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新たな仲間


見知らぬ茶色い髪色の若者が、自分が落とした竹刀を右手に、男の足を止めていた。

「誰だ?お前?」

「……」

男の言葉を無視し、力の抜いた足の脛から竹刀を離した翊鎖は、そのまま少年を庇うように男の前に立った。

「おい、答えろ」

「子供に暴力を振るう奴に答えるまでもねぇ」

睨み合う二人をそのままに、永久は少年を助け起こし端の方へ移動して寄りかからせると、翊鎖の竹刀を奪い取って言った。

「男は力だ。勝負しよう」

笑っていない目を細めて見せた永久は、男から距離を空けて立った。

「いい度胸じゃねぇか。俺は小畑十兵衛オバタジュウベエだ、お前は?」

二人の間には、納得のいかない顔をした翊鎖を含めた門下生達が傍に避けていた。

十兵衛の名乗りに、永久は俯いたまま何か考えている様子だった。

「……名前は名乗れない」

「あ゛ぁ?お前、たとえ竹刀と言えども真剣勝負には変わりねぇだろ?それなのに、名前も素顔も晒さねぇとはどういうこったよ」

「……では、素顔を晒そう」

そう言って永久は頭の頭巾を緩ませて外し、顔の方の緩んだ布を下に引いて頭巾の布は首元へと収まった。

変わらない白い肌、薄桃色の唇、大きく切れ長の目。

可憐で艶やかさも備わったそのまま顔に、稽古場の男達はため息をつかない者は居なかった。

「ほぉ…、美しい。女でないのが勿体無いが男でも充分に楽しめそうだな…」

嫌らしく笑む十兵衛は舐め回すように永久を見た後に言葉を続けた。

「賭けをしないか?」

「……そちらの要求は?」

「…ふむ、……お前の身体を貰おう」

「ふざけんな!!テメェッ!!!!」

十兵衛の要求に傍で聞いていた翊鎖が声を荒げた。

凄む翊鎖を無視して、二人は話を続けた。

「いいだろう」

「おいっ!!」

「では、こちらは……小畑十兵衛の解雇を要求しよう」

「ハハッ!この俺に勝てたらな」

十兵衛の言葉に笑みで返した永久は、右手の竹刀を血を払うような仕草をさせた。

「おい、お前合図しろ」

傍に避けていた一人の青年を呼ぶと、彼を二人の真ん中に立たせた。

「では、…始め!!」

青年の声に真っ先に動いたのは十兵衛だった。

永久は十兵衛の竹刀を防いで、そのまま二人は力をかち合わせた。

至近距離で睨み合っていたが、十兵衛の方が永久の耳元へと顔を寄せ囁いた。

「あの目付きの悪い若造も、お前の後で楽しませて貰うよ。涙流しながら可愛く喘ぐだろうよ」

ガンッッッ!!!!!

稽古場の床に重く鈍い音が痺れた。

「…蝶……?」

門下生の誰かが漏らしたこの一言に、そこにいた全ての人間が共感した。

一瞬で、十兵衛の背中は床に付き、永久は男を跨いでその喉笛に竹刀を突き立てていた。

「勝負あったな」

布越しでない永久の声は、あまりに澄んでいて透明だった。

「たとえ竹刀でも、貴様の喉笛に食い込ませることは出来るだろう」

「ひぃぃぃぃ………」

メリメリと食い込む竹刀を恐れた十兵衛は、情けない声を上げて白眼を剥いて気を失った。

「すまない、君達の話も聞かずに要求してしまった」

立ち上がった永久は門下生達に謝ると、首元にあった頭巾を引き上げて顔を隠すと、隣に来た翊鎖に稽古場の隅から、心配そうに見ていた少年を指差した。

少年は肩を押さえて立っていたが、翊鎖が笑いかけると、無邪気な笑顔で返してきた。

「お前なぁ、俺の見せ場を取るなよなぁ」

「…悪かった」

「凄かったです!!まるで羽が生えているようでした!!」

「いや、あれは蝶と例えるべきだ!!」

群がる門下生に戸惑っていた二人だったが、稽古場の外の廊下を走る足音に気が付いて、門下生達を静めた。

「……何か来る」

「…あの足音は……?」

永久の声と同時に開いた戸から現れたのは、長く真っ白い白髪を後ろに流し、青白い肌をした青年と、鶴霧に選んで買った着物を着た翊羽だった。

「なっ!!!お前達!!!」

長髪の男の後ろから声を上げた翊羽は、開かれた戸の反対側も開いて稽古場に入ると、驚きで固まった二人の首根っこを掴んだ。

「店の手伝いはどうした!!」

「すみません…」

「……すみません」

「ぁあ、先程話していた二人とはこの方達のことですか」

長髪の男は、優しそうな表情で二人の顔をまじまじと見た。

「あ、そうです。右が翊鎖で左が永久です」

「おい!兄貴!」

「これから色々とお世話になる白河ハクガワ 冬志トウシ殿だ、挨拶しろ」

掴まれていた首元を離された二人は、倒れ込むように頭を下げた。

「「よろしくお願いします」」

「はい、こちらこそ」

満面の笑みを浮かべた冬志は、倒れている十兵衛を指差して笑みを絶やすことなく続けた。

「あれは、どちらが?」

「「……」」

「申し訳ございません、白河殿。後できつく叱っておきます」

翊羽が言うと冬志は「よろしくお願い しますね」と言い残して、目を細めたまま稽古場を出て行った。



申し訳ございません。

色々と誤字を直したりしておりますので、

違ってる部分が出てきてしまいました。

白河は白髪でございます。



どうぞ、未熟ではありますが、また続きを読み進めて頂ければと思います。


ー舟猫

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