ふたりきり
「反省してるの?」
「はい……」
やや高圧的な声で僕に怒りをぶつける彼女。申し訳なくて頭を上げることができない、うなだれたまま自分がした行為に反省。
「なに? 君は思い込みが激しい少年なの?」
「言い返す言葉もございません」
チラリと視線だけを送ってみるとゆでダコのように顔を紅潮させている。でもその表情は怒りに満ちているというかは、羞恥に赤らめている感じだった。
「大家さんが今回は特別に無料でドアを修理してくるって言ってたからいいけど、弁償することになってたら君のお小遣いは永遠に0だったよ」
「一体どんな高額な扉なんだ……このボロ板は」
「よかったね! この家具ひとつない殺風景な部屋がさらに殺風景になるところだったよ! てか布団だけしかないってもしかして……」
ゆでタコの顔からいまにも湯気が湧き出そうになってきた。
「ヤリ部屋……?」
「な、なんなんですか! ヤリ部屋って! 僕の部屋ですよ! マイホーム!!」
彼女は手で風をあおぎながら僕のことを目を細めて眺め、どこか体は少し反対側に反っていた。
「軽蔑してますか!?」
「しかたないなあ……今回だけだよ……」
目をトロンとさせ、白いブラウスのボタンに手を掛け外し始めた。胸元まで紅潮していてうっすらと玉汗が浮かんでいた。
「もしかして酔っ払ってますか!?」
「なんてね、お風呂で酔っ払うわけないでしょ。馬鹿ですか? それに私は未成年だもの飲むわけないでしょ。まあいいや、ドアの修理が終わるまでしばらくここにいさせてもらうからよろしくね!」
彼女のセリフへの驚きより、六畳間でふたりきりの生活というほうに思考が傾いてしまった。これじゃあ僕だけの欲情間になってしまう、これはまずいと思った。
「いきなり見知らぬ男の家に転がり込むのは、やっぱり危ないと思うな。それにご両親が心配すると思うよ」
「何を君は勘違いしてるの?」
「え……?」
「ドアが直るまで部屋を交換するの。なんで君と生活しなきゃいけないの。やっぱり思い込み激しい少年なんだね。あーやだやだ。」
手早くボストンバッグに衣類を詰め込まれると僕と一緒に廊下へ投げ出された。吹きさらしの中、惨めさがいっぱいになった。