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血塗られた土

闇に飲まれたような暗い森の中で、まるで自ら発光しているかのように輝いて見える鶴霧を真ん中に、大勢の男達が囲んでいる。

美しい女の前に立つ柄の悪い男だけが一人、口を動かしている。

「なぁ、まだ?」

「静かにしてろよ翊鎖」

「…だって」

拗ねたように顔を背ける翊鎖を見た翊羽は、深く重い溜息をついた。

「兄貴、木の上にもう一人いないか?」

「え?」

「ほら、あそこだよ」

翊鎖が指を指す木に目を向けた翊羽は、枝の上に身を隠す一人の人間を見つけた。

「敵か?」

「翊羽!」

永久の声に前を見た翊羽は、美しい顔をした二人が背中合わせに刃を受け止める姿に目を疑った。

たった今後ろから自分の名前を呼んでいた永久が、鶴霧の後ろから襲おうとした男の刀を受けているのだ。

「あ゛!!あいつ!抜け駆けしやがったな」

翊羽の傍を掛けて、ついに始まった殺り合いに混ざる翊鎖。

翊羽も掛かって来る奴らに向かって刀を振るった。

肉が裂け、血が吹き出し、悲鳴を上げながら倒れていく男達の間を、舞う四人の死にたがり。

「永久!!」

「ん?」

「強い奴いねえじゃねえか!」

「そのようだな」

バラバラと血を吐く男達が倒れ、四人が刃を振るうのを止めた時には森の一部はドス黒く染まり、独特の匂いを放っていた。

「終わった…」

翊羽は一息ついて刀の血を払うと、ずっと見ていた枝の上にいる人間を見やって言った。

「降りて来てください」

今まで人を殺していたとは思えないほど優しく穏やかな物言いで、翊羽はその木の下まで足を運ぶと、血の海の上に立つ赤く染まった鶴霧が声を上げた。

「雷蔵はん、この方達が松殿が仰っていたご兄弟です」

「あぁ、見ていて分かったよ。太刀筋が松さんそっくりだ」

素早く地に降りてきた雷蔵は、翊羽に笑いかけながら言った。

短髪で、ひょんひょんと跳ねる真っ黒な髪の毛に、人懐っこい顔立ち、ひょろ長な体格は蛇を思わせた。

「やぁ、永久!相変わらず綺麗だな〜」

翊羽の脇を通り抜け、跳ねながら素顔の永久に近づいた雷蔵は、永久の頬を両手に挟んでグリグリと可愛がった。

「雷蔵、やめろ」

「まったく〜、連れないんだから〜」

雷蔵の軽いノリを冷たく突き放し、素早く鶴霧の後ろに隠れた永久は、懐に仕舞っていた頭巾を被ると、ずっと黙って眺めていた翊鎖に気が付いた。

首を傾げながら近づく翊鎖は、頭巾に隠れた永久の顔を見ながら口を開いた。

「お前何で頭巾被ってるんだ?」

「……顔を晒したくないだけだ」

「じゃあ、何で脱いでたんだ?」

まるで頭巾の布など見えないかのように、凝視してくる翊鎖に戸惑うながら、永久は声色を変えずに言った。

「死に顔は遺したい者だろ?それに、自分を殺った相手の顔は見ときたいものだ」

「あぁ…」と納得した翊鎖の肩に、雷蔵が手を置いて怖いくらいの笑みを浮かべると、青年は男を睨み付けながら、先を行く翊羽と鶴霧を追い掛けた。

「あれ、嫌われちゃった?」

「悪いのはお前だろ。何考えてるんだ」

「何も考えちゃあいないよ。ただ、永久はあいつに言いたい放題言わせすぎだ」

「何の話だ?」

「へへっ、永久が松さんを誰よりも慕っていることを、あの坊主は分かっちゃいない」

「分かって貰わなくて良い」

ニィッと笑う雷蔵から視線を外し、ドス黒い土を見つめながら永久は頭巾を深く被り直した。



雷蔵(18)ー男

黒髪の短髪で、人懐っこい性格。

仕事の際は布で鼻から下を覆い隠して、情報集めを得意とする。

お調子者で永久が刀を振るう姿を見るのが好き。


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