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ゾンビはレベルが上がった!  作者: 竹内緋色
7/12

救えない町

7 救えない町


 町の城壁は外部からの人間を警戒する為のものではない。かつて、戦乱のあったころはその役目を果たした時期があったのだろう。だが今は、魔物の侵入を食い止めるためのものでしかない。

「三十四匹――」

 城壁の上から城壁の向こうを眺める声は、鋭い銃声によって誰の耳に届くことはない。

「アンタ、なにやってんだ。」

 守衛が異常を聞きつけて城壁へと上ってくる。

「魔物を狩っているのだが?」

 お前たちのためにやっているのだから、問題はあるまい、という意味が込められていた。守衛もそれ以上は関わろうとはしなかった。町に軍隊はない。守衛はただの雇われの市民に過ぎない。かつての軍人かもしれないが、スイカよりも大きな腹ではもう戦うことは出来まい。

 城壁に風が吹き付ける。

「右に一度修正――」

 ローブの裾が風に揺られる。呟くような声はもとより誰にも聞かれることはなく、聞かれたところで大した意味などない。

「三十五匹――」

 手にしていた銃が火を噴く。空気を破裂させるような銃声の後、再び静寂が訪れる。

「まだ三分の一か――」

 だが、城壁の人影は焦ってはいない。まだ、夜は長い。魔物は尽きない。

「魔女・・・か。」

 そう呟きながら、新たな標的を視界に入れる。その視界の先は十キロ先。普通の人間では見ることさえできない。それもそのはずである。彼女は、もう、人間ではない。

 彼女は的を絞りながら、考えていたのは、魔物を生み出し続けている魔女の存在ではなく、自分が助かった奇跡についてだった。


 ゾンビを狩る存在は同じゾンビから恨まれるのは当然である。だが、ゾンビを狩るハンターの存在は必要不可欠であった。突然不死に近い力を持った者は例外なく暴走する。となると、自然と人間と敵対することとなってしまう。だが、ゾンビは不死ではない。殊に、昼間に活動する人間は、ゾンビの天敵と言える。そんな人間と敵対するということはゾンビという種の破滅に繋がる。それを防ぐためにハンターという狩るものの存在が抑止力となる。彼女はそんなことを考えながらハンターをやっている――というわけではない。

 彼女にとって、二度目の生など、どうでもいいことだった。ハンターなどやっている以上、二度目の人生を謳歌している者はまずいない。大抵は彼女のように生などどうでもよいと考えているか、復讐のために狩っているか、である。だが、多くのものはそうでもないことは彼女も知っている。ゾンビを狩り、生きながらえることを目的とするもの、狩りを楽しむものも多い。彼女はそんな輩を嫌っていた。彼女の清潔な心が彼らを拒絶している。彼女自身、罪のないゾンビを狩るハンターを狩ったこともある。そんな輩は二度死んでも当然だ、と思いたくもなかったが、そう思ってしまう。

 ハンターをやっている以上、自分がやったように誰かに狩られる時がくるとは心得ていた。だから、不覚にも襲われたときは仕方がない事だと思った。

 数キロ先も目の前であるかのように見える「鷹の目」を持つ彼女でも、潜むものの気配を感じ取ることは難しい。だから、目の前で同行者に危機が迫った時、自分の不覚だと恥じた。実際、その時にそんなことを感じる余裕もなかったに違いない。咄嗟に体が動いたのだが、その事態を合理化するにはその理由が一番であると考えられる。

 大きな棍棒が彼女の体を潰す。痛みなど感じず、恐怖もない。恐怖は生前感じたものが大き過ぎた故に、感じることはできなくなっていた。

 男の目的は彼女自身であることは間違いなかった。だから、同行者は逃げることができる。だが、その同行者たる少年は、自分の三倍はあろう大男に立ち向かっていった。自分を助けることなど無意味なのだ、もう死んでいるのだから。心の中で彼女は少年を責めた。だが、湧きおこってきた感情は少年に対する感謝と、逃げてくれという切望の情であった。

 案の定、少年は大男に太刀打ちできなかった。相手は見る限り、プロだ。そんなこと、少年でもわかるはずだ。

 男は彼女のもとに寄り、棍棒を引き抜く。体はズタズタで、動かすこともままならない。男はそのまま彼女を人形のように手に持ち、少年のもとに晒す。そして、首を引っこ抜く。脊髄まで引っこ抜かないように、きちんと首の骨を折った。まるで調理されるようだな、などと思うと同時に、彼女の頭は地面に転がる。うっすらと重い瞼から見えるのは、生前の習慣ゆえにしなくてもいい呼吸をして満身創痍の少年の姿だった。

「うん?ちょっと待てよ?俺は惜しいことをしたな。首を引っ付けてレベルアップさせ続ければ、体の処女膜も再生される。そうすれば、俺は毎回処女膜を破られて悲鳴を上げるコイツを楽しめるじゃねえか。」

 死んでもなおこんな目に遭うのか、と彼女は冷笑する。滑稽にもほどがある。

 ズシン、と地面の悲鳴が聞こえる。男が近づいてくる。彼女は少年に言わなければならないことがあった。今すぐ逃げろ、と。でも、彼女の脳裏に浮かんだのは、あって間もないころ少年と話した記憶だった。

『人を殺した気分はどうだ。清々しいか?』

 どちらにせよ、彼女は少年を殺す立場にある。でも、彼女はゾンビを殺す前に必ず聞いている。そこになんの意味などないにも関わらず――

『なんでこんなに虚しいんやろか・・・』

 少年の言葉は月夜に虚しく響いた。思わず胸を締め付けられそうだった。

『俺はどうすればいい。』

 少年のセリフは彼女自身の過去と重なる。それはそれほど遠くない昔。

『私はどうすればいいんだ。』

 彼女はゾンビになった直後、ある男に問うた。その男もゾンビだった。

『生き続けろ。生き続けるほかに、お前がお前であり続ける方法も、罪を償う方法もない。』

 それは残酷な言葉だった。苦しんで死んだ者に、もう一度苦しみながら生きて行けと言うのだから。でも、彼女が少年に向かって発したのも同じ言葉だった。

 次に少年はこう言った。

「俺はついていく。アンタの背中に。」

 それは彼女がその男に言いたかったけれど言えなかった言葉だった。少年は自分とは違う、と感じた瞬間、彼女は少年を殺せなくなった。

 その時、彼女が抱いた感情は悔しさと嫉妬だった。

 次に襲ってきたのは、少年と町へ急ぐ道の記憶。それはつい最近であるはずのなに、遠い昔のように思える出来事だった。その時になって彼女は、これが走馬灯であると知れる。人生最後の回顧があって間もない少年との記憶というのは滑稽だと思った。彼女がゾンビになった時の記憶が襲ってくるよりはマシであると安堵している。

『なあ、お前のレベルってどんくらい?』

 それは、自分の年が知られるようで嫌だった。自分がゾンビであることが自覚できてしまうから、より一層嫌だった。その時彼女はこう答えた。

『レベルとはゾンビの強さの度合いだ。それは弱さの度合いでもある。そうやすやすと教えられると思うか。』

 今思えば、どうしてそんな感情を抱いたのか不思議でならなかった。彼女自身、求めていたのかもしれない。生前与えられなかった幸せというものを。もう、随分と長い間、独りだった気がする――

「私のレベルは10だ。」

 彼女自身が発した言葉に彼女が驚いていた。だが、彼女は満足だった。もう言い残すことばなどないというように。

「話すな。腐敗が早まってまう。」

 それでも少年は必死だった。その瞳は美しかった。誰かが誰かのことを想う気持ち。それは人間だけに許されたものであって、しかし、目の前のゾンビはそれをまだ失ってはいない。言い残す言葉がないだけでも満足であるのに、誰かに想われて死ぬなど、数多の命を奪ってきた彼女に許されてなるものではなかった。幸福で、切り離されたはずの胸が張り裂けそうだった。

 なのに――


「チクショウ。あんな乳袋のどこがいいってんだよ!」

 的が外れる。その後、残りの弾が無くなるまでの三発。彼女はむやみやたらと撃ちまくった。それこそ無意味。

 その後、少年は見事大男を倒した。だが、それは彼女にとって嬉しいことではなかった。明らかに人体の限界を大きく超えた力。その代償は少年の命ともとれる腐敗ゲージの減少。数秒の出来事であったのに、少年の命三日分ほどはあっという間に消え去った。

目の前の消えゆく命を救いたいと彼女は願った。柄にもなく、憎むべき神に祈ったりした。そして、都合よく現れたのは、天の使いの如き乳袋だった。


夜の中、馬車が現れた。明りのない中馬車で走るなど自殺行為である。それがなんなくできる存在がただ一つ。ゾンビである。ゾンビは闇夜の中でも目が利く。だから、初めは大男の仲間が様子を見に来たのだと思った。

「うわっ。なにこれ。」

 素っ頓狂な声を上げて現れたのは、白い肌着同然の恰好をした女だった。馬車から降り立つとき、目障りな乳袋が慣性の法則に従い、たわわに揺れる。その瞬間、この女とは合い慣れないと彼女は確信した。

「アンタらゾンビか。」

 女は辺りを見回し、そう言う。だが、声を発するものは誰一人いない。

「ウチははよう逃げんとあかんのやけど・・・しゃあないか。」

 女は溜息をつく。

「こっちは、もうあかんな。」

 女は彼女の方ではなく、男たちの方を見て言ったので、彼女は少年のことを言われたのだと思った。ゾンビは首を切られてもある一定の時間は生きていられる。男はまだ生きている。彼女がいい例だった。

「でも、こっちの女子さんはなんとかなるなあ。」

 この乳袋は何を言っているのだろう、と彼女は呆れた。彼女ももう数分と待たず死ぬ運命なのだ。だが、女は彼女の頭もボールのように抱いて、奇妙なオブジェと化した体の方へと持っていく。そして、体と首を元のように密着させると、チクチクと針と糸で彼女の体と首を合体させた。

 それは正解である。だが、愚かなのだ。体を合わせ、レベルアップさせれば体は元に戻る。しかし、体の方は決して動かないから、どうすることもできない。だから、ゾンビの弱点は首を斬ることなのだ。

「はあ。疲れるからやりとうないけど、見捨てられはせんしなあ。」

 女は彼女の首に手をやり、意識を集中させる。すると、首と体はもとに戻っていく。

「体もちょっとは動くようにしておくさかい。」

 今度は手足に意識を集中させる。こちらは修復に時間がかかった。

「お前、何をしている。」

「うわっ。なんや。話せたんかいな。」

 腐敗ゲージの減少は収まった。

「能力で体を修復しとるだけや。あんたら、一体何しとったんや。もしかして、アンタがこいつらを⁉」

「私のことなどどうでもいい。それより、坊主は?」

「自分のことよりボーイフレンドの心配かいな。こないな小さい子誑かして。ええ趣味しとんなあ。」

 彼女は無視する。

「無視はきついで。でも、大丈夫。あの子は自力でレベルアップしたみたいやさかい。今は気力が抜けて眠っとるんやろ。運が良かったな。」

「男はまだ生きているはずだ。」

「いや。死んどる。信じられんのやったら自分で確かめてみ?もう体は動くやろうから。」

 彼女は立ち上がる。確かに体は動いた。男を見ると、大男であったのが嘘のようにミイラのように干からびていた。

「これは一体――」

「さあ。そこのボクの力なんかな?それとも、男の能力になんらかのデメリットがあったんか。」

 おそらく後者ではないかと彼女は推測する。そもそも、あれほどの大男の方がおかしかったのだ。魔獣でもあれほどの大きさのものは存在しない。

「さて。ウチがアンタを助けてやったんや。払うもんは払うてや。」

「金か?」

 金なら十分にあった。死体を漁ったり、狩った獣を売りさばいたりしたものだ。

「いや。違う。」

 女は偉そうに、大きな双丘を張り、言う。

「ウチの願いを叶える手伝いをしてもらう。」

 それはなんだ、と彼女は言う。

「ウチは人間に戻りたいんや。」


「騒々しいお帰りだな。」

 部屋には女が帰ってきていた。

「無事なんか?」

「そのセリフ。そっくりそのままお返しする。」

 女は不機嫌そうだった。

「それより、そこで眠っている男はなんだ。」

 アンを探すと、アンは涎を垂らし、眠りこけていた。

「えっと・・・これは・・・」

「さっきそこで拾たんや。」

「まさか、コイツに付き合うつもりじゃあないだろうな。」

「これはさっきゾンビになったんや。多少面倒みてやってもええやろ。それとも、このボクだけがアンタの特別なんか?」

「好きにしろ。」

 どうも、二人はあまり仲が良くないように感じた。何故だかは知らない。女の戦いというヤツなのだろう。

「それだけ出発が遅れるということだが?」

「かまわへんよ。」

 その後、二人は話すことはなかった。


「私は外にいる。」

「外?危ないんじゃないかみゃあ?」

「部屋の外だ。そこなら日光も入るまい。」

 そう言って女は出て行った。

 アンはそのまま床に寝かされている。少し気の毒に思った。

「どうしてアイツは出て行ったんだみゃあ?」

「あんたも律儀やなあ。」

 ラシアは気の毒そうに俺を見て言う。

「そう言えば、どうしてラシアは人間に戻りたいんだみゃあ?」

 人間に戻るということは苦しむということでもある。それはあまり聞かない方がよかったかと思ったが、もう遅い。

「それはなあ。こんな腐っていく体が嫌やからに決まっとるやん。自分の体が腐っていくなんて考えただけでも恐ろしいし。」

 それもそうか。だが、めったなことで死ぬことはないのは利点ではないだろうか。

「アンタなあ。そりゃあ、あの女子さんも怒るで。」

 なんだか、呆れられてしまった。

「女の子はいつまでも美しくありたいと願うもんや。臭いは分からへんけど、腐ったような匂いをぷんぷんさせて、夜にしか動けへんなんて女の子には最悪や。ウチは眩しい日光の下、白馬の王子さまと一緒にお散歩したいねん。」

 白馬の王子様ねえ。

「アンタはどうしてあの女子さんと一緒にいるん?」

「そうするしかなかったからかみゃあ。」

「前はそうやったかもしれんけど、今はどうなん。あんたは十分に戦えると思うけど。」

「でも、なんていうか・・・一人は寂しい。」

 ぷふふふ、とラシアは笑った。

「アンタ、思った以上に可愛えわあ。」

 目をキラキラさせながら言うので、俺は少しラシアが怖くなった。

「あんな女子ほっといて、ウチといかへん?」

 ラシアは真剣な目つきで俺を見つめる。だが――

「いや。俺はあの女についていくみゃあ。」

「名前も知らへんのに?」

「うん。」

「どうして?」

 それは、非常に難しい問題だった。その問いに俺は答えが出せない。

「なんだか、アイツがほっとけないみゃあ。」

「アンタら・・・はあ。」

 どうもラシアを失望させたようだった。

「まあ、さっきのは冗談や。忘れて。」

 その時、俺は眠くないことに気が付いた。

「どうして俺は眠くないみゃあ?」

「ああ。眠くなるのは気力が抜けたからやろ。ゾンビになりたては精神が疲れて昼眠くなる。でも、しばらくすると、眠らんでもかまわへんようになる。」

 しばらくの沈黙の後、ラシアは言った。

「アンタなら白馬の王子さまになってくれると思とったんやけどなあ。残念や。」

「どういうことみゃあ?」

「あんぽんたん。」

 何故か罵倒される。

「まあ、夜まで暇やし、ウチの昔話に付き合おうてえな。」

 構わない、と俺は答える。


 これはまだウチが子どもやったころ――せいぜい十年前ってところやな。なんや、その顔は。ウチが歳食ってると思たんかいな。まあ、確かにほんのちょっとだけ鯖読んだけど。十年ちょっと前でええか?

 物心ついたころから、ウチには夢があった。お嫁さんになりたかったんや。なんや。似合わへんと思たか?違う?ならええけど。

 ようウチの世話をしてくれたお姉さんがおってな。その人はお嫁さんやった。まあ、普段はぱっとせえへん人やったけど、旦那さんと一緒におる時はほんまに綺麗で、嬉しそうで、楽しそうやった。あんな風に人生を楽しめたらええな、なんて程度やったけど、でも、なりたいもんがあるってのはええことやろ?その頃やな。お姉さんが白馬の王子さまの話をしてくれたんは。いつかラシアちゃんにも格好のいい白馬の王子さまが現れる。その王子さまはラシアちゃんの危機にいち早く駆けつけて、ラシアちゃんを助けてくれるって。お姉さんは嬉しそうに、口癖のようにゆっとったわ。ウチも白馬の王子さまに憧れた。だって素晴らしいやん。でも、その後、現実を知ってしまう。そのお姉さんと旦那さんは別れてしもうた。その後、お姉さんは暗くなって、知らん間にウチの前から姿を消してしもうた。

 そん時、なんや裏切られた気がしてな。お嫁さんなんてええもんやないし、白馬の王子さまもおるわけない、と思った。まあ、でも小さいころに植え付けられた夢ってのはなかなか消えてくれへんもんなんやけどなあ。夢は呪い、なんてよう言ったもんや。

 その頃、ふと教会の前を通ったことがある。そん時、とってもきれいなシスターさんが通ってな。今でもまだ覚えとる。そのシスターさんからはええ匂いがしたわ。下町生まれのウチらとは違う清潔な臭い。あれはペパーミントの匂いやった。その時、シスターさんになろうと心に決めた。

 え?心変わりし過ぎやって?アンタが言うか?なんやその寝ぼけた顔は。まあ、ええ。でも、これはウチの過去やからなあ。もう変えることもできへんし。

 シスターさんになりたいって親にゆったら、なれへんって言われた。なんでや、って聞いたけど、なんでもや、としか返ってこうへん。近所の友達もアンタみたいな貧乏人がなれるはずないって言われたわ。でも、これだけは諦めたくなかった。どうしてもなれへんなんてウチは信じとうなかったんや。でも、また裏切られることになる。

 ある日、意を決して協会に足を運んだ。そん時は綺麗なシスターさんはおらへんかった。探したんやけどなあ。別のシスターさんに話しかけた。その時の顔はよう覚えとる。まるでウジ虫でも見る目ぇやったもん。それでもシスターさんになりたいってゆったら、なんて帰ってきたと思う?アンタみたいな下賤は売女がお似合いよ、やって。男を誘うために腰でも振りなさいとも言われたわ。腹に来たから、一発ぶん殴ってやったけど。あんときほどスカッとしたことはなかったわ。

 そして、すっぱりと諦めた。なんでなれるもんが決まっとんのか納得できんかったけど仕方がない。まだ子どもやったんやし。

 で、そのうち仕事を始めた。体を売る仕事。いや、踊り子や。こう見えてウチは処女やで?なんや、顔を赤うして。照れとんのかいな。腐敗が早まるで。

 ま、そんなこんなで随分と踊り子をしとった。酒場で踊るんやけどな。色んなお誘いがあったけど、ウチはつっぱねた。それが逆にプレミアかなんかがついて、えらい人気になってしもうたんやけど。誰がウチを堕とすか、ってので男どもが張り合っとったらしいけど。でもなあ、どいつもこいつもヘタレやった。ウチを命を呈して守ろうなんていう白馬の王子さまはおらへん。結局は体目当てやし。ほとほと男には嫌気がさしたわ。

 そんなある日。ウチは簡単に死んでもうた。あの日は酔ったお客さんを家に送って引き込まれそうになったのを殴り飛ばしてお花畑を見せてやった帰りやった。大丈夫かって?お客さんもなんやよろこんどったし、サービスなんやろ。うん。そうや。その帰り、あっさりと、な。夜走ってきた馬に蹴飛ばされた。すんごく痛かったで。首の骨が折れたんやもん。折れてからしばらくは意識はあるし、痛みはなくなってきてどんどん体が寒くなっていってなあ。死ぬかと思たわ。いや、実際死んだけど。そんなことがあったからかな。ウチが修復する能力を持ったんは。ゾンビになったあと、その力で体を治した。そうでなかったら、ウチは陽に焼かれとったやろうし。運よく蹴り飛ばされたんが暗い路地やったからなんとかなったってのがあったけど。

 初めはなんも分からんかったけど、日光に当たったら死ぬことだけは分かった。だってすんごく熱いんやから。でもウチは大して気にせえへんかった。ゾンビになっても踊り子を続けようと思った。そんで酒場の楽屋に入ると、みんながぎょっとした顔をするんや。どうした、って聞くと、お化け!ってみんな怯えてなあ。踊り子の一人がこう言った。

「なんで生きてるの?殺したはずなのに。」って。

「どういうことや。」

 ってウチが訊くと、「アンタが悪いのよ!」ってな。

「人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死ねばいいの。」

 思わず笑うたで。笑ったまま、その女を殺した。どうやって殺したんかは覚えてへん。そして、他の踊り子も全員殺した。ウチの勘違いかもしれんけど、半々の確率でその女をけしかけたんは周りの踊り子たちや。みんなウチのことを邪魔やと思っとったみたいやし。

 その後、舞台に立った。そん時、お客さんも踊り子と同じ顔をしよった。化け物を見たような顔。どうもウチが死んだことは一晩で広まったらしい。

「なんでや。ウチのどこが悪いんや。ウチは、ウチはただ生きとっただけやろうが!」

 そう叫びながら、気がつけばお客を襲っとった。完全な逆恨みやったんやろ。気がつけば、生きとる人間は自分を含めて一人もおらんかった。

 その後、何日もここで過ごした。何度も陽の光を浴びて死のうと思た。でも、死ねへんかった。ウチはまだ人生を楽しみたい。あのお姉さんのようにお嫁さんになって楽しく過ごしたい。白馬の王子さまに会いたい。純潔なシスターさんになりたい。そして、人間に戻りたい。

 夢が呪いになって死ぬことができへんかった。叶えん限りは絶対に解けへん呪い。

 そしてある日、この酒場から、この町から出ることにした。ジーっとしててもドーにもならへん。馬車を盗んで森の方へ行った。そん時に倒れとるあんたらを見つけた。

 まあ、そんなとこや。


 なるたけ明るく話そうとラシアは心掛けているようだったが、傍から見ても辛そうだった。

「あのハンターならウチを殺すと思とったけど、殺さへんかったなあ。なんでやろ。」

 別に疑問に思っているというわけではなく、話を振り切るために、過去を思い出さないために話したように見えた。

「それは、ラシアが苦しんでいるからだろうみゃあ。」

「そうか?」

 ゾンビは涙を流さない。流せない。それが一番苦しいのだと俺は知っている。

「俺にはラシアが眩しいみゃあ。自分の夢があって、それに一直線で。」

「惚れた?」

 からかうように言っているので、それが冗談であることが分かった。だが、ラシアの見せた笑顔はきっと、そのお嫁さんと同じくらい素晴らしいものなのだろうと俺は思う。

「まあ、こんなことがあったから、ウチはこのおっさんが心配なんやけど。」

 ラシアは眠りこけたアンを見て言った。

「でも、アンの願いも叶うといいみゃあ。」

 ラシアは何故か笑った。決して笑われることを言った覚えはない。

「アンタ、誰かのことを想う時、ええ顔するわ。もしかして、ソッチ系?そうやもんなあ。こんな絶世の美女が居るのに襲わんのはおかしいもん。」

 そう言われて、何故かラシアは顔を赤くする。自分で言って恥ずかしかったのだろうか。

 少しの静寂。聞こえるのはアンのいびきのみ。その微妙な音が、この場に寝ているゾンビと二人の男女がいることを際立たせる。変に意識してしまい、俺は体をラシアと明後日の方向に向きを変える。ラシアも同じく意識してしまったのだろう。

 陽は傾きかけているようだった。


「さあ、ミラリーを探しに行こうぜ!」

 電源が入ったようにアンは跳び起きる。

「なあ、今思ったんだが、別に誰も寝ないなら、ベッド要らないんじゃないかみゃあ?」

「折角楽屋を綺麗にして家から持ってきたのに捨てるのは嫌や。他の人が寝るんはもっと嫌。」

「あのー。しれっと無視しないでくださる?」

「ほら、行くで。」

「ちょっと待ってよぉ。」

 ぞんざいな扱いが少し可哀想になるアンだが、別にそれでギクシャクするわけでもない。

 楽屋の扉を開けると、初めて会った時のように女は鎮座していた。

「行くのか?」

「コイツの野暮用に付き合うだけや。」

「そうか。」

 女は動こうとしなかった。留守番するつもりだろうか。二人は気にせず進む中、俺は女に声をかける。

「一緒に行かないか?」

「どうして。」

「どうしてって・・・」

 女が行きたくないのならそれでいい。だが、一人で留守番は、悲しい。よく、知っている。

「ついてきてほしいんだ。いや、ついてきてください。お願いします。」

 俺は頭を下げる。

「頭を上げろ。どういう理由かは知らんがついていってやる。」

 女は重い腰を上げた。女が付いてきたいと思っているから、などという理由で頭を下げたのではない。俺が女を一人で留守番させるのが嫌だったというだけだ。

「ありがとう。」

「別に礼を言われる筋合いはない。」

 女は俺たちと合流する。

「なんや。アンタ来たかったんかいな。そうならそう言えばいいのに。」

 ラシアは悪戯な笑みを浮かべて言った。女はムッとしたようだった。

「坊主がどうしてもついてきてほしいと頭まで下げたのでな。ついていかざるを得まいだろう?」

 ラシアは何故か俺を睨む。それほど女のことが嫌いなのだろうか。

「うーん、俺は蚊帳の外~。」

 寂しげにアンは歌った。


 川沿いを進んで郊外へ。地面は舗装されておらず、久しい土の感触を確かめる。女に何があってもいいようにと剣を携帯するように言われたので、邪魔でありながら持って来ている。

 風が吹けば飛んでいきそうな一軒家。アンが妹と暮らしてきた家。

 アンは緊張した足取りで家に進んでいく。自分が受け入れられるのか心配なのだろう。俺はアンについていく。家の外から結果を見守ろうと思った。ラシアと女は遠くから見ているだけのようだった。

 ゆっくりとドアを開ける。家に明かりは点いていないのでミラリーはいないかもしれない。閉まるドアを俺は見守る。二人の時間を邪魔する訳にはいかない。

「ミラリー・・・」

 ミラリーはいたようだった。

「兄さん。」

 あどけない少女の声。声だけで分かる。きっと美人だ。

「探したよ、ミラリー。どこにいたんだ。」

「兄さん、死んだはずじゃなかったの?」

「生き返ったんだ。一緒にミラリーと暮らすために。」

 しばらくの沈黙。ミラリーは整理がつかないのだろうし、アンはその様子をじっと見ているのだろう。

「どうして生き返ったの?」

「わからない。でも、もう一度あえて嬉しいよ。」

「なんで?訳が分からない。どうして死んだままでいてくれなかったのよ。」

 ―――――

 凍り付いた。俺の心も。そして、アンの心も。

「私は兄さんが死んだから、兄さんを殺してしまった貴族からお金を一杯もらったの。そして、養子にしてくれるって言われたの。でも、兄さんが『アンビシュは生きています。妹のミラリーを探しています』なんて広告を出すから、金を取り上げられて追い出された!私がこんな貧乏生活嫌だったって知ってるでしょ?折角ぜいたくな暮らしができると思ったのに。なのに邪魔ばかりして。いっつもそうだったじゃない。死んでくれてせいせいしたのに。」

 これ以上は止めてくれ。俺は耳を塞いだ。でも、音は聞こえてくる。

「死んだままでいてくれればよかったのよ。」

 大きな音。家具が倒れる音だろう。それと同時に少女の悲鳴。鈍い音と悲鳴とが吐き気を催す不協和音を奏でる。

 俺は扉を開ける。もう、全てが終わった後だった。ミラリーは床に倒れている。

 アンは生気のそがれた顔で俺を見る。その顔は訴えていた。泣いてしまいたい、と。でも、涙が出てこないんだ、と。

「なあ、友よ。」

 床に膝をついて言った。その姿はかつての俺と瓜二つであった。

「俺を殺してくれ。」

 アンはもうそれ以上の言葉を発することができないようだった。

<村を出た俺は路頭に迷った>

 俺は月下美人の鞘を抜く。

<武器も何もない。このままでは死ぬ、と思った>

 さらさらと小気味のいい音を立てて、艶やかな刀身が姿を現す。

<だが、丁度俺のことを見つけて声をかける人がいた。馬車に乗った商人だった>

 俺はどうすればいいのか迷った。いいや。迷いたかった。

<商人が俺の顔を心配そうにのぞき込んだとき、俺は商人の腰から剣を抜き、商人の首を切った。商人はもう一人いた>

 だが、アンの気持ちは痛いほど分かった。俺にはアンにそれでも生きろと言えなかった。

<馬車に乗ったそいつが何が起きたのか理解できず動けない隙を狙って馬車に飛び乗り殺した>

 一思いに楽にしてやろうと思い、能力を使う。いつの間にか自分の意のままに力を使うことができるようになっていた。

<馬は驚き俺を馬車から吹き飛ばしながら走り去っていった>

 ころん、とアンの首は落ちた。そのあっけなさにしばらく動けなかった。

<その時からこの剣は俺の愛剣となった>

 まだアンは生きている。その瞳は早く楽にしてくれ、と頼んでいた。

「はい、これ。」

 ラシアはそう言って俺にマッチ箱を渡す。いつの間にかラシアと女はアンの家に来ていた。俺は何も言わず、マッチに火を点け、そのままマッチを投げる。マッチはベッドの上に落ち、ベッドは燃え始めた。誰かが俺を引っ張って家から連れ出した。

「ゾンビは例外なく最愛だった人を殺す。」

 腕を引いているのは女だった。俺の腕を掴む手はかすかにふるえていた。きっと経験があるのだろう。彼女はその苦しみを何度も経験したに違いない。裏切られ最愛だった人を殺すゾンビを何度も見てきたに違いない。何度も殺してくれと頼まれたに違いない。そんな汚れ仕事をハンターである彼女は請け負ってきた。それはとても悲しくて、救いのないことだと思われた。

「やっぱりそうなるか。アイツの家を見た時から薄々分っとったけどね。妹の物だけがこぎれいで、兄貴のものはボロボロやった。あの妹は兄貴が思うよりもいい妹やなかったんやろ。」

 慰めているつもりなのか、ラシアが言った。まるで逃れられない運命であると、そう告げているようにさえ思える。

 俺はそのままずっと女に引きずられたままだった。


「ボク、結局出てけえへんなあ。」

 出発の準備を終えた女とラシアは閉ざされた楽屋ドアを見る。

「行くぞ。お前とて、数日の猶予しかないだろう。外で魔物を狩らねば。」

「アンタはそれでええんかいな。」

 去りゆく背中をラシアは呼び止める。

「どういうことだ?」

 本気で分かっていないというような様子で言うので、ラシアは腹が立ってしまった。

「あの子はアンタの特別とちゃうんか。放っといていいんか。」

「何を勘違いしている。」

 感情のこもっていない、ひやりとする声で女は言う。

「アイツはただ私についてきていただけだ。愚かにも結果的に私を助けることになったというだけだ。」

「あの子が全部勝手にやったことやから、自分には関係ないと、そう言いたいんか。」

「そういうことだ。」

「アンタ、あのこがそういう気持ちでアンタを助けたんか、ついていこうと思ったんか考えたことはあるんか。脳みそまで腐ってもうとんとちゃうか。」

「お前こそ、頭が腐っているのではないか?ゾンビは人間とは全く別の生き物だ。ゾンビのことを人間の理屈に当てはめるのは、そちらの方が間違えていると思うのだが?」

「あくまで冷静なんやね。」

「それに、だ。あの坊主を特別視しているのはお前の方ではないか?人は他人を自己の分身としてその心象を投影する。つまり――」

「つまり、ウチがあんなガキに惚れとると?そんなわけあるかい。そんな特殊な趣味してへんわ。ほら、さっさと行くで。あんなガキを心配しとるウチが阿保やったわ。」

 二人は酒場を去る。

「で、どこにいくつもりなん?」

 ラシアは女に聞いた。

「ハンターの隠れ家に行く。そこには地下室があるから、次の町への中継地点としては十分すぎるだろう。同時に、何かしらの情報を得られるかもしれん。」

「ウチが人間に戻るアテがあるん?」

「いや、ない。」

「じゃあ、どないすんねん。」

「私とてお前のバカな願いを叶えるのは私の目的のついでとしか考えていない。」

「アンタは何を目的に旅をしとん?」

「ワイトを殺す。いや、正確にはワイトを生み出す王、ワイトキングを殺す。」

 それは何なのか、という問いを投げかける前に、女は指を指して言う。

「あの馬車を奪おう。」

 町中に無造作に乗り捨てられていた馬車に二人は乗り込み、舗装された道を行く。馬は夜中に走りたくないと訴えていたが、手綱を握る女の威圧感に圧倒されて、きびきびと走り出す。

「で、さっきの話なんやけど、ワイトってなんなん?」

 舗装されているとはいえ、道路には凹凸があり、その凹凸に車輪が跳ね上がる。そんな中話すものだから、ラシアは切れ切れになったり、上ずったりしながら話した。

「ある特殊な能力をワイトの王から授かったゾンビのことだ。」

 なんだかあまり話したくない口調ではあるが、ラシアは構わず尋ねる。

「特殊な能力って?」

「死体を強制的にゾンビにする。いや、あれはゾンビなのではない。我々とは違い、そこに意思はないのだから。ただ、ワイトの命ずるままに殺しまくる殺戮兵器となる。」

 それはひどく非人道的に思えた。死体を兵器として意思もなく人を殺させる。

「ワイトは存在するだけで人類を、人類だけでなく我々ゾンビを含む生命を脅かす。決して看過していいものではない。」

「えらいアンタらしいお言葉や。」

 女が正義とかそういう感情でワイトを狩ろうとしているのではないと知って、ラシアは少しほっとした。ラシアは自分の知っている女が自分の知らない存在であることを畏れたのかもしれなかった。

碌に機能させるつもりもない城壁の門を潜り抜けて、町を出る。今度こそおさらばだと思うと、離れゆく城壁にラシアは感慨のようなものを覚えた。

 さらば、過去。さらば、人生。さらば、私の町、ヤルダバオト。

 だが、そんなに簡単にいかないのも人生。


 城壁が見えなくなって荒野に出る。この分だと、町から北へと向かっているのだな、とラシアは思った。そんな矢先、馬が急に止まるものだから、ラシアは馬車の荷車の上で何度か転がってしまう。

「アンタ、止めるんならもっとちゃんととめてんか?」

「すまない。誰かを載せることなどしたことがないのでな。」

 悪びれもせず女は言った。

「ここか?」

 そこは荒野に立つ一軒家といった感じだった。掲げられた看板から、酒場であると知れる。

「イートマンで出てきた宿屋みたいやな。」

「世界観をあやふやにする発言はご法度だ。」

「細かいこと気にするなあ。」

 二人は店に入って行く。当然明かりなどない。その中で闇にひしめく数人がいた。闇夜での迷いのない動きから、それがゾンビであることは間違いなさそうだった。

「いらっしゃい。お客さん。」

 カウンターに座った二人をマスターが迎える。頭にゲージがあるので、これもゾンビだ。

「ギムレットを二つ。」

「ギムレットにはまだ早いんじゃありませんか?お客さん。」

「いや、長いお別れにはちょうどいい。」

 マスターは数種の酒をシェイカーに注ぎ、技術を誇示するように数回振る。そして、グラスにライムを添えて、カクテルを注ぐ。女は酒を受け取り、一口つける前に、言った。

「ところで、前のマスターはどうした。」

 女は器用にグラスを天高く投げる。目にも止まらぬ速さで銃を袋から取り出し、マスターの顔面に銃弾を叩きこむ。それが彼女の問いに対するマスターの返答代わりとなった。

 呆気に取られているラシアを置き去りにし、もう一方の手でライフルを取り出す。そして、背後の客たちを打ち抜いていく。片手であるにもかかわらず、狙いは正確だった。行動を開始しようと重心を傾け始めたゾンビたちを、行動を開始させる前に撃ち砕く。だが、ゾンビは際限ない。彼女のライフルの装填数は5発。両手合わせて十連発。それでは数が足りない。近い距離にあるゾンビ相手に弾を込めている時間はない。

 それをしめた、とゾンビは前進しようとする。その歓喜に満ち溢れた顔を女は絶望で塗りつぶす。また二丁、袋からライフルを取り出したのだ。前のゾンビから正確に、速く打ち抜いていく。また十人殺したら、またもう二丁取り出す。そうしてまた二丁、と。そして、最後の二丁。それを打ち抜いてもまだゾンビは増え続ける。女は素早く弾を装填する。一発づつ込めて放つほかない。出口を確保できれば良かったのだが、頭のいいゾンビたちは、肉の壁で出口を覆っている。ゾンビが女に飛び掛かる。銃で撃ち抜く。すぐにもう一体。装填し撃ち抜く。まだもう一体。装填し、銃を向けるが――ライフルの長い銃身がゾンビの体に触れる。もう無傷ではいられない。そう女が確信した時だった。

 ゾンビは大きく吹き飛んだ。それは銃によるものではない。それよりも遠くに吹き飛ばされた。

「おっちゃんら、趣味悪いで。どこの国の人や。こんな俎板が趣味なんて。」

 椅子を持ち、女を守るようにして立ちはだかったのはラシアだった。

「ラシア。弾を込める時間を稼げ。」

「初めて名前呼んでくれたな。でも、残念。アンタの出番がないほどに暴れたるさかいな。」

 ラシアはそういうと、闘牛の如くゾンビの群れに突っ込んでいき、無数のゾンビたちを蛆を飛ばすように宙に舞いあげていった。その姿、狂戦士の如く。

 彼女の武器は周辺にある椅子や机だった。本来家具であるはずのものを武器に変え、ゾンビの首を討ちすえ、顎を粉砕していく。

 だが、軽率であった。ゾンビの数は多い。もう増えることはないが、あと三十体はいよう。

 ラシアは囲まれてしまった。背後から飛び掛かるゾンビを打ち、その勢いのまま前後左右を蹴散らす。だが、再び背後より飛び掛かられる。今度は避けようがない――

 ばきゅーん。

 ラシアを救ったのは銃声。そのままラシアは壁にぶつかっていき、酒場の壁を壊して外に出る。

 その後は一方的な殺戮であった。女は撃ちまくり、空になった銃を宙に投げ、転がっているものを素早く両手に取り、そして、撃ちまくり――

 その間、十秒にも満たなかった。その場に生きているものは彼女ともう一人だけ――

 女はことは済んだとカウンターに座り、一滴も零れていないギムレットをゆっくりと味わった。

「呑気なもんやなあ。ウチには何にも理解できへん。」

 入り口から入ってきたラシアはそう言って女のもとに進んでいく。

「何がだ?」

「何もかもだ。」

「まあ、レベルアップ記念だ。疑問に答えてやってもいい。」

「まず、こいつらは何者なん。どっから湧いてきた。」

「地下に隠れていたのだろう。まあ、百人近く入ることができる広さではなかったから地獄絵図だっただろうが。次に、こいつらはハンターを敵視するゾンビたちだろう。相当の手練れだったところから、ハンターを狩るハンター、ハンター・ハンターだろう。詳しくはそこの男に話を聞こう。」

 女は顎でカウンターの向こうを指す。そこには銃で撃たれたマスターがいる。

「急所は外した。話せるはずだ。」

 ラシアは絶対急所やろ、と思いながら、ゾンビやからかまわへんか、と思い至る。

「どうする?生きとるんやったら治せるで。」

「止めておけ。この男には私たちでは太刀打ちできん。レベル20だからな。」

「顔無き射手にそう評価されるとは光栄ですね。」

 マスターは倒れたまま言った。きっと急所に当てられたので体を動かすことができないのだろう。

「そいつは私ではない。まだレベル12だ。」

「でも、我々もレベルが十以上でありました。それでも百人以上を相手にできるとは凄腕でありますよ。」

「アンタが油断してくれたおかげだ。お前相手には接近戦で勝ち目はなかった。」

「でも、油断させるのも一つの技術。二度目の人生でこうも可能性あふれる若者に殺されるとは、本望です。」

「たわけ。それより、お前らの目的はなんだ。数日前私を襲った大男もお前らの仲間だろう。」

「あれは正確には違います。あなたを追っている一匹オオカミのストーカーでした。我々はあなたの情報を渡しただけ。」

「もう一つの問いに答えろ。お前らはなんなんだ。」

「まあ、ゾンビ専門の傭兵ですかね。ハンターを憎むものから金と情報を貰い仕事をするだけです。まあ、本来の仕事はこの詰所のハンターを皆殺しにするだけで良かったのですが、ついつい賞金首が欲しくなりましてね。でも、欲を出し過ぎました。」

「誰に頼まれた。ワイトか?」

「まさか。ワイトは我々にとっても天敵ですよ。あの絶対的な力はどんなゾンビも危険視する。実際あったことさえないものの、関わり合いたくはないですね。」

「じゃあ、誰に。」

「誰にというわけでもありません。ハンターを憎むゾンビたちがお金を出して我々にハンターの詰め所を襲わせただけですから。ただ、これで大半のハンターは滅んだでしょう。これは同時多発的に起こっている。生き残っているのは、力のあるあなたたちのような凄腕だけだ。あなたたちは我々の手で負えるものでもない。あなたたちを倒せるのはワイトくらいでしょう。さあ。私が言えるのはこのくらいです。早く楽にしてください。脊椎を貫かれては、首を斬られるのと同じです。体は一切動かない。そのくせ腐敗は早まらないから楽に死ねません。」

「では、早く死ね。」

「御迷惑をおかけします。」

 マスターの最期の言葉は銃声にかき消され、二人には聞こえなかった。

「で、どないすんの。呑気に酒飲んどる暇もないで。」

「だが、どうしようもないからな。次の町までは陽が上る前につきそうもない。だが、ここにいるのも援軍が来る可能性があるから危険だ。」

「じゃあ、答え、でとるやないの。」

 しばらく女は黙っていた。溜息を吐く。

「帰らなきゃダメ?」

「帰らんとあかん。」

 女は困った顔をしながらしぶしぶ町に戻っていった。


 俺の頭は真っ白になった。それは別に白髪になったってわけではない。西の大陸にはショックで一日で白髪になった人がいるらしいが、どうでもいい。

 何も考えられない。そんな中、ずっと頭の中にこびりついているのは、「殺してくれ・・・」と言ったアンの顔。愛するものを自らの手で殺めたことに対する引きつった笑顔。きっと自分でもどんな顔をすればいいのか分からなかったに違いない。

 俺は動かなかった。膝を抱えたまま。ふと、こんな描写をどこかで耳にした気がした。しばらく動かない頭で考えて、思いつかなかったので考えるのを止めた。一つ思い出したのはそのゾンビは死のうとしていたことだった。

 そうだ、死のう。そう思った。もとより俺は死ぬつもりだった。それは俺が村人のいじめに耐えられなかっただけで、でも、その理由も正しかったのかどうか、今でも疑問に残る。いや、生き返ってからずっと、その疑問は俺の胸を締め付け続けていた。無理に考えないようにして。だから、俺は女についていったのだ。確信があったわけではないが、何かしていないと胸に何かが襲いかかってきて止まった心臓を締め付ける。そして実際、女と一緒に行動していると胸の締め付けが緩んだ。時々苦しくはなったけど――

 扉の向こうで話声がする。その後、がさがさと物音。しばらくすると、その音もどこかに消えた。二人は旅立ったのだと思った。

 俺はしばらくじっとしていた。ほのかな期待を込めて。俺は何を期待していたのだろう。

                    帰ってきてくれるかもしれない。

 だが、しばらく待っても物音一つしない。

                    吹き抜けるのは風だけ。

 外はまだ夜だった。

          また、一人になった。

 一人には慣れている。

           でも、忘れてた。

 寂しくなんかない。

          そんなの、嘘だ。

 追いかけたって間に合わない。俺はまた、一人になった。これからは独りぼっちで生きていく他ない。

     ゾンビに居場所なんて――

 長い夜だった。眠れるはずなのに眠れない。もう、ゾンビなのだから、眠ることはない。永遠に眠ってしまいたい。まだ、朝にはならない――

 気がつけば、扉を開けて、外に出ていた。風で落ち葉が舞い上がる。そろそろ冬が近い。

 ふらふらふらふらと、あてもなく歩いていった。どこに向かうのか、と俺は問いかける。どこにも行く場所はない、と答える。じゃあ、なんで歩いているのか。

 川まで来ていた。そこは初めてアンと会った場所だ。つい昨日のことなのに、とても昔のように思える。アンは自分がゾンビになれたことを喜んでいた。妹と一緒に再び暮らせることを心の底から喜んでいた。でも、裏切られた。ゾンビは例外なく最愛の人を殺すらしい。

 そう言えば、俺は最愛の人を殺してはいない、と気がつく。でも、同時に最愛の人なんていなかったことにも気付かされてしまった。

 俺の人生委は虚しかった。でも、やり直せるかも、なんて思ってしまったんだ。女と、ラシアと、アンとで。村では受け入れられなかった俺をゾンビは受け入れてくれた。俺の居場所は、俺のもとから去っていった。

「きゃっ。」

 俺は何かにぶつかって、地面を転げる。どこかで聞いたことのある声だった。

「すいません。お怪我は無いですか?」

 そう言ってくれた人を見て、俺は息を飲む。その人物はチュリメだった。だけど、その顔は昨日とは違って、目はひどく腫れ、頬はひどく湿っている。

「あ、昨日の。」

 チュリメは涙を拭いて俺の顔を見る。でも、再び涙があふれてくる。

「どうしたんだみゃあ。」

 俺は心配して声をかける。

「実は・・・ポースが・・・」

 その先は言わなくても分かった。聞く前から大方予想はついてしまっていた。だから、その先を言わせるのは酷だと思った。

「いや。言わなくてもいいみゃあ。」

「はい。今から、教会の方へご連絡に行こうと・・・」

 こんな夜中でなくともいいのに。それほどチュリメは混乱していたのだろう。

「教会までついていくみゃあ。人に当たるくらい混乱しているようだから。」

 もしかしたら俺が当たってしまったのかもしれないが、この際、お預けにしておこう。

「ありがとうございます。ここは・・・川・・・ですね。どうも全く見当違いの方へ来てしまったみたいです。」

 俺だって女に引ずっていかれなければ、アンの家にそのままいたかもしれない。そして、死んだだろう。気持ちは痛いほどよく分かった。

 俺たちは教会に向かって歩き出す。歩いているとチュリメも気持ちが落ち着いてきたようだった。

「すいません。」

 チュリメは謝った。どうして謝るのか、と俺は聞いた。

「まだ当分お金の工面ができそうになくて。」

「構わないみゃあ。もう、返してもらわなくていい。」

「どうしてですか?」

 チュリメは喜んでいるわけではなく、どちらかというと怒っているようだった。彼女のプライドを傷つけたのかもしれない。

「それは――」

 それは、アンが死んだから。

「アンが死んだから。」

 チュリメは絶句した。俺も絶句した。よくも簡単に言えたものだと思った。俺が、殺したのに。

「あなたはお強い人なのですね。」

 悲し気にチュリメは言った。それは同情ではなく嫉妬なのだと思った。

「いいや。強くなんかないみゃあ。でも、このままだといけないと思うからみゃあ。」

 生き続けろ。生き続けるほかに、お前がお前であり続ける方法も、罪を償う方法もない。

 そんな言葉が思い出された。でも、本当に言いたかったのはそんなことではなかったのではないかと思う。きっと、殺した人の分も、死ななければならなかった人の分も、生きて幸せになれ。でも、決して忘れてはならない。その人はお前の中で呪いとなり希望となり、永遠に生き続けるのだから。

 こんな時に、俺は自分の生きる意義を見つけてしまった。

「それが強いんだと思います。私も頑張らなきゃ。頑張って忘れなきゃ。」

「それじゃあダメだみゃあ。」

 俺は立ち止まって言っていた。

「忘れたら可哀想だみゃあ。どれだけかかってもいい。立ち直るのに時間がかかっても。でも、忘れちゃいけないみゃあ。苦しみながら、懐かしみながら、それでも一緒に歩いていかなきゃ可哀想だみゃあ。」

「私には、できない・・・」

「できるみゃあ。チュリメさんは強いから。」

 彼女の顔は少し明るくなった。慰めにもならない言葉だけど、元気になってくれればそれでいい。

「あと、教会はこっちだと思うみゃあ。」

 俺は横を指さす。そのままだと城壁まで行ってしまう。

「あら。」

 きっとこの人は天性の方向音痴なのだと確信した。


 しまいには地図を奪って案内していた。教会まではもうすぐのはずである。

「あの人も――」

 チュリメが語り始めた。

「あの人も、私が方向音痴だってからかったんです。一人で留守番もさせられないって。そんなことないって言うと、子どもの時森の入り口まで行ってしまったのはどこのどいつだーって。」

 少し悲しそうながらも、チュリメの顔は生き生きしていた。

「あの人はもともと体が弱くて、なかなか一緒になろうって言ってくれなかったんです。ある日、僕と別れようなんて言いだすもんですから、どうして?いい女でもできたの?って問いただしたんです。家から出れない人間が浮気するはずないってわかってたのに。するとあの人、僕と一緒にいたらチュリメがお嫁にいけないだろ、って。それで私、頭にきて。私はお嫁になんか行かない。ポースを婿にするんだからって言いましたの。あの人、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。それじゃダメだ、とかなんとか言いますから、婿になりなさい。絶対にって。言ったらもう観念したのか、こうとだけ言いました。僕が十六になったら結婚しよう。それまでは大人しくしていてくれって。まるで人をじゃじゃ馬みたいに言うんです。でも、その時にはもう分かってたんでしょうね。自分が十六まで生きることはできないだろうって。」

 その話を聞いて、チュリメがどうしてもポースに生きて欲しいと願っていたことに納得がいった。きっと、ポースもそうだったに違いない。

「あの人が十六になるまであと一か月だったのに・・・」

 きっと、声をかけるべきではないのだと思った。チュリメなりに気持ちを整理しているのだ。

「聞くべきでないとは分かっていますけど、アンさんは・・・」

「昨日、俺たちと別れた後、どうも事故に遭ったみたいですみゃあ。今朝、川に打ち上げられてて。」

「やっぱり聞いてはいけなかったですよね。この町は決していい町ではありません。救えない町です。軍人だったり貴族だったりが弱者から富をふんだくっているんです。どうしてこんな弱い私たちから奪い取ろうとするのか、私にはわかりません。そして、誰一人、そのことに不満をもらしません。そんな元気はどこにもないからです。」

 目の前にそびえる、周りの建物とは比べ物にならない豪華さは嫌悪しか湧いてこなかった。これが教会であることがばかばかしく思ってしまう。これほどの建物を建てるお金を誰から搾り取ったのかなど考えたくもなかった。

「やっぱり、開いていないですよね。」

 肩を落としてチュリメは言った。教会の門は固く閉ざされている。

「帰りましょう。」

 そう言って立ち去ろうとした時、

「お待ちください。」

 という声が俺たちを呼び止めた。声の方へ振り向くと、そこには修道服を着たシスターさんがいた。

「何か教会に用ですか?」

 門が開かなかったことを考えると、シスターさんは教会への帰りだったようだ。

「実は、婚約者が――」

「お悔やみ申し上げます。」

 シスターは眉一つ動かさずに言った。慣れているのだろうと感じた。その顔は整っていて、シスターにしておくのはもったいないほどだった。これほどの美人が修道女となっているのにはきっと理由があるのだと思った。

「実は、今、神父が体調を崩していまして。代わりに私がお悔やみを申し上げているのです。もしよければこれから伺うこともできますが。」

「しかし、こんな夜中では――」

「陽が上ってしまえば、その、言いにくいのですが、ご寄付頂いている方を窺わなければならないのです。でも、人は皆平等ですから、私はこうやって深夜に貧しい方々を参っています。」

「シスターさんさえよければ、お願いできますか?」

「はい。喜んで。申し遅れましたが、私はシスター・ラピットと申します。」

「チュリメです。」

 二人はチュリメの家へ向かおうとするので、俺は急いで二人の前に出て誘導する。でなければ、再び迷子になりかねない。

「いい匂いですね。これはハーブですか?」

「ミントです。本来神に仕えるシスターが香水などつけるべきではないのですが、過去を忘れないように戒めとして許していただいているのです。」

「そうなんですか。」

 申し訳なさそうにチュリメは言った。だが、シスター・ラピットは気にもしていないようだった。

「ここですみゃあ。」

「本当にここですね。」

 教会とチュリメの家は近かった。時間がかかったのは、チュリメが明後日の方向に向かっていたからである。昨日もアンが案内しないと医院まで行けなかったかもしれない。もしくは暗くなるまでたどり着けなかったのか。帰りは医者がいたからスムーズに帰れて、医者はチュリメの迷子のことをよく知っていたから、気が気ではなかったかもしれない。そう思うとおかしくなった。

「じゃあ、俺はここで。」

 空は青くなり始めていた。一時間と経たず、太陽が上ってしまうだろう。

「ありがとうございました。ええっと・・・」

 俺はその時名乗っていなかったことに気がつく。でも、これ以上俺と、ゾンビと関わらない方がいい。

「俺の名前は一太郎冠者だみゃあ。」

「そう、ですか。」

 本当の名前も教えてくれないんですね、とチュリメは呟いた。

「じゃあ。」

 もう、会うこともないだろう。それがチュリメとの永遠のお別れとなった。

 少しの間、チュリメが家に帰るのを眺めていた。シスター・ラピットはすでに家の中に入り準備していた。無事彼女が帰宅できたのを確認して急いで帰らないと、と歩き始めた時、悲鳴が聞こえた。チュリメのものだった。

 俺は急いで家のドアを開ける。そこには、俺の方を力のない目で見るチュリメと、その喉元に牙を突き立てる屍――ポースがいた。ポースはそのままチュリメの喉を食いちぎる。それを口の中で咀嚼した後、ぐしゃぐしゃとスイカでも食べるようにチュリメの体を貪り始めた。それは人のなせる業ではなかった。ポースはゾンビになってしまった。だが、どうしてポースはチュリメを食べているのか。ゾンビが最愛の人を殺すからって、そんなにすぐに殺してしまうものなのか。

 ポースには意思が無いように見えた。それはただの飢えた獣と同様で、その獣は標的を俺に変えた。チュリメは内臓を食べられ、肋骨がむき出しになっている。そして、俺も同じ運命だ。月下美人は持って来ていない。なすすべなく俺の目の前に大きな咢が開けられて――

 そんな時、思ったのが、ゾンビの肉なんて美味しくないぞ、ということだったのだから面白い。

 銃声。それとともにポースは吹き飛ぶ。

「ぼーっとするな!」

 背後の声に俺は我に返る。後ろを振り向く。そこには煙たなびくライフルを持った女が立っていた。

「コイツ、やはり。」

 ポースは立ち上がった。額に大きな風穴がついているというのに。その時になって、ポースの頭上に腐敗ゲージがない事に気がつく。

「待って。ソイツはポースなんだ。」

「もう遅い。」

 ライフルは火を噴き音を出す。それと同時にポースの頭は完全になくなり、動くことを止めた。

「一体何が――」

「もうすぐ日の出だ。急ぐぞ。」

 俺は女に手を引かれてチュリメの家を後にした。


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