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告白されるのって誰からでも嬉しいものですね(嬉)


 隣を通りすぎれば誰もが一度は振り返る。まさに美少女というにふさわしい。そんな少女の名は白河 瑞希。


 容姿端麗。文武両道。眉目秀麗。偉才秀才。エトセトラ。

 美点をあげればキリがないほど彼女は完璧だった。それはもう良い意味の四字熟語はすべて彼女のためにあると言っても過言ではないほどである。


 もちろんそんな人間国宝級の美しさを持つ彼女を世のイケメン達が放っておくはずがない。

 彼女の下駄箱の中はいつもラブレターだらけで、開けた瞬間に溢れ出てくる。


 とある日の朝。偶然見かけた彼女をボクは無意識のうちに視線を向けていた。

 彼女は下駄箱を開け、中からこぼれ落ちてくる手紙を落とさないようにカバンで受け止め、中に全部着地させていた。

 これはボクらの学校じゃ有名な話なのだが、彼女はあのたくさんのラブレターを全部熟読してから一人一人に返事をしているらしい。


 告白に対する返事はすべてNOなのだが、相手を傷つかせないように優しい言葉で返ってくるらしい。

 そんなことをするからか余計に文通相手が増え、今では学校のほとんどの男子と文通しているんだそうだ。噂では教員ともしているって話も聞いたことがある。




 まぁそれはそれはご苦労なことだなと、他人事のように済ましていたのはつい先月までのこと。

 なぜか今ではボクの下駄箱にもたくさんの手紙が乱雑に入っている。


 朝、四方八方からボクの体が溶けそうなくらいの熱い視線を感じながら下駄箱をそっと開ける。

 降ってくる手紙を白河さんのように受け止めれるはずもなく、あえなく地面に落下させてしまう。

 こんな状況、彼女いない歴=年齢のボクからしたら嬉しい限りなのだが、内容はラブレターなんてメルヘンチックなものではなく、荒れた字で書かれた果たし状の山なのだ。


 それを仕方なく拾っていると、後ろから誰かが声をかけてくる。


「よっ、やっぱりモテる男は違うねぇー」


 こいつは桐島 光一。ボクの数少ない理解者で、この状況を人一倍面白がっている。


「お前、これの内容わかってるくせに何言ってんだよ」


 ボクは山の中から一つ取り出し、中を開いて桐島に見せつけた。


『九重 晴人。てめぇ、俺らの学校のマドンナ瑞希様にちょっとでも触れてみろ、次の日には富士の樹海で永遠にお寝んねすることになるからなァ!』


 桐島はそれを見てまたゲラゲラと爆笑して、ボクは心底深いため息をつく。




~~~~~~~~~~




 一ヶ月前。時期は五月上旬。

 新入生のボクは、やっとこの学校やクラスに馴染めてきたところだ。

 友達と呼べるかどうかはわからないが、ある程度喋れる人が多くなってきた。


 そんなみんなと喋る話題といえば、白河 瑞希のことでもちきりであった。

 彼女はもはや、この学校に知らない人などいないと思わせるほどの人気ぶりである。


 ボクはそんな高嶺の花どころか、富士山の山頂に咲く一輪の薔薇のような雲の上の存在の人と関わることなどないのだろうと、そう確信していたのだ。




 その翌日。ボクのもとに一つの手紙が届いた。

 凄く綺麗な字で、『放課後に校舎裏へ来てください』とだけ書かれている。

 手紙には名前が書かれておらず、誰かのイタズラかとも思ったのだが、そんなことは気にせずにボクのテンションは急上昇していた。


 いつもは真剣に聞いている新任の河合先生(巨乳)の授業も、今日ばかり右耳から左耳へ抜けていく。 

 高ぶる興奮のせいで、昼休みになって昼食を食べていてもパンの味がわからないくらいに、ボクは動揺していたのである。


 そして刻一刻と時間は過ぎていき、待ちに待った放課後となった。

 ボクは緊張しながらも貰った手紙を手に握りしめ、おそるおそる校舎裏へ向かう。


 なぜだか校舎裏はやけに人が多かった。普段はひとりふたりがたまに通るくらいなのだが、今日は男が十人くらいたむろしていたのである。

 だが、そんなことは気にせず、ボクはラブレターを送ってくれた女の子を探していると……。


「九重 晴人君……だよね?」


 一人きりでなんだか居心地が悪いが、手紙の主を待っていると不意に背後から声をかけられる。


「は、はいっ、そうです」


 この人がボクに告白してくれるのかな? と期待に胸を膨らませながら笑顔で振り向き。

 そのままピシッと音が出そうなほど、僕の体は全身硬直状態になってしまう。


「あの、急に呼び出したりしてごめんね。私は二年の白河 瑞希っていうんだけど知ってるかな?」


 白河さんの質問に、ボクは福島県の郷土玩具赤べこのように首だけを縦にふる。


「私、九重君にお願いがあって今日ここに呼んだんだ」


 こ、これは、まさか。白河さんはボクなんか告白しようとしているのではなかろうか?

 白河さんはボクに深々と頭を下げながら言った。


「私を是非弟子にして下さいっ!」


「はい! ボクなんかでよかったら、もちろんお付き合いを……。って、ほへっ??」


 予想外のお願いに、ボクの口からは間抜けな声が漏れた。


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