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第4章 異変の真相

 カ「バカモン!!貴様の勝手な行動で、どんなに軍が迷惑被ったと思ってるんだ!」

 その後、翌日案の定2人は叱られた。元の大きさに戻ったドラゴンは医学室に連れて行かれ、命に別状はなかった。医学隊の男はドラゴンを助けたという事実と、イーリスを手伝っただけということでお咎めは少なかった。

 カ「第一、我々が受けた命令は、あのドラゴンを退治しろということで、決して助けろと言われたわけではない!お前の実力を見込んで出陣を認めたのに、ふざけるな!」

 サ「お言葉を返すようですがーー」ガスッ。

 サリエルの反論をイーリスは防いだ。

 カ「…全く、なぜこうも余計なことを…。」

 イ「ところで将軍様。なぜあのドラゴンが暴れたのかご存知ですか?」

 カ「そんなこと知らん!それよりも、お前は軍の命令に従ってればいいんだ!」

 カース将軍は怒り狂っている。怒りの矛先はヴェスティーア部隊長にまで及んだ。

 カ「だいたいヴェスティーア!!お前もなぜ勝手に許可を下ろした!貴様が判断することではないはずだ!貴様の監督責任だけでなく、わしの監督責任まで問われるのだぞ!黙って話だけ聞いてー」

 ヴ「お言葉ですが将軍様。そうおっしゃるのなら、彼の言い分も聞いてやってくださいな。彼も考えなしに毒抜きを断行したわけではありますまい。もしあなた様に何の落ち度もありませんでしたら、私が全責任を取ります故、御許可を。」

 もっともな指摘をされ、カース将軍は黙りこくった。

 カ「…まあいい。」そして、話を聞く体制をとった。

 ヴ「イーリス。もう一度説明しろ。」

 イ「ありがとうございます。では話を戻しますと、あのドラゴンが暴れた理由は、これにございます。」

 イーリスは一本の矢を取り出した。

 ヴ「それは?」

 イ「これは、光日の矢でございます。我が軍特有の武器です。」

 今度はこの矢を掲げ、

 イ「将軍様は本日、陰陽の狭間で弓の訓練を行いましたね。」

 カ「それがどうした。何ら悪いことでもなかろう。」

 イ「それ自体が原因ではありません。その際に、この矢を使ったのが問題なのです。単刀直入に申しますと、あなたは法律違反をしていました。」

 カース将軍は驚き、

 カ「な、何を言う!何が問題なのだ!」

 イーリスは続ける。

 イ「当軍国法によると、陰陽の狭間では太陽龍月光龍どちらも混在することができるので、特有の武器を使うことを禁じられています。それは、お互いが相手国の環境に弱いのと同じく、相手国の武器にも弱いからです。こちらで言えば、太陽龍軍の武器は月光龍にとって有害。したがって、法に基づき使用する際には竹または鉄の矢を使う必要があります。しかしながら、将軍はそれを致しませんでした。」

 長々と説明を終えた。

 ヴ「…なるほど。ドラゴンが暴れた理由はわかった。しかし、なぜあそこまで巨大化したんだ?」

 イ「それも、我が国の過失によるものです。」

 カ「き、貴様!わしにこれ以上楯突くとどうなるか分かってー」

 ヴ「全ては!…このヴェスティーアが責任を取ります。続けろ。」

 イ「はい。」

 再び説明を始めた。イーリスは今度は葉っぱを取り出した。

 イ「この葉っぱをご存知ですか?…これは、『エリキス』という薬草です。しかし、薬草というのはあくまでここでの話。月光龍にとってはどうでしょうか。」

 一同緊迫した雰囲気で、続きを待った。

 イ「これを月光龍が服用すると、体の細胞破壊が加速します。それを補うために猛スピードで体が細胞分裂を起こします。そうするとどうなるでしょうか。細胞分裂の際の膨大なエネルギーに体が耐えきれず、皮膚からどんどんエネルギーが漏れて体が膨張していきます。月光龍にとって命に危険なので、『危険植物リスト』にナンバリングされています。そして、今度はこちら。」

 再び何か資料を取り出した。

 イ「これは、『陰陽法』と言う法律集の一部です。これには、こう書かれています。『第67条 陰陽の狭間には、ドラゴンの生命に危険を来す植物を植えてはならない。』。まさか闇夜の国の住人が自ら不利益を被るような真似をしないでしょう。そして、証拠はまだあります。」

 別の資料を取り出した。

 イ「これは掃除中に発見したものです。将軍の部屋の掃除の際、誤って机の上の書類を落としてしまいました。それは申し訳ございません。しかしながら、おかげでこれを発見しました。『エリキス事業 資料集』。これにはこうあります。『P13 …これは我が国に有意義な事業だ。これを陰陽の狭間に植え、大量生産を図る。』…これはどういうことですか?なぜわざわざ法律を犯すような真似をなさるのですか?」

 まさか、自分たちに課された雑用が、こんなところに役立つとは当時は夢にも思わなかっただろう。

 カ「な、あ…!」

 ヴ・イ「反論があるなら今ここでどうぞ!」

 2人は声を合わせて叫んだ。

 カ「グ、フフフ、フハハハ!まさかわしを告発するとはな。だが、そんなことをしても無駄ぞ。わしには金と財閥があるんだ。こんなこといくらでも揉み消せる!」

 ヴ「そうも言ってられないですよ。」

 窓際にヴェスティーア部隊長が立っていた。そして、窓を眺めていた。

 カ「な、何!?」

 カース将軍は窓に走り寄った。そこには驚きの光景が広がっていた。

「カース統治は絶対反対!」

「極悪カースは将軍やめろ!」

「財閥使って民衆騙すな!」

「やめろやめろ!やめろやめろ!やめろやめろ!」

「退陣退陣!退陣退陣!退陣退陣!」

 建物のすぐ近くにまで民衆が押し寄せていたのだ。

 カ「な、なぜこんな…!」

 サ「上手くいきましたね。」

 今まで黙っていたサリエルがやっと発言した。

 サ「ただいま極悪カースの陰謀を絶賛生放送中でお送りしておりまーす!」

 サリエルの後ろの保安隊が一斉に服を剥いだ。すると、そこには大勢の報道陣がいた。

「カース将軍!これはどういうことですか!」

「納得できるように説明お願いします!」

「逃げないで話してください!」

 実は、これは先日から計画していたのだ。ドラゴン異変が済んだ後、そのドラゴンからも話を聞いた。するとイーリスの予想通り、あの時どこからともなく矢が飛んできて脛が焼けるように痛かったと話した。さらに暴れて葉っぱを口にした後、急激に体が燃えるように熱くなり、それからは治療室に向かうまで意識はなかったという。さらに幸運なことに、このことをヴェスティーア部隊長に報告したところ、

 ヴ「そんなことが…。これは間違いなく奴の落ち度だ。よし、こうなったらこの時用に取っといた秘蔵の情報をやる。上手く使え。」

 これをきっかけに事態は進んだ。サリエルが得意な早駆けで情報局に走り、情報のタレこみをしたのだ。そうして報道陣が保安隊に変装し、今日を迎えたのだった。(ちなみに見出しは、【極悪カースの裏の顔、真実明らかに!?】だったらしい。)さらに、エリキス事業のカースの本来の目的が判明した。それはエリキスの売り上げを利用し、私腹を肥やそうとしていたのだ。それもあるが、闇夜の国に売りつけることで月光龍の残滅も図ろうとしていたらしい。

 カ「ば、馬鹿な…!」

 イ「これでもう言い逃れはできませんよ、カース将軍。いえ、もう将軍ではないですね。カース!俺たち太陽龍軍の結成の目的は、月光龍を倒すことだけでも、ましてや組織を私有化することでもない!民を守ることだ!あなたは己の権力を過信し国の為と銘打って結果的に自分の為に民と財閥を利用した!そんなあなたに、将軍を名乗る資格はない!」

 カ「あ、あうう、う、うわらばぁあー!」

 そうしてカースは床に倒れこんだ。その後カースの部屋からイーリスの発言を裏付ける新たな証拠も発見された。さらに、財閥に対して賄賂をしていたことも明らかとなった。こうしてカースは軍国法、陰陽法違反と、贈収賄の疑いで逮捕された。将軍職の罷免、太陽龍軍からの追放、契約解除を言い渡された。自らの不正による契約解除は初めてのことだった。彼の使い龍、ジュピテルに対してはドラゴンに罪はないとのことで処罰なし、新将軍は彼の財閥の影響を受けていないものから選ばれた。その新将軍は、2人の自由な行動を許可してくれた。

 イ「ありがとうございます。あなたがいなければ、私は一生雑用暮らしでした。」

 ヴェスティーア部隊長は首を振り、

 ヴ「いや、お前がいなければ奴の不正を暴けなかった。これで兄も浮かばれるな…。ありがとう。」

 ヴェスティーア部隊長の兄は、カースに不正に働かされ過労で亡くなっていた。

 まだまだ(イーリス)の活躍はこれからだ。

※本文イーリスの発言にて、補足。『特有の武器を使うことを禁じられて』いるのはあくまで訓練の際です。

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