最終章 1人の英雄
プ「表彰状。イーリス殿。貴殿は我ら光日の国そして闇夜の国に平和をもたらし、長年の戦争を終わらせることを可能とした。その偉業と勇気、覚悟をここに表彰する。太陽龍軍将軍、プルトゥ。」
カ「同じく、月光龍軍将軍、カリラ。」
イーリスは今、龍王の間で2人の将軍から表彰状を授与されている。イーリスは断ったのだが、そうで無いと面目が立たないと言う理由で簡素な式としたのだ。
パチパチパチ!拍手が鳴りやまない。
ヴ「いやはや、まさか表彰状が出るとは。夢にも思わなかったよ。」
イーリスはヴェスティーアの隣に懐かしい顔を見た。龍契士育成舎で出会った、あの管理官であった。
ヴ「な、そう思うだろ?兄さん。」
菅「ああ。私も上司の兄として、そして管理官として誇らしいよ。本当によくやったと思っている。」
イ「か、管理官!?お、お久しぶりです!」
菅「よう、久しぶりだな。ミスリル。いや、今はイーリスだったか?」
イ「部隊長!これは一体!?」
菅「あ、お前さては説明しなかったな?改めて、久しぶり。ヴェスティーアの兄で新人龍契士育成舎管理官の『プローセル』である。よろしく。」
イ「…。」
イーリスは空いた口が塞がらなかった。
ヴ「だってまさか知り合いだと思わなかったんだよ。管理官なんて何人もいるんだから。説明はいらないと思ってさ。」
プロ「どうもお前は昔からそこらへんが抜けてるんだよな。」
ヴ「兄さんだって、生真面目すぎて遅刻なんて日常茶飯事だったじゃないか。」
2人の小さな兄弟喧嘩が始まった。
光ジ「そんなことをしている場合ではなかろう。」
ヴ「ああ、そうだった。」
そして2人は改めてイーリスに向き合い、
ヴ・プロ「イーリス、本当によくやった。おめでとう。」
イ「あ…ありがとうございます。」
そして、表彰式を終えた。
数日後。軍隊は解散され、同じメンバーで保安隊が結成された。保安隊は、国を守るための部隊だ。イーリスはほぼ同じ任務内容の保全偵察隊に入った。サリエルはと言うとその直属の部下の保全補助隊に就任した。ヴェスティーアはその両隊の部隊長になった。リヴァイアは完全飼育にして住処となる海洋龍園も陰陽の狭間に開園した。一番の問題となっていた幼龍との戦闘は、不定期開催のリヴァイア戦闘大会と称することにした。それは、レンタルドラゴンを使って10分間の戦闘体験をすることができる。安全を配慮し、母龍は柵の奥に置いて10分経ったら放ち終了というルールだ。
そしてイーリスの提案により陰陽の狭間の一番の見せ所、ドラゴン闘技場改め『龍王戦場館』が無事開館。相国の繁栄の象徴となった。
それから50年後、その戦場館の近くに博物館が建てられ、その脇に像が建っている。(分かりにくいと思いますが、像が前、博物館は後です。)イーリスの像だ。『光日の国と闇夜の国を結んだ英雄』そう書かれたプレートをつけられ。光日族と闇夜族が、その偉業を忘れぬようにと建てられたものだ。
イーリスはと言うと、奇しくもその像が建てられた一年後に野良ドラゴンに襲われ亡くなった。ドラゴンのために生き、ドラゴンによっておろされた生涯だった。彼の遺志はサリエルに引き継がれ、サリエルが務めた。今、闘技場の運営は引退したサリエルに変わり、イーリスの下にいた後輩が営んでいる。
マ「…っと、そして今がある訳だ。我々はそのことを忘れてはならない。」
立派な成龍となったマルースが、その傍にいた1人の少女に、像の前で昔話をしていた。少女は目を輝かせた。
「…その人ってすごい偉かったんだね。私、その人みたいになりたい!」
マ「…話していた俺が言うのも何だが、よく飽きずに聞けたな。」
「だって、面白かったんだもん!」
マルースは嬉しそうに微笑み、
マ「そうか。楽しめたのならよかった。もう遅い。早く帰りなさい。」
「はーい!またねえ!」
少女は小さな手を振りながら帰っていった。それを見届けると、マルースも、
マ「…さて。俺ももう戻るか。」
夕日に当たりキラキラと輝く大きな翼を広げ、光日の国に向かって飛んで行った。
~FIN~
登場人物
プローセル
新人龍契士育成舎管理官で、ヴェスティーアの兄。使い龍は『テミス』。




