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第17章 消された希望の星

 それはイーリスが太陽龍軍に入る5年前、今より平和でなく、まだ両国戦争に明け暮れていた頃である。そこに現れたのが、イーリスの父オケアーノである。オケアーノは非常に腕が立ち、若き日のジュノースと直接対決したこともある程だ。当時はジュノースは違う龍契士と契約していた。名を『オリハルコン』と言う。

 オリ「ジュノース。あいつの気配は感じるか?」

 ジ「…グオウ。」※当時のジュノースはまだ人間の言葉が話せなかった。

 オリハルコンは、あるものを求めて陰陽の狭間に来ていた。それとは。

 オリ「…これだ。」

 月光龍の卵だ。どうやら、最近産み落とされたものらしい。

 オリ「よし、これを持っていけば。」

 オリハルコンは卵を抱えると、来た道を戻っていった。

 それから1日後。

「敵襲だー!敵襲だー!」

 太陽龍軍が攻めてきた。(ただし太陽龍は闇夜の国には入れないので陰陽の狭間の闇夜の国境に陣取っていた。)月光龍軍は陰陽の狭間に向かった。オリハルコンには、あることが気掛かりとなっていた。先日陰陽の狭間から持ち帰った卵が、その国境の近くにあったのだ。そこが、卵の生育に適している地域だったからだ。闇夜の国に持ち帰る選択もできたのだが、ドラゴンのことも考えそこにしたのだ。

 オリ「無事でいてくれ!」

 オリハルコンはそこに着いた。しかし、卵はなかった。持ち去られたか、割られたか。それは分からない。オリハルコンは遣る瀬無い気持ちでいっぱいだった。

 だが、ジュノースは知っている。オケアーノがその卵を保護していたのを。

 夜、陰陽の狭間の散歩に出たジュノースは、その卵のあった国境沿いを進んでいた。

 すると、林の中から声がした。

「…よし、これでいい。」

 ジュノースは覗き込む。そこでは、オケアーノが卵に静かに毛布をかけていたのだ。

 オケ「しかし、お前も災難だったな。卵やドラゴンに罪はないのに、必死でお前らを討ち取って、何がいいんだか。だがな、俺だけはお前を守ってやるからな。」

 ジュノースは初めて、不思議な感情を覚えた。実は、あの卵はジュノースの相手の卵、すなわちジュノースの子供となる卵だったからだ。

 カサリ。草に引っかかってしまった。

 オケ「誰だ!…気のせいか。」

 ジュノースは静かに帰っていった。


 敵襲から数年が経った。後に停戦条約を結ぶことになるこの大戦争が起こる。また、オケアーノが討ち死にすることになる戦いも、これだ。

 闇夜の国内では反光日族の勢力が強まっていた。ジュノースの龍契士ドラゴ二ストオリハルコンも、その勢力内にいた。

 そして、早速闇夜族は陰陽の狭間に出陣した。しばらく飛んでいると、正面から太陽龍軍が現れた。どうでもいい事だが、対決の前にはあらかじめやることが決められている。

『いざ行かん、我らと共にあり。』そう宣言する事だ。なぜこのような風習が生まれたのかは謎。そう宣言すると、飛兵が一斉に飛び出した。そして、撃ち合いを行う。ある程度時が経つと、今度は切り込み部隊を投入する。大抵、長い武器を持つことが多い。今まで言及はしなかったが、オケアーノはイーリスとは違い切り込み部隊に入っていた。大きな長刀を武器としていたことから、『悪魔の長刀使い』なんて二つ名が付いていた程、武術に長けていた。

 しかし、ここで例の『龍人痺眼』を喰らい、長刀の腕を止められてしまった。その隙に、棍棒を持った闇夜族に撃墜されてしまった。その直後、オリハルコンも撃墜されてしまう。

 ジュノースは翼をゆっくりはためかせ、そのまま地面に着陸した。ただし、足でではなく体全体でだが。オリハルコンは背中に乗っていなかった。おそらく、振り落とされたのであろう。ジュノースはゆっくり起き上がると、周りの様子を確認するように目配せした。すると、正面に1人、倒れている人間がいた。オケアーノだ。それに近づこうとすると。

「おい、確かこっちだったよな。」

「ああ。敵将を自国に持ち帰って手柄もらってやる。」

 ジュノースはあることを思い出した。それは、オケアーノが卵を懸命に世話しているシーンだ。その時、オケアーノの意識が戻った。

 オケ「う、ううーん…。」

 ジュノースは無我夢中でオケアーノを抱え、そのまま飛び立った。それを、

「あれ、ありゃジュノース?」

 1人の光日族が見ていたのも知らず。


 イ「…口では何とでも言える。どうせ、私を騙すための嘘に決まっている。」

 ジュノースの話が終わると、イーリスは率直な反論を述べた。

 ジ「ならば証拠を見せよう。」

 ジュノースは一つの箱を持ってきた。それはまるで棺桶のようだった。

 ガチャリ。箱を開けると、そこには。

 イ「…ち、父上!?」

 死んだように箱に仕舞われたオケアーノがいた。

 イ「き、貴様!」

 ジ「案ずるでない。ただ眠っているだけだ。その証に。」

 ビカリ!ジュノースの目が赤く光ると。

 オケ「うわっ!」

 オケアーノが箱から飛び出した。

 オケ「あ、あれ?何で俺がこんなところに?…え?お前はイーリス?どういうことなんだ…。」

 イ「ち…父上――!」

 オケ「ええ!?な、何があったんだ!?」

 オケアーノは事態の展開についていけないようだ。

 しかし、すぐ後ろにジュノースがいた事で、事態を把握したようだ。オケアーノはイーリスの鎖を解いた。

 オケ「分かった、もう何も言わなくていい。完全にとはいかんが、何となく分かった。」

 そう言うと、イーリスは再度ジュノースに向き合い、

 イ「しかし、それだけの理由では闇夜族が私をさらったことにはなりません。全て教えてください。あなたの知っている事全てを。」

 すると、ジュノースは後ろを向く。その時、先ほどとは別の闇夜族が部屋に入ってきて言った。それは、ジュノースとは近しい重臣だった。

「ジュノース龍王様は、他人のしてくれた恩には必ず答えるお方。お前を、他の奴らから守ってくれたともいうべきか。」

 イ「どういう事ですか?」

 闇夜族は数枚の写真を取り出した。

「これは、蝿型GPSカメラで撮影されたものだ。」

 ブゥン、ブゥン。確かに、かすかな羽音と共に小さな光も見える。その写真には。

 イ「あ、アスラ!?」

 そう、イーリス・サリエルと共に写っていたのは、一時保護していたアスラだった。

「勝手な真似をしてすまなかったが、龍王様が気になることがあると言ってこの月光龍を探させたのだ。ここを見てくれ。」

 見ると、首筋に三日月模様がある。

「これを見て、龍王様は確信なさった。お前たちが、龍王様のご子息様…もとい、アスラ、と言ったな。を保護していたことが分かったからこそ、命だけは助けたいとお思いになったそうだ。」

 イ「…アスラは、今どうしてるんですか?」

「こちらに戻ってきてからは、一流の使い龍として励んでいる。そして、今度の戦の先陣を切ることも決まっている。我が月光龍軍が宣戦布告をしたことは知っているな。つい先日、それを受け入れたとされている。それで、我が軍は非常にピリピリしている。光日族を見つけると、我先にとやっつけようとする輩ばかり。そいつらに見つかる前に、俺が保護したわけだ。俺?そういうことには元々興味ないからな。」

 イ「…ということは、私をここに連れて来た理由は、私がアスラを保護したから…。」

「ま、そういう事だ。」

 その時、

「申し上げます!我が軍、太陽龍軍と激突、先陣は討ち取られました!」

 一同「!?」

登場人物

オリハルコン

若かりし頃のジュノースの龍契士。撃墜されて以後の消息は不明。


オケアーノ

イーリスの父。ジュノースに今まで時間停止保存魔法を食らっていた。『悪魔の長刀使い』の異名を持つ。

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