絵が上手くなりたいものです(絵)
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満開の桜の木の下。一人の少女を絵の中に閉じ込めようと、画家にでもなったかのようにペンを片手に突き出して遠近感を測ってみる。
少女は四つん這いになり、片手を顔の近くでグーを作って手首を曲げ、お尻を後ろに突き出すといったなんともアレな姿勢を取っていた。
「あのさ、栞。やっぱり、やめない? そのポーズ」
「あれ? 晴人は女豹の格好は嫌いなの?」
どうにもセーラー服の合間からちらちらと見える肌色部分が気になって仕方がないのである。
だが、首を振って邪念を振り払い、目の前の絵に集中する。
「そう言う問題じゃなくてさ! 普通に木に寄り添うラフな感じでいいから」
「ふーん。わかった」
気を取り直してスケッチブックにペンを勢いよく走らせるのはいいものの、全くと言っていい出来にならない。まずは顔から描き始めようとするも、どう頑張っても縄文時代の土偶のような狂気じみた絵しか生み出せない。
悩んだ末に、臨場感や疾走感があれば上手くみえるのではないかと思いつく。
「うーんと。やっぱりちょっと動きが欲しいかなー?」
「えっと、例えばどんなの?」
「んー、じゃあ、その場でジャンプしてみるとか」
「うん。おっけい!」
言った通りにその場でぴょんぴょんと飛び跳ねてくれる栞。そして上半身の一部も同時にぴょんぴょんしており、ボクはカッと目を見開く。
思わず身に纏っている服を脱ぎ捨てて『ナイスですねぇ〜』と言いたくなる気持ちを抑えて、ゆっくりと紙に模写していく。
すると、その時。
「きゃあっ!?」
下から突き上げてくるような春風が栞を襲い、その反動でスカートがひらりと捲り上がる。
「…………」
絶句するボクの目に入ったものは、可愛い可愛いくまさん。
少しの沈黙の空間を経て、
「……。…………見た?」
顔を真っ赤に紅潮させて静かにこちらを睨みつけてくる栞に、ボクは嘘をつかずに正々堂々と答える。
「いや、でもさ。なんか子供の頃から変わってないようで安心したよ」
あ、はい。普通にひっぱたかれましたよ。
気を取り直して、再び絵に集中するもやはり上手く描けない。さっきから描いては消し、描いては消しを繰り返していた。
「今、どんな感じ?」
「それが、まだ全然描けてなくてさ……」
ボクは黒く汚れた白紙を破って、また新しい面に描き始めながら答える。
「それなら、栞が絵の描き方をしえてあげようか?」
「え? ほんとに?」
絵の上手い栞に教えて貰ったらこの壊滅的な絵もなんとかなるだろうと、歓喜の表情で顔をあげる。
すると、栞も満面の笑みで、
「ついでに点画の使い方も教えてあげるよ!」
「なんでだよ!? 今はTE〇GAなんて関係ないだろ!」
栞の何気なく、さらっと放った下ネタにツッコミをれるボク。
だが、当の栞はボクの指摘を真に受けず、頬に手を当てて小首をかしげる。
「そう? 初心者には難しかったかな?」
「初心者とか玄人とかそう言う問題じゃなくて、急にそんなのおかしいでしょ!?」
「え? 別にその描き方はおかしくないでしょ?」
「描き方? どう言うこと?」
「「???」」
この瞬間、二人の頭の中はクエスチョンマークで埋まっていた。




