飲まなきゃやってられないを地で行ってるなココは……
ついに冒頭の場面に繋がりました!!
えーと、女神が言うことをまとめるとだな、こちらの飲み物の世界、グラジラスと言うらしい──が、これから悪くなっていくから、当事者である俺と女神で時間はかかってもなんとかいい方向に持っていこうということで、手段とかどうでもいいからとにかく元の状態に戻そうってことらしい。
新しい飲み物飲めば魔力も落ち着くのではないかと思ったんだが、別の飲み物じゃどうにもならないくらい女神の魔力はぐちゃぐちゃで使い物にならないらしい。
──女神を撃沈させるって俺は一体どんな暗黒物質を作り出していたんだろう……
女神は俺の世界のことも知ってはいたが、知ったのはグラジラスを作った後。別に女神も美味しいもの以外には俺の世界に干渉するつもりはなく、重視していなかった。女神以外には世界間の干渉はできないし、このグラジラスは地球とは異なる世界。干渉したところで何の利益もない。
「その偶然であんなの飲むとは思わなかったけどね」
苦笑しながらも女神は俺に自分が作ったグラジラスのことをきっちり教えるつもりらしい。まあ世界を変えるんだ、一ヶ月や二月で終わるとは思えない。しっかり教えてもらわないと逆に困る。
「よろしくお願いします女神先生!!」
「よーし!甘ちゃん!女神先生にドーンと任せなさい!」
自己紹介してから女神は俺を甘ちゃんと呼ぶ。あまちゃんじゃないぞかんちゃんだからな。
余談だが女神は別に名前とか無いらしい。長年の間グラジラスではいろんな呼ばれ方をされていたが、どれもいまいちだったとのこと。ちなみに俺は女神で通すつもりだ。
話によれば街並みなんかは中世ヨーロッパのようだったが、魔法があったりいろんな種族がいたり、その他日常生活を送るために必要な最低限の知識(貨幣は銅貨→銀貨→金貨→白金貨とランクがあがるなど)など、興味が尽きなかった。
特に女神は街と魔法に関しては念入りに教えると言っていた。
「なんでその二つなんだ?他にもあるだろうに」
「甘ちゃんに偶然取り込まれた私の女神としての魔力に関係しているからなのよ。とは言ってもぐちゃぐちゃだからむちゃくちゃ強くなるなんてことは残念ながら無いわ」
この世界での魔法と言うのは地球で言うヒールやファイヤーボールみたいなモロ魔法使いが使うようなものだけを指すのではなく、身体能力を一時的に強化したり剣に炎を纏わせたり……つまり魔力を使う行為を総じて魔法と言うらしい。 で、その魔力なんだが……
「飲むの?」
「そう。私みたく飲み物を飲むことで魔力を得るの」
どうやら先天的に持っているわけではなく、地上にある魔力を飲み物を介して体内に取り込むらしい。
街ごとに決まった飲み物のクリスタルなるものがあり、それに神に対する誓いやなんやら……まあとりあえずどこかのクリスタルで契約という名の誓いを立てて初めて魔力を取り込めるようになるそうだ。いちごミルクのクリスタルとかないかなー。
ちなみにクリスタルと契約できるのは一生に一回。それ以上をしようとすれば天罰という名の女神のo☆shi☆o☆kiがある。女神コエー。
ただし制限なく取り込めるわけではなく、魔力と飲み物同時に飲む分、腹ガボガボになりやすいらしい。それに腹ガボガボじゃ戦えないよな……
「魔力を飲み物から効率良く取り込むには、最も効率良く取り込める街ごとの飲み物をできるだけ早く飲むこと。イッキ飲みが苦手な人は量を飲んでカバーするわ」
飲み物は基本は魔力を取り込んだ直後、魔力が逃げないように魔法をかけた樽やビンに保管しておくものだという。飲むときに蓋を開ければ時間と共に魔力は逃げてしまうのだ。
街ごとにある効率良く取り込める飲み物を他の契約をした人がが飲んでも契約してあれば一応少しは魔力を取り込めるらしいが契約した飲み物に比べて魔力は手に入りにくいらしい。
だから決まった飲み物を大量に飲むことが苦手な人は逃げないうちに素早くたくさん魔力を取り込み、イッキ飲みが苦手な人は多少逃げても量を飲んでカバーするということだ。
「で、ここからが重要なのよ。私の魔力が入った甘ちゃんは本来ならどんな飲み物飲んでも100%効率良く取り込めるようになるはずだったんだけど……」
100%は街ごとの飲み物の魔力吸収率。それを他の契約者が飲むと50%くらいになるらしい。他の街の者が飲むときはどんなに早く量を飲んでも取り込める魔力は決まった飲み物を飲んでる者の半分になるのだという。
「ぐちゃぐちゃだからちょっとおかしくなっちゃってて……」
「具体的には?」
「えっとね……私も知らない飲み物の魔力吸収率が200%に……」
「はあ!?増えてんじゃんか!?」
「うん。だけどね……私も知らないってことはグラジラスには少なくとも今は無いのよ?それに他の飲み物は50%だし……なによりこれ、私との契約扱いみたいで他のクリスタルと契約出来ないわ」
「あ……」
つまり俺が魔力を効率良く手に入れるためにはその飲み物を作る必要があるわけだ……がぶ飲みは得意だがグラジラスの戦士とか魔法使いなんかは戦うために飲んでいるのだからもっと早いだろう……魔力の説明を先にしたのは不利な点をはっきりさせるためか。
この能力が俺と合わさることでに後々女神に感謝することになるのだが、今はまだ知らない……
「その飲み物作らない限り俺は雑魚ってことかよ……」
「そ、そんなに落ち込まないで!そ、そうだ!確か私が前に作ったマジックアイテム残ってるハズだから元気出して!?」
「マジックアイテム?」
「魔法がかかった装飾品のことよ。同じく武器や防具は魔法武器・防具と呼ばれてるわ」
女神はポケットからピアスを取り出した。
「ジャジャーン!!名付けて『女神様のお助けピアス』!これをつけておけばどこにいても私と話ができるのよ!?あと翻訳と読み書きできるような機能ついているから!どう?凄いでしょ!?」
「ネーミングはおいといて確かにありがたい機能だな。ていうか女神は地上に行けないんだから話すためにこれは絶対必要だろ……」
女神は立場上自分の作ったグラジラスの地上には来れない。あくまで行くのは俺だ。女神はここから俺の相談役。そして多少でも制御しておかないといけないそうだ。ていうか自分で行けたら俺呼ぶ必要ないしね。
「忘れててゴメンね。んじゃ早速着けましょ?」
「え?穴開いてないよ?」
「なにいってんのよ!今から開けるに決まってるじゃない!気合い一発開けるわよ!?さあいくわよ~」
「えっ!あっ、ちょっ、心の準備が、やめ……アッ──!!」
耳に穴を開けられた俺はそのままピアスをつけられた。
体に違和感はなく、なんだか気分がいい。
「それじゃ甘ちゃん、何か困ったりしたらとりあえず頭の中で呼んでくれたら応答できるときはするからね。あと何か武器とか防具とかお金もあった方が良いわよね?」
「武器はナイフでもありゃいいよ。防具とお金は任せる」
「ん、それじゃこれがいいかな~」
そう言って女神が持ってきたのは二本の綺麗なプラチナのナイフと背中に金の紋章が入ったフードがついた薄緑のローブ、それと白金貨以下数枚が入った袋だった。
「それは名付けて『女神様ナイフ』!こっちは『女神様ローブ』!どっちもなかなか壊れない良いものよ~」
ネーミングセンスはもう気にしない。それらを受けとって装着していく。ナイフも手に馴染む。ちなみにナイフを選んだ理由は扱いが楽そうだから。元の世界では武器使ったことがないから少しでも慣れやすいものをと思ったからだ。
この装備は別にすごいレアなわけではない。女神は魔法が今はほとんど使えないのだから強力な能力何てものもつけてもらえない。
女神は少しうつむいた。
「私としても一般人のあなたを巻き込みたく無かったし、巻き込んだなら凄い能力とか装備とかあげたかったんだけど、ごめんね」
「まあそりゃ仕方ないさ。あの味の開拓が原因なら俺にも責任はあるし。そっちはそっちでいろいろ頑張ってくれ」
「……そうね!それじゃ甘ちゃん、今から地上に送るから、着いたらすぐに連絡ちょうだいね?」
「おう」
お前は俺のお母さんかと内心ツッコミを入れたその直後、俺の意識は急に途絶えた。
目が覚めると体が回る感覚がして、吐き気はあったがそのまま起き上がると俺は草原にいた。
草の匂いと風、それだけでこれは夢ではなく現実なのだと認識するには充分だった。
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