寡黙?無口?無愛想?……ツンデレ?
新キャラ登場!
で、冒頭では心の叫びと回想を重視したから流されかけたんだが思い出してほしい。俺は確かに女神から武器や防具をもらったはずなんだが──
おかしい。
もらった武器防具がない。耳にあるピアス以外の女神にもらった武器防具がひとつも無いのだ。かろうじて金の袋があったのが救いだが……
「おい女神。なんでもらったもんがない!?」
『え?あ!あー……テへ☆』
テへ☆じゃねえだろこのアホンダラ女神ぃ!
「オイコラ女神、あれ確かそこまで凄いもんじゃ無かったんだよな!?やっぱりそれでも渡すの惜しくなっちゃってとか言ったら泣かすぞ!?」
『え、ええ、えーとね~そのー、甘ちゃん送ったときに落としちゃったって言うか……』
「アホか!冒頭では浸ってたから流したがもう流さねえぞ!?」
『ひーん!!で、でも!でもでもでも、多分そんなに遠くには落ちてないはずだから!探しましょう!?私も通信してる間は甘ちゃんの周りが見えるから手伝えるわ!!ねっ!?』
「当たり前だ!チート無し、その上紙装備で生き長らえるような主人公補正俺は持ってないんだよ!!このままいたらモンスターとやらのエサだ!!」
『ここら辺のモンスターは草原なら弱いけど森はヤバそう。どっちにしろ飲み物無しでその装備じゃ……エサね……甘ちゃんいそいでぇ!!』
草原は草の高さも低く、見渡す限りにはなさそうだった。
と、なると向こうの森が怪しいんだよな……できれば入りたくねぇー!だってさっき思い切り危険って言ってたもん!
でも行かなきゃどっちにしろどうにもならな
「…………シッ!」
「ガッ!?」
俺はいきなり後ろから何かに吹き飛ばされ地面に突っ伏した。
『甘ちゃん後ろ!!』
慌てて振り向くと両手にナイフを構えた男が立っていた。俺より少し背が低いが目は獣のような鋭い目付きだった。
間違いない、こいつが俺を吹き飛ばしたんだ。
ていうか雰囲気からして戦ったりするのは無理だ!危険だが森まで逃げればモンスターがいるから追ってこれないんじゃ……
だがどうやって森まで逃げれば……
「……人間……か?」
男は俺に聞いてきた。もしかしたらモンスターと間違えたのか?だとしたら……
「に、人間です!」
「…………何をしている?」
え、えっとこれどうすりゃいいんだ!?
『甘ちゃん!と、とりあえず奪われたナイフとローブを探してるって言いましょ!?あ、私との会話は頭の中で考えれば応答できるから怪しまれないようにね?』
ナイス女神!
「も、モンスターに奪われたナイフとかを探しに来たんです!!」
「……これか?」
「あ、そ、それは!」
男が腰の袋から出したそれは間違いなく女神から貰ったナイフとローブ!
無言で男は俺に渡してくれた。いい人なのか?
「…………危険だ。早く帰れ」
「いや、帰る場所無いんです」
ってしまった!迂闊に言ったら怪しまれる!
「!!…………襲われた村の生き残りか?」
あれ?
もしかしたらこれ俺の設定ごまかせるんじゃね?どうよ女神?
『近くにモンスターに襲われて滅んだ村があるのかもね、でも服が不自然だからそこをうまくぼかせばいけるかもしれないわね!』
よし。この人には悪いがその設定に少し色をつけて……
「……わからないんです」
「…………何故だ?」
いい感じにかかったか!?さらにうろたえておけば通せるんじゃないか!?
「お、俺、村で倒れてて……でも何も覚えてなくて……服も血まみれでボロボロで……着るものがないか村を探したら……この変な服と武器とかがしまわれてて……」
どうだ!この俺の必殺技!嘘八百!
「…………記憶を無くしたか……よく生きていたな」
よっしゃ!
同情されてるのか心配されてるのかわからないがこれなら上手くいけば近くの村まで連れていってくれるかもし
「…………今から一人で生きていけるよう鍛えてやる」
……は?
「…………俺はずっと一緒にはいられん」
え、つまりいられるうちにモンスターとかに襲われても大丈夫にするってことか?いい人だな。いい人……だけど!
ちょい待てぇ!!俺は戦争とか止めなきゃいけないってのに!!時間がないわ!女神!どうしよう!?やんわり断るか!?
『……でも甘ちゃん、あなたが強くなればこれから先かなり有利よ?その人かなり強そうだし、戦争だっていつ起きるかわからないといっても私の魔力の様子だと大規模なのはまだ先よ?なにも全部の小競り合いまで止める必要は無いのよ。かなり大規模なのに繋がりそうなやつを上手く押さえていって、重要な大規模戦争が起きないように鎮圧してけば魔力も落ち着くし』
う、たしかにそうかもしれんが……
『もともと仲が悪い国を仲良くさせる必要はないの。いい?私は甘ちゃんに元よりずっといい世界にしろと言ってるんじゃないのよ?あくまで悪化していくグラジラスを元の悪化する前に戻すだけ。私も嬉しい、甘ちゃんも嬉しい。でも時間は沢山はないから死ぬ気でその人から教わりなさい!』
やるしかないのかよ!?
でも俺はたしかに強くないし、俺に適応した飲み物がわからないうちはこのままじゃすぐ死ぬ……反論の材料はないわけだ。
「お、お願い……します」
これしか道はない。この人が誰かは解らないが、強くしてくれるなら文句はない!
「…………」
おい、見られてる。めっちゃ見られてる!!
「…………イズールドだ」
「……は?」
それだけ言うと自分のバッグを探りだした。
今のはこの人の名前だったのだろうか?無口で表情もわかりづらい……
「…………飲め」
そう言ってイズールドさんが出した物は、なんか黒い液体が入った小瓶だった。
「あの、これは?」
「…………俺には時間がない……五ヶ月以内にお前に全て叩き込む」
つまり五ヶ月以内に俺を鍛え上げるために使う薬……ドーピングじゃねこれは!?いや、異世界だから問題ないのか?
「…………俺も、使っていた」
受け取ったが、怪しいんだよな。なんか色的に。一応女神に確認とるか……
『あ、それは飲むと一時的に……ほら、子供って教えると何でもすぐ吸収していくじゃない?あんな状態になれるのよ。それに身体能力上昇の補助にもなるわ!』
絶対副作用とかあるだろそれ。ヤバい薬だろそれ。
『人によってバラバラよ☆副作用なんて気にしてたらやってらんなくなるわよ!?』
そこは気にしろ女神!……通信切りやがった……
仕方なくイズールドさんに見られながらその液体を俺は飲んだんだが、あれだ、これからの人生で二度と味わいたくないと心に誓うほど苦かったとだけ言っておこう。
青汁EXってところかな。
うええ気持ちわりい……