かんびょう
本当は栄養ある料理でも作ってあげたいのだが、なにせ料理のスキルは全くない。買ってきたものは、温めるだけでよいインスタントなお粥、スポーツドリンクとアイスクリーム。あと新しいタマゴ。
「もういいから……戻ってちょうだい。というか、料理できなさそうなのにタマゴは買ってくるのね」
「少しでも栄養あるものと……」
「もしかして私が気を遣っているとだなんて思ってない? それも思い込みだから、目障りだから早く帰って」
僕は何も言い返せず、そっと食料がはいった袋を床に置き、アイスクリームは冷凍庫へ入れておいた。踵を返し何もいわず部屋から立ち去ろうとしたが……やはり放ってはおけない。袋からインスタントのお粥を取り出し。袋のまま水をはった鍋に放り込む。一緒にタマゴも、ゆで卵くらいは作れる。
「私がなんて言ったか聞こえなかったのかしら?」
「よく聞こえたよ、思い込みで結構。食事の準備するからちょっと待ってて」
「辛辣なこと言ったつもりだけど、意外に鋼の心を持ってるのね。あぁ違う、無神経なだけね」
「その通りでございます。僕は思い込みが激しくとても鈍感なのです」
煮立つ鍋からインスタントお粥のはいった袋を取り出し、中身を皿に取り出す。
「はいこれ、何も食べないよりかはいいと思うから」
お粥の皿とゆで卵をふたつ天王寺さんに手渡した。
「一応お礼は言っておくわ。でもそれ以上は必要ないから」
「分かってる。これで僕は戻るね」