表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

黒水隊

僕達は死を待つ。

自ら戦の中へ飛び込み、血を浴びて、刀を振りかざし、死体の中で乱舞する。

悲鳴が歌に、肉を割く音が曲に聴こえる狂った僕達は、いつか合間見える己の宿敵に切っ先を向け、力尽きるまでその心臓の動きを止めにかかる日を待つ。

無様で美しく、醜い屍の姿を望む者達。

僕らは、黒水隊と命名された。


翊羽ヨクウ、お前の左側はどこ行った?」

「朝からいません。どうせ厠でしょう」

「またかよ、後でお灸を据えておけ」

「はい」

低い唸り声が聞こえる。

向かい合った二つの軍隊の真ん中に立つ、何の武装もしていない人間が、青い旗を靡かせている方へ体を向けている。

鈍く重い音が轟く。

両軍からの鬨の声が辺り一帯に響き渡り、青い旗の軍隊だけが、一斉に走り出した。

「あの二人、どんな神経してやがんだ?」

攻めかかる青旗軍の後ろに隊列していた、槍を構えた兵士の一人が、隣を走る男に呟いた。

「知らんよ。とにかく、敵将を倒しさえすれば…」

「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

男達の悲鳴。

血が飛び出す音。

前にいる兵士達の背中で、前線で起こる何かを確認することが出来ない。

「もう向こうと衝突したのか…?」

「早過ぎないか?」

「あの妙な二人はどうなったんだ?」

進む速度が遅くなっていき、ついには男達の隊は足を止めてしまった。

「なんなんだ!進まなければ!!」

向こうに広がる青空、その手前で上がる血飛沫は、決して二つの軍隊が衝突して上がっているものではない。

太陽の光で煌めく二本の刃。

「あ、ああ…あの二人か…?」

膝が笑う。

「なんなんだ、あの二人はっ…!!」

後退りする周りと合わせて、男も一歩ずつ後ろへ下がる。

一刻も早く、この場から逃げたいとはやる足で後ろの兵士にぶつかった。

でもそれは、武装しているとは思えないほど人間の熱があった。

思わず振り返ると、そこには着物一枚だけの若い青年が、唇の片端を上げて立っていた。

「やるよな〜、あのお二人さん」

「な…、仲間か?」

幼さが滲む笑みを浮かべた青年は、一度血飛沫の上がる方へ顔を向けると、男に視線を戻して、薄く整った紅い唇を動かした。

「い〜や♪俺はあっちの味方!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ