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第18章 自らの信念をかけて

「…先陣を切っていた者らはほとんど太陽龍軍に落とされた模様です。」

 報告に来た闇夜族は去っていった。

 ジ「…我輩は、恩をかけられたらそれには答える。しかし、こうなってはもう許すことはない。ただ一つの我輩のかける情けとして、戦場になれば、貴様を他の誰にも討ち取らせん。我輩の手で、決着をつけてくれるわっ!…覚悟しておれ。」

 イ「承知の上です。私とて、生きていたとはいえあなたに長年父を奪われた恨みもありますからね。」

 ジ「ここにいては貴様とまともな戦いはできぬからな。陰陽の狭間に送ってやる。その先は、己の信念に基づいて行動するが良い。」

 そうして、父オケアーノと共に陰陽の狭間に戻ってくることになった。その帰り道。

 ジ「そう言えば、まだ貴様の名を伺っていなかった。名を何と申す。」

 イ「イーリス…もといミスリルと申します。」

 ジ「…そうか。イーリス。しかと覚えておく。貴様と戦う時を、誰にも邪魔立てはさせんぞ。」

 2人を下ろすと、

 ジ「では、さらば。…ミスリルよ。」

 本名でイーリスをそう呼んだ後、翼をはためかせ元の道を帰っていった。

 オケ「…ここからどうやって元のところに帰るか。」

 その時、

「イーリスさん!?」

 イ・オケ「!?」

 そこには、サリエルがいた。

 サ「無事だったんですね!?あれ、その方は?」

 イ「説明は後。それより、我が軍は今どうなっている?」

 サ「ああ!そのことなんですけど!あなたがいない間に、とんでもないことになっちゃいましたよ!」

 というのも。あれからさらわれた後の事。


 ヴ「…おのれ、闇夜族め!!」

 現状報告のために一同戻った時、一番最後にサリエルが戻った際にイーリスが闇夜族にさらわれた旨を伝えると、ヴェスティーア部隊長はワナワナと怒りに震えた。さらに、グライダーが切り裂かれていたのを見ると、

 ヴ「どこまで横暴を重ねれば気が済むのだ!」

 ヒュペリオの読みは大当たり。その直前に2人を襲った疑惑のある闇夜族が捕まった。ヒュペリオの蝿型GPSカメラの位置情報により、陰陽の狭間に潜伏していたのを捕えられたのだ。サリエルは彼が襲ったと証言すると、ペラペラと悪事を喋り出した。だいたいヒュペリオの言った通りだったが、一つだけ異なる点があった。イーリスがドラゴンを助けたことも、想定内だったのだ。ただし、イーリス個人を予測したわけではなく、あくまで助けるものはいるだろうという見立てだったが。それがイーリスだったというだけだった。しかし、それを知っていたのは一部の軍人のみ。その他の住人は知らなかった。

 ちなみにこの男は、月光龍軍の中でもかなり高い位に位置する者だった。

 それを聞いた時のサリエルの率直な感想。

 サ「記者勘、凄え」まるで、ヒュペリオのドヤ顔が眼に浮かぶようだった。

 ヴ「もうこれ以上の理由などいらん!イーリスの奪還を目的とし、闇夜の国に宣戦布告を申し立てる!」

 こうして、元々闇夜の国から立てられた宣戦布告を光日の国が受け入れたことで、停戦条約を打ち破り事実上の全面戦争に突入することになった。

 サリエルが屋敷を出ると、そこにはヒュペリオがいた。

 ヒ「どうやった?」

 サ「だいたいあなたの言った通りでしたよ。凄いですね…。」

 ヒ「せやろせやろ。ところで、イーリスはんはまだ戻って来とらんのか?」

 サ「ええ。そのために、全面戦争を決めたわけですから。」

 ヒ「はあん。ま、わいも当分あんさんらにくっつくわけやから、こっちでも探してみよか。」

 サ「付いてくるんですか…。」

 ヒュペリオは澄まし顔で、

 ヒ「当然や。こんな美味しいネタ、ほっとくわけなかろうと。そもそも、勝手行動しすぎて役目外されたんやけどな。かましませんで。」

 サ「ゑ"それって…無断出動…ですか?」

 ヒ「物は言いようや。」


 その少し前、ヒュペリオの勤務先『龍人日報』

 社長「いやあ、あの若手記者の記事はとても面白い。」

 上司「はあ、ヒュペリオですか?」

 社長「ああ。あの様な若者は今時非常に珍しい。」

 上司「しかしながら、あいつは無茶な取材を繰り返していましたので、しばらくドラゴン取材を控えるように申した後でして…。」

 社長「おや、聞いとらんのかね?たった今さっき、取材許可届を受理したところなのだが。」

 上司「…ゑ"?なぜ直属の上司の私に断りなく…?」

 社長「いやそりゃ知らないけどさ、急を要する事態だそうで、許可を取る暇がなかったと言っておったが。心当たりあるか?私はてっきり、後で許可を取るものと勝手に思っとったが。」

 上司「…!あの野郎!!」

 そこまで言うと、上司はヒュペリオの担当部屋に向かうと、

 上司「ヒュペリオの馬鹿はどこだ!出てこい!」

 ドアを蹴破り、そう怒鳴った。同僚は戸惑いなく、

「ヒュペリオさんなら、素晴らしいネタができたとかで、たった今出かけましたが。」

 なぜか、上司は悔しがった。

 上司「あの野郎、後で覚えてろよ!」


 ヒ「…つー訳で、わいも同行してもええか?」

 サ「もう何も言いませんよ。許可をとっただけまだいいですし。ところで、あの時私たちを襲った者の位置が分かったのも、あなたのおかげなんですかね?」

 ヒ「せやで。あいつに、蝿型GPSカメラを飛ばしたからな。どこにいてもお見通しっちゅうわけや。」

 サ「相変わらず抜かりないですね。でも、どうやってついてくるんですか?」

 ヒュペリオは少し考えると、

 ヒ「あんさんを地上から追うことにするわ。何年記者やっとるんや。これしきのこと余裕や。」

 さすが記者魂。出陣の際はヒュペリオはいなかったが、地上にこちらについてくる影が見えた。

 サ「…あの方、本当に訳が分からないです…。」

 陰陽の狭間に差し掛かった時、月光龍と共にいるイーリスを見つけた、という訳だったのだ。


 そして、今。

 ヒ「ひゃあ、やっと追いついたで。あんさんほんま早いなあ。って、イーリスはん!?無事やったんか!」

 サリエルの事情説明の後、後を追ってきたヒュペリオも到着。

 サ「もはや人間辞めてますね…。」

 ヒ「そりゃお互い様ってもんや。」

「バウッ!」

 マルースもいた。

 イ「ははっ、お前にも心配かけたな。俺のことは大丈夫。それより、太陽龍軍は?」

 サ「先ほど、全軍進撃しました。もうすぐ来ると思います。」

 イ「…そうか。じゃあ、こちらも準備するか。」

 ヒ「わいもついて行くで!」

 イ「…勝手についてきてくださいよ…そんなことよりサリエル。風の流れは?」

 サリエルは目を閉じ、手を耳にかけた。そして、風を読む仕草を見せると、

 サ「風向、東北東。風速、10m/s。良好です。」

 そこまで言うと、サリエルは東北東の方向に走り出した。

 サ「確かこの先に小高い丘があります。そこで飛び立ちますので、体制を整えてください!」

 イ「了解!」

 マルースにサリエルについていくよう指示し、走り出した。ヒュペリオもちゃっかりマルースに乗っている。丘に近づく。

 サ「せやっ!」ブワア!サリエルはグライダーを広げ飛び立った。

 マ「ガオオ!」バサッ!マルースも翼を広げ、飛び立つ。

 サ「さあ、本体に合流しますよ!付いてきてください!」

 途中で風向きが変わった。それに合わせ、サリエルは方向転換。

 サ「見えた!」

 正面、太陽龍軍が見える。三人と一体、そこに突撃していった。

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