女性に変な事を聞いてしまった。
「何を言ってるんですか?そんなわけないでしょう。大丈夫ですか?」
「で、ですよねー!!(だよな!そうだよな!!)」
急に安心できたような気がした。しかし、運が良いのか悪いのか、ノアンは目的を達成した。
「あれー、ノアンじゃない!よくここがわかったわね!」
「れ、レリカ⁉︎それにデヒトと、もう一人増えてる」
レリカとデヒトの後ろにもう一人、人がいる。
(こいつはいったい・・・。新しい復讐者か?)
「久しぶりねー、ノアン!でも、どうしてここにいるの?何か理由でも?」
レリカ達にとってはここは拠点。ノアンが何の目的でここにいるのか知る必要がある。
「えっ⁉︎えっと、僕は・・・そ、そう!このスナスサボテンを買いに来たんだー‼︎」
「へぇー、スナスサボテン⁇・・・何それ?」
レリカはスナスサボテンという物も言葉も知らない。それが何なのか、どういうものなのか知りたがるのは当然だ。
「えーと、こ、これは・・・」
ノアンが答えに戸惑っているとデヒトが口をひらいた。
「スナスサボテンというのは、このスナハ王国の領土のみに自生するサボテンで、見た目はかなり毒々しいですが、実際には毒は無く、食感が良くてとても美味しいそうです。中には毎日のように食べてる人や1日3食全てにスナスサボテンを食べてる人もいるとかいないとか・・・ま、まあ、クセになるくらい美味しいのでしょう」
さすがはデヒトだ。ノアンがホッとしたようにため息をつく。
「へぇー!美味しいんだ、それ」
「え、あ!そ、そう!美味しいんだよこれ!」
「ちょっと、中入ってよ!ここ私らのお店だからさ!」
「え、ちょっと、まっ」
ノアンはレリカに引っ張られるままに敵の本拠地改め、お店の中に入っていった。
「ノアン!」
「は、はい!」
「そのサボテンどうするの?」
「どうするって、食べるしかないでしょ」
スナスサボテンを貰って、ずっととっておくわけにもいかないし、どれだけ日持ちするかもわからないので、できるだけ早くに食べたい。
「なら、ここで食べようよ!みんなで!」
「え、別にいいけど。というか、むしろ食べてもらったほうがいいかな」
「やったぁ!!」
レリカが飛び跳ねて喜んだ。
「やっぱりレリカ様は食べたかったのですね?」
「当たり前でしょ!あんな説明されたら食べたくなるでしょうが!」
「す、すみません‼︎」
なぜかデヒトが謝る。『なに?』と聞いたからその答えとして正しい事を詳しく教えただけなのに・・・。デヒトはなにも悪いことはしてないのに・・・。
「さ!早速食べようよ!」
「えっと、僕は料理はできないから誰か・・・」
「え、ノアンできないの?まあ、私も今まで係の人に任せてたからできないけどさ」
「係の人?」
「あー、なんでもない・・・気にしないで」
なにやら辛いことを思い出した時みたいにレリカの顔から笑顔が無くなった。何か思うことがあるのだろう。
「では、レリカ様。私がやってもいいですか?」
今までだんまりとしていたセファが挙手をした。
「そうだ!君は?会ったことないよね?」
「あー、そうね。こいつはセファっていうの。私の新しい仲間よ」
「セファ・・・ね、よろしくね!」
「ところでセファ料理できるの?」
「はい!できます!前は仲間の食事担当でしたから!」
「じゃあ、お願い!美味しくしてね!!」
「はい!」
意外にもセファには料理の腕があり、お店の厨房を使ってスナスサボテンを調理している。その頃、客席では、最近の出来事などを互いに語り合おうとレリカ達は会話をしていた。
「そういえば、ノアンはどこで暮らしてるの?」
唐突にレリカがノアンの生活している主な場所を聞いてきた。しかし、ノアンはレリカ達を尾行していたため、家などは無くレリカ達と同じ宿で寝泊まりをしていた。
「どこでというよりも、家がないからこの国の宿を転々としながら旅してるんだ」
尾行してたので同じ宿です!なんて死んでも言えない。
「へぇー、旅してるんだー。よかったらここに住む?部屋の一つや二つ増やせるよ?」
現在、お店の地下では地下室を作るべく、スコップが延々と掘っている。そのスコップはレリカの力で操られてるため、部屋を一つ追加することなどスコップでまた掘らせればいいだけなので簡単にできる。
「い、いや、いいよー!大丈夫だよ!」
「そお?ちょっとざんねーん」
敵の本拠地に住むなど危険すぎる。
「レリカはどうしてお店を開くの?」
少し気になったのでレリカ達がお店を開く理由を聞いてみた。まあ、本当のことは教えてくれそうにないけど。
「それはね!私達のきょてっ‼︎」
「きょて?」
「あ、えーっと、違くて!これはね!小さい頃からの夢で!」
レリカは少しテンパった様子でノアンにお店を開く理由を説明した。
「そうなんだ!凄いね!夢って叶うものなんだな〜」
ノアンは夢が叶うことの素晴らしさに感動している。
「そうね、諦めなければ必ず・・・いいえ、私は絶対に叶えてみせる。その為にこの世界に来たんだから」
レリカは強張った顔で真剣そうに決意を新たにした。
「な、なんか大変なんだね・・・」
「えっ?あ!気にしないで!(くんくん)ほら!そろそろできるころじゃない⁉︎」
厨房からいい匂いがしてきた。復讐者たちの“スナスサボテンパーティー”の始まりだ!
こんにちは。作者のユウキ ユキです。今回出てきたスナハ王国の領土のみに自生する“スナスサボテン”。私も食べたことはありません。味とか食感とか全く知りません。私に聞かないでください。現実のサボテンも食べられるものがあると聞いたんですが、私はそれすらも食べたこと無いです‼︎ごめんなさい‼︎なので全くサボテンわかりません!“スナスサボテン”の味と食感は読者の皆様のご想像にお任せします!色々想像しちゃってください!ちなみに色は紫色です!ではまた次回〜




