第12章 蝕む脅威
ヴ「もし俺の考えが本当なら、奴は危篤状態にあるんだ。」
イ「そんなときに、なぜ私たちを探しに…?」
ヴェスティーア部隊長は、
ヴ「馬鹿者!それくらい察しろ!自分の部下の安否より優先するものがあるか!」
そう怒鳴った。
イ「ヴェスティーア部隊長…。」
ヴ「もたもたするな!助けたければ早く戻るんだ!」
その後約40分頃が経って、やっと本拠地に戻ってきた。そうするや否や、
「何していたんですか!奴の容態が急変したんですよ!」
イ「何だって!」
ヴ「具体的な様状は!?」
「いきなりドラゴンが扉にぶつかってきたりなんだりで、もう大混乱ですよ!早く来てください!」
一同、地下牢に急いだ。そこではかなり大荒れだった。あちこちで不自然に壊れた壁や、手前の方にめり込んだ壁やら、何かが暴れた様な痕跡が残されていた。
「ガオオ!!」
いきなり咆哮が聞こえてきた。
ヴ「あっちだ!」
そこに進むと、なんと太陽龍が檻から抜け出していたのだ。
イ「な、なんでこんなことが…。」
サ「先ほどの話によると、魂はドラゴンフルーツのものなんですよね。だったら、体の痛みも感じないのは当然じゃないですか。ドラゴンフルーツ自体に痛みはありませんもん。」
ヴ「うむ。そこが迂闊だった様だな。」
イ「まさかドラゴンフルーツが原因とは…。それはさすがに予想しませんでした。」
ヴ「俺も、あらゆる可能性を模索した結果、この決断に至った訳だ。…っと、今はそんなこと言ってる場合じゃないな。なんとかしてこいつを収めないと。」
その時。
「カツ…カツカツ…。」
背後から何かが出てきた。二人は安全なところに避難した後、それを確認した。それは、先ほどのクラムポンだった。
イ「あれ、こいつ元のところに返したはずだったけど。」
ヴ「…ははあん。さては、これに釣られたな。」
ヴェスティーア部隊長はあるものを見つけた。それは洞窟内で採取したあの水らしきものだった。
ヴ「あの洞窟はもともとクラムポンやダンクルオスによって作られたものなんだ。ここの地下水に良質の菌類が溶け込んでいるからな。」
後に書籍でそのことについて調べたところ、以下のことが分かった。
始めは崖に出来た小さな洞穴の様なものだったらしい。もともとあそこは他とは違う地質で出来ていて、雨水が洞穴を通って行くときに岩の成分を取り込みそれが長年降り積もり小さな池ができた。そこにクラムポンの先祖が住み着き、巣穴を作るために掘り進んで行き長い通路ができた。
その何十年か後、ダンクルオスの先祖も獲物を追って行く最中にこの洞窟に入り、巣穴に住むクラムポンを襲いながら奥に進んでいった。そこに、長年雨が降り積もっててきた地底湖を見つけ、そこに住み着いて地底湖にいる魚やクラムポンを食べながら地底湖での生活に合う様に進化して行ったらしい。獲物の魚は、クラムポンが岩を崩していく際に近くに流れていた川と繋がったから、魚が紛れ込んでくる様になったそうだ。一つの小さな洞穴から壁の向こう側にある川に繋げるという、まさに自然の神秘と言うべき現象だった。
さて、話を戻そう。
クラムポンはイーリスの背中から離れた後、壁を叩いたり床を叩いたりと謎行動を始めた。
ヴ「まあ、長年の住処から引き離されたんだ。そうなるわな。」
その時、
ズド――ン!!
白い弾の攻撃がクラムポンの目の前の壁に命中し、ガラガラと崩れていく。クラムポンは驚き、忙しなく足を動かしてイーリスの足にすり寄った。
イ「…サリエル。ちょっとこの子を保護しててくれないか。」
サ「お任せあれ。」
サリエルはクラムポンを掴むと、そそくさと階段に向かった。それと入れ違いに、マルースも下に現れた。
イ「よしよし、どこで空気読んでたんだ。まあ、いいところに来た。ちょっと手を貸してくれ。」
マルースは頷くと、周囲を確認した後二人を導いた。
イ「さあ、始めるか。」
もし本当にドラゴンフルーツに乗っ取られているのなら、ただ攻撃しただけでは気絶させることすらできない。そこでイーリスは一計を案じた。
イ「とりあえず、戦うふりをして相手の動きを封じる必要がある。さすがに手足を縛れば動くことはできなかろう。そのために、落とし穴にはめるんだ。」
ヴ「なるほど。うまく考えたな。よし、やってみよう。」
即席の落とし穴を床に設置し、準備を整えた。穴の先は異次元空間で、実際の床に影響はないとして、よく囮兵や偵察兵が使用する。専用の梃子で穴を引き上げれば、網にもなる。ドラゴンがやってくる。
「グルォ、グガア!」
猛り狂った太陽龍は足元の穴に気づかず、
ズブリ。
足が異次元空間に引っかかり、そのまま地面にめり込んでしまった。
「ギェエ!?グ、グルォ…。」
ドラゴンは足を引っ張り出そうと必死に体を起こす。
イ「今だ!」
兵士たちは一斉にドラゴンを取り囲み、手足を縛り上げた。
イ「よし、仕上げだ。マルース。ちょっと耳を塞いでてくれないか。」
マ「グル。」
マルースは足元にしゃがむと、大きな羽で顔を覆った。太陽龍の翼は結構密閉性があり、包まれて寝ると無音状態で眠れるのだ。
イ「行くぞ!」
イーリスは何やらメガホンの様なものを取り出し、ドラゴンに向かって浴びせた。しかし、その音は聞こえない。それもそうだ。このメガホンはドラゴンにしか聞こえない超音波を発しているのだ。もちろん、ドラゴンフルーツとて例外ではない。太陽龍は呻く様に鳴くと、そのまま気を失った。ドラゴンフルーツも大人しくなった様だ。
イ「よし、今のうちに別室に運ぶんだ。」
総勢でドラゴンを部屋に運んだ。
その頃。
「カタカタ…キチ…。」
こちらはクラムポンを保護したサリエル。先程からクラムポンは挙動不審だ。部屋の中をウロウロしたり、しきりにサリエルに擦り寄る真似をしたり。挙げ句の果てには膝上に乗っかり、そのまま動かなくなってしまった。
(注意、高さ約0.6m、重さ約2kg)
とりあえず脅かさぬ様、そのまま膝上に乗せながら動かないでいた。すると、今度はクラムポンが体をよじ登り始めたので、サリエルは横になった。ゆっくりと渡って来て、ちょうど真ん中まで来て止まった。
サ「…ふふっ…。」
サリエルは思わす微笑む。
その時、
…ダッダッダッダッダ…
走ってくる音が聞こえた。サリエルは一旦クラムポンを床に置くと、起き上がった。
「…何だって!?そんなことが!?」
「まあ、信じたくはないが…。」
そんな話し声が聞こえた。外にはイーリスをはじめ、大勢の兵がいた。
サ「どうしたんですか?」
イ「ああ、サリエル。大変なことになった。あのドラゴンの容態が急変した。とりあえず部屋に戻っててくれ。」
一旦部屋に戻ると、サリエルは耳をそばだてた。すると、驚くべきことが聞こえた。




