第一話「統括者の動向①」
統括者は自室で独り、思案していた。
孤児院「浅葱園」の件だ。今回、四人の『卒業』が決まったらしい。そして、その『卒業』までを指揮するのがこの統括者の役目だ。
――ま、本当は五人なんだけど。
統括者は心の中で呟く。
どんな流れで全員を『卒業』させるか。それが統括者を悩ませていることであった。
まずは大前提を統括者は確認する。自分自身が動くのは一番最後か、緊急時のみ。
自分が早い段階で動けば、いざという時に冷静さを欠く可能性がある。さらに、無駄な感情移入をしてしまう恐れがある。その危険を統括者は自覚していた。
――しかし、現場の様子を知らないというわけにはいかないな。
現場を知らないと、誤った命令を下す可能性がある。
――現場には入り、卒業生たちとは深く関わらずに彼らの情報を得る、か。
難しいが、出来ないこともない。統括者はそう判断した。
――実行する人間は......そうだ、あの女がいい。
あの女には少し自由にやってもらおう。どちらにしろ統括するのは自分なのだから。
統括者は立ち上がった。ある程度のシナリオはできていた。あとは、現場の状況で臨機応変に対応する。
――卒業生たちを何事もなく『卒業』させる。
統括者は自室の扉を、ひらいた。
――さあ、仕事だ。