第13章 壮絶な最期
少し前。
「さあ、今日の分だ。」
そう言い、一人の兵士が牢に入って行った。その直後。
「グワァアーー!!」
勢いよく飛び出して来た。そして、
ズシーーン!!何かが牢の中で暴れている。
イ「どうした、何があった!」
「な、中のドラゴンが…!ガタガタガタガタ
…」
イ「はっきり言ってくれよ…。」
「なんだなんだ!」「何が起こった?」
わらわらと人が集まってくる。代表で、イーリスが様子を見ることになった。中はかなり異様な様子だった。
中にいたドラゴンはかなりボロボロで、身体中傷だらけだった。そして、頭を横にうつぶせに倒れていた。時々痙攣する様子も見せる。
イ「まずいな。もう末期にまで来てる。」
「ええ!?助かるのか!?」
イ「多分無理だな。もうすっかり弱り切ってる。」
イーリスはドラゴンに近づこうとすると。
「ゴ、ゴパァ!」
吐血した。イーリスは素早く飛び退く。
イ「…お前ら。ありったけのタオルやらを持って来てくれ。」
「え?」
イ「とりあえず早くしてくれ!」
「お、おお!」
隊員達は1人2枚ずつ、タオルを手に戻って来た。
「これでいいか?」
イ「ああ。ドラゴンの周りに敷きまくってくれ。」
みんな何をしているのか分からない。
「グッ…グオオ…!!」
イ「タオルを頭にして伏せろ!!」
みんな言う通りにした。その直後、
バシャン。
ヴ「…そうか。ご苦労だった。」
イーリスは事の顛末をヴェスティーア部隊長に報告した。
イ「あなたの言う通りでした。やはり、あのドラゴンはドラゴンフルーツを飲み込んでいました。」
太陽龍は最期の時、どす黒い血の塊を吐き出して亡くなった。そしてその中に、成熟しきったドラゴンフルーツが入っていたのだ。
ヴ「あいつを、丁重に弔ってやれ。それが最後の役目だ。」
イ「分かっています。」
普段からもドラゴンフルーツは光日・闇夜のどちらの国でも栽培されていたのだが、それは遺伝子改良で比較的大人しくなったものだ。しかし、陰陽の狭間のドラゴンフルーツは野性を剥き出しにしている。だから人目につかぬところに植え替えたのだが、不運にもそこにドラゴンが入って行き、フルーツの種、『ドラゴンシード』を飲んでしまっていたのだ。それは胃酸では溶けず、そこを寝ぐらに生長していき、やがて家主を乗っ取るまでになるのだ。そして、完全に成熟すると家主の体を出てそこに根付くのだ。もちろん、このドラゴンフルーツは廃棄した。誰も食べたがらなかったし、そんなのを食べるなんて考えもなかった。
まあ、この件に関しては不幸な事故として片付けられたのだが。
一方こちらはその後のイーリス。
イ「…さっきから気になってたんだが、なんでお前の方にそいつがいるんだろう?」
もち、クラムポンのことだ。
サ「さあ…?」
結局元のところに帰しても戻ってくるので、きちんと申請して飼う許可を貰った。名前は、『カプリコン』とした。
それから数日間は、周囲の点検作業に入ることになるので、しばらくの間は用はなくなる。
イ「それはいいんだけど、結局何をすればいいのかさっぱり…。」
サ「あ、だったら一つ付き合ってくれませんか?ちょっと気になることがあるんです。」
イ「気になること?」
2人は陰陽の狭間にやってきた。
サ「さっきからずっと気になってるんですけど。」
サリエルは風の音を聞く様に耳をそばだてた。
サワ…サワ…。
風音が響く。
サ「そちらですね。隠れてないで出て来たらどうですか。」
視線の先には月光龍がいた。
「…。」
サ「多分、会ったのは初めてではないですね。以前にも出会った気がします。」
月光龍はゆっくり近づくと、顔を震わせた。
イ「…もしかして、あの巨大龍とか?」
それは以前、前将軍のカースの失脚のきっかけを作った、巨龍異変の被害者というべきドラゴンだ。(第3章にて)
サ「どうやらその様ですね。」
月光龍は何かを訴えている様だが、はっきり分からない。そう思った時。
「こう言っている様やで。」
後ろから声がした。ドラゴン記者のヒュペリオだ。
イ「ヒュペリオさん!?何故ここに!?」
ヒ「こやつを追ってったら、あんさんらを見かけたんや。お久しやー。わい、ドラゴンの言葉はある程度分かるんや。じゃ、もういっぺん言うてみ。」
再びドラゴンは喋り始めた。それをヒュペリオが同時通訳する。それによると、こう言うことを言っているらしい。
「覚えていてくれてよかった。俺はお前に、命を助けてもらった。だから、そのお礼を言いたかったのだ。ありがとう。」
イ「いいえ、当然のことをしたまでです。」
「…そう言う若者が増えていけば、この世界も平和になるのだがな。」
ドラゴンはしみじみそう呟く。
イ「あれから何か問題は起きてませんか?」
「ああ。後遺症も残らず、今もこの通りなんともない。それもこれも、全てお前のおかげだ。」
ドラゴンは繰り返しイーリスにお礼を述べた。
ヒ「…もうええか?…そうか。合点承知。もう言いたいことはないそうやで。」
イ「ああ、分かった。今後も気をつけて、元気でお過ごしください。」
「分かっている。さらば。」
そして、ドラゴンはもと来た道を帰っていった。
ヒ「いやあ、あんさんも隅に置けんなあ。そんな大それたことやっとったとはな。わいにもその話、詳しく聞かしてくれんか?」
ヒュペリオがそうせがむので、イーリスは話し始めた。
ヒ「なるほどなあ。そして、あんさんとわいが出会った、ってやつやな。よう分かった。」
そして、ヒュペリオも帰っていっー
ヒ「ああ、そうや。一つ言い忘れとったわ。あんさん。またドラゴンに関することがあったら呼んどってな。」
イ「いつかあなたドラゴンに殺されますよ…?」
ヒ「かまへんかまへん。前も言うたが、それで死ねれば本望や。ほんじゃまたなあ。」
最後まで同じペースでヒュペリオは帰った。
イ・サ「…。」
イ「あの人、どうやってここまで来たんだろう?」
サ「ドラゴンに導かれたとか言ってましたけど、あれ絶対嘘ですよね。ここで出張ってたとしか思えません。」
細かいことを気にしても仕方ないので、2人は光日の国に戻っていった。
登場人物?
ドラゴンシード
ドラゴンフルーツの種。
ドラゴンフルーツ
陰陽の狭間に自生する植物型ドラゴン。
カプリコン
サリエルが正式に飼育申請したクラムポン。イーリスについて来たのだが、サリエルに保護されていた。




