水着と言えばポロリですよね(海)
たくさんの感想待ってます。
「…………」
目の前の景色に感嘆し、ボクは一切の言葉を失っていた。
「ふんっ。どや? なかなかええ眺めやろー?」
視界に入って来たのは、美しいマリッジブルー。あ、間違えた。美しいマリンブルーと、ひとっこひとりいない白い砂浜。
そして……。
「和乃ちゃん……。これ流石に変じゃないかな……?」
真夏の日光に照らされた、瑞希さんのなんとも美しい肢体。
だが、瑞希さんはその肢体を隠すように、一枚のタオルを身につけている。
「全然変ちゃうって。そんなことよりも、いつまでもタオルなんか巻いてんと、せっかくの海やねんから肌は露出せなあかん……でっ」
半ば強引に、神咲さんが瑞希さんの羽織っていたタオルを剥ぎ取る。
「ひゃぁっ!」
露わとなった瑞希さんの肢体はとても美しく、ついつい無意識に見とれてしまう。
瑞希さんが身に纏っていた水着は、数日前に見たものとはと違った少し面積が少ないビキニだった。
リボンで結んだ団子状の髪、お人形さんのように白い肌、すらっと華奢な手足、さらけ出された鎖骨、羞恥心から薄桃色に染まったほっぺた、普段とはまた違った瑞希さんのあられもない姿……。
そんなものを見てしまったボクはテンションが急上昇し、手を合わせこのような機会を作ってくださった神に祈りを捧げた。
アーメン。
「もうっ! ハル兄、鼻の下伸ばしすぎ!」
彩奈に後頭部を叩かれ、やっとまともな意識を取り戻す。
っていうかボク、無宗教だった。
「ハ、ハル君……どう、かな? 和乃ちゃんと一緒に選んだ水着なんだけど……」
「はっ、はい。それはもうすっっっごく、瑞希さんに似合ってます」
「そう、かな? あ、ありがと」
「むうぅぅ」
彩奈がふくれっ面で睨んでくるが、ボクの蕩けた顔はなかなか戻らなかった。
その後、シートやパラソルなどの組み立てを終えると、神咲さんがカバンの中をまさぐりながら言う。
「よしっ、まずは遊ぶ前に日焼け止め塗ろかー」
「うん、そうだね。じゃあ、私が和乃ちゃんの背中塗ってあげるよ」
神咲さんは水着の紐を解き、シートの上に寝転がる。
こういう時、視線をどこに向けたらいいのかよくわからない。
「ハル兄、ハル兄っ。あたしも背中に日焼け止め、塗って欲しいなっ!」
とりあえず海の方に向けていた視線の先に、彩奈が飛び跳ねて入って来る。
勢いよく飛び跳ねる彩奈の胸は、反動で上下にそれはもうバインバインに揺れている。
「そ、そんなの自分で出来るだろう?」
無意識のうちに視線が胸の方に誘われている気付き、変な妄想を振り払うため首を大きく横に振り、薄れていた自我を取り戻しながら、また視線を移動させる。
「だって、塗り残しがあって変に日焼けするの嫌なんだもん……」
「……わ、わかったよ」
確かに言い分は理解できるのだが、それをボクに託すのはちょっとやめて欲しい。
だが、彩奈に潤んだ目で上目遣いをされ、拒否権を海の底へ投げ捨てる。
「……ひゃんっ」
「ちょっと、変な声出すなよ」
「だってハル兄が急にくるから……」
「……悪かったよ。じゃあいくぞ」
目の前には何も身につけていないあらわとなった背中、その少し上には普段は髪の毛に隠れて見えないであろううなじ、そんなものを見てしまうとボクの気持ちも高ぶるものも自然の原理な訳でして……。
あぁ、いかんいかん。たかが妹の体で何をこんなに動揺してるんだボクは。
「ほ、ほら。終わったぞ」
「うん、ありがとハル兄」
ふう、よくやったボクの自制心。
と、自分で自分を褒め称えていると、瑞希さんたちも塗り終えたのか日陰から出てくる。
「ハル君。まずは定番のビーチバレーでもしよっか」
「はい、そうですね」
「んま、でも普通にしてても面白くないし、落とした人は罰ゲームにしよかー」
「それってどんなことをするの?」
「んー、せやな……。じゃあ落とした人は他の三人からの命令を一つだけ聞くってことで。ほいっ、いくでっ」
罰ゲームを決めた瞬間、有無をうわせずボールを空に向かって叩く神咲さん。
「うわぁっ。は、はい、ハル君っ」
「よしっ、行くぞ、彩奈」
瑞希さんからパスされたボールを軽くあしらい、彩奈へとパスする。
「とぉりゃあっ!」
軽くパスしたボールを、彩奈はボクにむかって思いっきりアタックして打ち返して来た。
そんなにもボクに罰ゲームをくらわせたかったのかな……?
「あぁっ、ボールが……」
だが、ビーチボールはボクの頭上のはるか上を通り過ぎ、後ろの海へ飛んで行ってしまう。
「あ……。ご、ごめんなさい」
「はぁ。……ったく、ボクが取ってくるよ」
海の強い波と浜風によって、ビーチボールはギリギリ目視できるくらいの距離になっていた。
取ってくるとかっこつけて言ったにも関わらず途中で諦めるのもカッコ悪いと思い、ボクは仕方なく目標めがけて泳いでいく。
「……いつっ」
すると、突然右足首に電流が走ったかのような強い痛みを感じた。
「うぐっ……。なんだ、これ?」
痛みの原因を解明しようと足の方を見てみると、右足首のあたりに白い靄のようなものが絡み付いているのが見える。
「まさか、これって……」
クラゲに刺されたと理解した時には、もうすでに意識が薄れかけており、ボクの体はどんどんと海の中に沈んでいってしまった。