第20章 50mのタイマン
サ「決闘、開始!」
サリエルがそう宣言した瞬間、闇夜族は勢いよく飛び出した。マルースは機敏に反応し、首を振る。それを月光龍は素早く避ける。
イ「行けっ!マルース!」
キュワアア…!マルースは口を開け、光線を放つ体制をとった。
月光龍のほうは、尻尾の球を光らせ拡散弾を放つ。その瞬間、光線が放たれた。
バジュバジュバジュ!お互いの攻撃が当たり、相殺し合う。
闇「ほう。なかなかやるようだな。」
イ「舐めてかかったら痛い目にあいますよ。」
闇「心得ておこう。」
そう言うと、月光龍はイーリスの背後を取った。
月「ギュワア!」
月光龍はそう叫ぶと翼を目一杯広げた。そして、所々ある翼の裂け目からこちらを追尾してくる鋭いホーミング弾を繰り出してきた。
イ「今だ!」
マルースの方も、尻尾の球を光らせてレーザーを展開する。そのレーザーに弾が当たると爆発して果てる。
闇「くたばれ!」
ピカッ、ゴロゴロゴロォ…。
雷雲を呼び出し、『黒雷撃』を繰り出す。下手すると攻撃・防御力を下げてしまう月光龍の技だ。
ピシャーン!
イ「危ない!」
素早く落雷を避ける。しかし、こちらも負けるわけにはいかない。反撃を開始した。
マルースは高速で移動し、月光龍の背後を取る。そして大きく縦方向に円を描き、光の矢の如く突進してきた。
イ「『電光石火突撃』!!」
バジュッ!
月光龍は素早く下に避ける。そしてまた暗黒気弾を繰り出す。それに対し、マルースも光気弾で迎え撃つ。お互い勝機を譲らない戦いだ。
サ「大丈夫ですかね…。」
サリエルは不安そうだ。
「いやあ…ごっつ激しい戦いやなあ。惚れ惚れするわ。」
サリエルは一瞬ビクリと震えた後、ゆっくりと後ろを振り返った。そこには、
サ「ゑ、えええ!?ひ、ヒュペリオさん!?」
そう、神出鬼没ヒュペリオだ。
ヒ「おっおー。さっきぶりやなあ。あんさんらを追ってったらこんな凄え戦いを見かけてなあ。思わず見惚れよってたわ。」
サ「い、いつからいたんですか!?」
ヒ「うーんとな、大体、戦闘、開始ーってところからやな。」
サ「初めからじゃないですか…。」
ヒ「そうとも言うー、ベルサイユー。」
ヒュペリオは訳の分からないボケをかます。
ヒ「んなことより、形勢はどうなん?」
サ「互角ってところですかね。」
闇「では今度はこちらから行くぞ。
『邪水砲弾幕』!」
イ「くるぞ、マルース。『電撃大放電』!」
バリバリバリ!ドバッシャーン!お互いの攻撃が炸裂する。その中から流れ弾が飛び出し、お互いに命中。これで一撃ずつ食らったことになる。
闇「くっ、油断した…!」
イ「大丈夫か?」
マ「ゲウ。」
マルースは鈍く吠える。
闇「よそ見はするな!」
ピシュン!一瞬にして闇に包まれた後闇夜族の姿が消えた。
ヒ「おお!『閃光気消』か。なかなかできるやつやな。あいつ。」
サ「せ…センコウキショウ…?ってなんですか?」
ヒ「いつかの龍人痺眼のような月光龍の特殊技や。闇に紛れて姿を消し、どこからともなく現れて奇襲する技。あれは強敵と言えるな。」
ここで、特殊技と攻撃技について説明しておこう。
攻撃技は、その名の通り攻撃のために使われる技。地球で言うなら、カタカナに漢字を当てはめた名前の技。『電撃大放電』が主な例。
特殊技は太陽龍と月光龍に個々に一つずつ与えられる、固有の必殺技。攻撃目的の物と防御目的の物、回復目的の物、それにその他の技の4つに分類される。地球で言うなら、漢字の意味と読みを双方重視した造語の四字熟語の名前の技。『龍人痺眼』が主な例。
どちらの技も、使い龍と龍契士の長年の鍛錬そして共存によって開花していく。その両方の技をうまく活用して、戦闘をしていくのだ。
話を戻そう。
そう言った通り、イーリスは周囲を確認するような仕草を見せた。いつどこから現れるかを警戒しているのだろう。その時、イーリスの周囲を暗雲が立ち込め始めた。
イ「来る!」
ピカリ!マルースの尻尾が輝き始めた。そして。
カァーッ!あっという間に闇を照らした。闇夜族は背後にいる。
イ「そこだ!」
後ろを振り返りマルースの放った光弾は闇を突っ切り、闇を払った。
しかし、闇夜族はいなかった。
闇「緩い!」
その背後から闇夜族が奇襲してきた。ドラゴンのパンチ炸裂。不意を突かれたマルースは落下。
ヒ「まずい!あのボールのところまで落ちたら負けるで!」
アウトゾーン寸前でマルースは羽を広げ持ちこたえた。しばらくそこで浮遊していた。
ヒ「うえ〜い…。さすがやな、あいつ。」
サ「しかし、これで後3発食らうとどのみちイーリスさんは負けます。気を抜かないでください。」
ヒ「ところで、相手をあのラインに引き摺り込むんはありなん?」
サ「無しではありませんが、あまりお勧めできません。先に出た方が負けですからね。結構判定シビアですし。自分の方が相手より強ければそんなことしなくても5発攻撃を当てればいい話ですし、危険を冒してまでやる必要はありません。逆に弱ければ振り切られて返り討ちにあう恐れもありますからね。」
ヒ「なるほどな。それともう一つ。攻撃が当たったという判定はどこまでなん?防御として攻撃を受けるのは当たったとみなされるん?」
サ「攻撃はあくまで逃げるか攻撃で回避してください。防御だとしても、当たったらカウントされます。また、先ほどのように引きずり込もうとして掴みかかった場合は、攻撃カウントとして見なされます。だから、相手はできるだけ当たらないようにするので、そう言う意味でも巻き添えはお勧めしません。」
ヒュペリオは納得したようだ。
イ「行っけー!」
三度マルースは月光龍に向って突貫し始めた。しかし、またもや瞬間移動されてしまった。それに怯まず、イーリスは方向転換して左に突っ込んで行った。
ヒ「!?」
ズドン!
そして、月光龍が出てきたところに突撃して一撃当てることができた。
サ「これで2回命中です!」
ヒ「そうか。あいつ、奴の軌道を読んだんか。たとえ消えていても、気の流れである程度の場所の推測はできる。そういうことか。」
闇「ぬうう…くそぉ…。」
闇夜族はよろめいた。態勢を立て直すと、また暗雲を立ち込め始めた。そして、その雷の力を受けて黒弾幕を展開する。ホーミング弾だ。それを巧みに避けていくが、ふとした瞬間に弾に囲まれてしまった。
ヒ「まずい!」
月光龍は攻撃を放つ態勢をとる。しかし、イーリスは慌てるそぶりを見せない。
闇「やれ!『闇砲弾!』」バオオン!強力な暗黒弾が放たれた。
サ「やられる!」
しかし攻撃が当たる寸前、イーリスも消えた。
「な、どこだ!」
イ「ここだ!」
イーリスは闇夜族のすぐ正面に現れた。そして、ゼロ距離でマルースの光弾攻撃を食らわせた。これで3発目だ。
サ「…う、嘘…?」
ヒ「あいつの特殊技か。『光駿断走』。少ししか動けない代わりに、光の屈折により空間の位置をずらす、一種の時飛ばしやな。すごい技編み出しよった。」
サ「あの、疑問に思ってたんですけど、何で固有の特殊技を全て把握してるんですか?」
ヒュペリオはサリエルの素朴な疑問に回答した。
ヒ「特殊と言うても、ある程度のパターンはあるんや。遺伝の影響もあるんかな。わいの先祖はな、その特殊技の記録を担当してたんや。その書物の中で、似たような特殊技を確認してるんや。と言うても、誰がどの特殊技を使うかまでは覚えとらんがな。」
人は見かけによらぬものとはこのことだろう。隅に置けないヒュペリオだった。
サ「とりあえず、これでイーリスさんが少し有利になりました。」
しかし、相手も負けてはいない。攻撃を繰り返した。
闇「くっ、『邪水砲弾幕』!!」
再びこの技を出してきた。しかし、イーリスはもう見切った。弾を避けていく。
闇「ふん!喰らえ!」ブウン!バシッ!
鋭い尻尾攻撃を食らった。これでイーリスも3発目だ。
イ「グワァッ!」
闇「小癪な!」
そう吐き捨てると、月光龍は再度閃光気消を繰り出した。闇に紛れ、こちらからは姿を捉えられない。
イ「こうなったら!」
マルースはひたすら拡散弾をばら撒き始めた。総当たりの作戦のようだ。しかしヒュペリオには居場所は分かっていた。
ヒ「下や!」
いち早く気配を察知したヒュペリオは叫ぶ。居場所が暴露た月光龍はそのまま上空に突撃する。すかさずマルースは攻撃をかますが、躱される。そのまま脇に激突、ラスト1発で負けてしまうという危機的状況にまで追い詰められてしまった。
イ「よし、こうなったら。」
またもやマルースは月光龍に向かって行った。それを砲撃で迎え撃とうとする月光龍。しかし、当たる寸前マルースは再び光俊断走を発動した。
闇「なっ!?」
素早く背後に現れたマルースはそのまま攻撃。お互いラスト1発ずつとなった。
ヒ「よしっ!後一撃や!油断せんかったら勝てるで!」
マルースも月光龍も、最後は魔弾で勝負するようだ。お互い気を高めていく。
ブワァッ!
イ・闇「発射!」
ドオオン!魔弾が放たれた。光り輝く魔弾と、暗黒の魔弾。どちらの気が勝つのか。それは誰にも分からない。
バリバリオオン!魔弾が激突した。少しも譲らない戦い。
イ「行っけえええええ!!」
闇「やれええええええ!!」
チュドオオオオン!魔弾が爆発した。その中からエネルギー弾が飛び出して来た。それは。
闇「くっ、うわああっ!?」
闇夜族に向かって飛んできた。そしてそのまま。
ボガ―――ン!!爆発した。そのまま落下、アウトゾーン通過。イーリスの勝ちだ。
ヒ「…す、凄えええええ!!」




