ぼっち。
「私、会社で”ぼっち”なんだ」
昨夜、僕がベッドでくつろいでいると、突然、お姉ちゃんが言った。
「昼ごはんだって一人で食べてるんだよ。かなりさみしでしょ。」
お姉ちゃんはまるで、独言のようにつぶやいた。
たしかに、お姉ちゃんは小さい頃から人見知りで、おとなしかった。
だから、学校が終わると友達とではなく、家に帰ってきて僕と遊ぶことのほうが多かった。
でも、僕はそんなお姉ちゃんが大好きだった。
「幸太郎はいいわよね。いつも幸せそうで。。」
僕に向かい寂しそうに言った昨夜のお姉ちゃんの横顔を思い出して僕は思った。
そんなこと言ったら、僕だって”ぼっち”だ。
今だってそう。
朝、家族が出かけたあとは、ずっとひとりぼっち。
引きこもりだ、ニートだ、って言われたら、正直返す言葉が無い。
でも、とにかく、昼間はずっと家に居て、家から出ることはまずない。
そんな生活を毎日送っている。
だから、日中は正直、ヒマだ。
一日中家に居ると、時々チャイムが鳴ったりするけど、基本的に無視。。
でも一応、誰が来たのかは気になるからチャイムが鳴ると僕はリビングにあるモニターのところまで走って行く。
そして、画像に映る人は見てみるけど、ただ見るだけ。
どなたですか?なんて言ったことは一度もない。
だいたい、そんな画像なんか見なくても、誰が来たかなんて僕には解る。
これは一種の才能と言って良いと思う。
特にお姉ちゃんが帰ってきたときは、直ぐに解る。
あれ?
どうやら、そのお姉ちゃんが帰ってきみたいだ。。
今日は、”ぼっち”なお姉ちゃんを元気づけてやるか。
っていうか、その前に、おどかしてやろう!
僕は玄関へ急いだ。
そして、玄関マットの上まで来ると小さく身を屈め、息をひそめた。
ちょうどその時、ドアが開いた。ガチャ。
よし、今だ。
ワン!ワン!