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仕返しの仕返しはリスクがありそう。

また投稿しました!


そんなこんなでしっかりやっていきまっせwww



 大会当日、俺とメルは王宮の控え室で困惑していた。

 どう考えても人数が少ないのだ。

 この控え室にいる人数はたったの七人。仮にも姫様直属の騎士になれるチャンスなのだからもっと居て然るべきだ。にもかかわらず居ないというのは何か問題が起こったというふうに認識するべきだろう。

 しばらくすると開会式が始まるとのことだったので控え室にいる人達を兵士が呼びに来た。俺を含んだ七人がそれぞれ武器を持って立ち上がった。中でも、ナックルを装備しているイケメン青年、大きなピッケルを持った大きなオッサン、両手で人形を抱えた少女は雰囲気が違っていた。ちなみにメルは俺が言ったように「種族の特徴を活かす」ため、片手剣に盾を装備していた。

 俺はいつもどーり女神様ナイフ二本と籠手。

 所持している武器や雰囲気では現時点で戦力の把握は難しいのでとりあえず分析は後回しにし、俺も他の人に続いて部屋を出た。



 闘技場に着くと同時に全身を轟音ともとれる歓声が叩いた。俺は思わず一歩後退りそうになるのをこらえた。なんでかって、これから大会が始まるってのに他の参加者になめられるわけにもいかないし、弟子の前で無様な姿は見せらんないからだ。

 参加者七人が闘技場の中央に着くと観客席の、おそらく貴賓席であろう場所から声があがった。

 見るとそこには髭を蓄え、純白のマントを羽織る男が立っていた。俺は即座に目の前の男から発せられる風格とも言える何かを感じ、その男が誰なのかを悟った。


「静まれ!これより、我がレグルス・デル・ジヲクチヲクの名の元に王宮騎士大会を開催する!」


 ミルキ国王、その人だ……!


「違うであろう父上ぇ!妾の名じゃ!妾の名の元じゃろう!妾の騎士を見極める大会なのじゃぞ!?」


「お、おお!すまなかったなぁベルウィエッタ~! いつもの癖で大会は私の名義にしてしまった」


 ……あれ?王様……なんだよな……?

 いや、威厳が少なかろうとこの人数の説明さえしてもらえれば俺は何も言うまい……


「ゴホン……参加者がなぜ七人しかいないのか皆気になっているとは思うが、それは大会前の予選の結果である!我が愛娘ベルウィエッタの直属の騎士になれるというせいか、参加者が物凄い人数になってしまった。気持ちはわかる!私も王でなければ参加したであろう。だがこれでは大会がいつまで経っても終わらないから、五日前大会申し込みを締め切り、それぞれの登録日から鍛練時間のノルマを決めた!騎士たるもの常に慢心せず鍛練を怠ってはならん!故にノルマに届かぬ者を弾いたら……だいぶ減ったわけだ」


 ……予選はすでに始まってたのか。

 ていうかメルは俺と申し込んでラッキーだったんだな。鍛練サボってたままだったら確実に失格だったろう。


「さらにそこから我が軍から選抜した者に残りの者を襲撃させ、それを見事退けた者だけを残した!尚、分かっているとは思うが優勝者はベルウィエッタ直属の新設騎士隊の隊長として仕官してもらう。そして隊員はベルウィエッタが自ら参加者から数名選抜し、直属騎士隊に配属することとなっている!」


 騎士になるためには勝敗はどうであれ力を見せろってことか。

 だが、それは他の奴にしか言えないことだ。なにせ俺はいくら盗んだのは姫様とはいえ……

 あれ?

 そういえば何で俺とメルは誰にも襲われてないんだ?









 開会式が終わり、試合が始まるまでの間、選手は控え室にて待機となった。

 俺は他の選手の観察をしていたが、あの三人はやはり違う。誰かと当たるのならあの三人以外だな。当たるとしてもあのピッケルを背負ったオッサンはいやだ。虎を人に近づけたような顔で、腕も黄色と黒の体毛に覆われており、一目で獣人族だとわかる。体も鍛え込まれているし面倒な相手に違いない……


 そんなことを考えていると、兵士が組み合わせを伝えに来た。さて、初戦はだれか……


「第一試合、カンタロー・アマミ選手対マセナ・シュマニ選手。

第二試合はシードで、エムアル選手になりました。

第三試合、メルティナ選手対クオルタ・オグリナ選手。

第四試合、ジルバリオ・ポルストロア選手対ハイド選手。

以上の組み合わせとなりました。第一試合のお二方は準備をお願いします」


 ……いきなりって、これ絶対あの姫様の仕業だろ……

 落ち込みたくなる気持ちを抑え、武器をチェックする。相手はシュマニとかいうあのナックル男、マークしていた一人だ。警戒するに越したことはない。


『甘ちゃん』


(? どうした女神?)


『相手のあのシュマニとかいう男、さっきから甘ちゃんを目線だけできっちり観察してるわ』


(……いつから?)


 魔力による索敵はあくまでも俺の感知範囲内の位置や動きを感覚で捉えるもの。攻撃とかしてくれば分かるが、視線だけとかわかるわけがない。


『最初に控え室に入った時から。いきなり目をつけられたみたいね』


(警戒されてんのかな……)


『けっこうイケメンだし、もしかして、甘ちゃん×シュマニ!? いえ、もしかしたらシュマニ×甘ちゃんかしら!?』


(しばき倒すぞこの腐女神! どこぞの青いツナギの人じゃねえんだからそんなイベント起こるわけねえだろ!)


『もう~。あ、私は一応このまま見張っておくけど、甘ちゃんの見える範囲を俯瞰で見てるだけだから、離れると無理だからね?』


 一言(了解)と女神に伝えると、隣ではシュマニさんがレモネードを飲んでいた。俺も加護飲料であるいちごミルクを二本ほど取りだし一気に煽る。(だが、いつも通り牛乳瓶の大きさを四秒未満で飲み終えると周りは皆静まっていた……なぜだ?)

 控え室から出ていこうとすると、メルに止められた。


「し、師匠! 負けないでください!」


 俺はニカッと笑って見せ、それを見たメルはホッとした顔になった。

 負ける気などさらさら無いのだからそんな心配するより自分の心配をして欲しいが、弟子にああ言われたらさすがに負けられねえだろ。


 闘技場にはそれぞれ別の入り口から入場することになっていて、俺は相手と反対側の入り口に向かうと、一人の人影が壁にもたれかかっていた。


「のう、カンタロー。初戦とは大変じゃのう?」


 ベルウィエッタ姫だ。

 イタズラが成功したと子供っぽい笑みを浮かべていて、外で内心を吐露していた顔とは違い、年相応の明るい顔だった。


「うっせ。やっぱり対戦表決めたのお前か」


「にゅふふ、お主にはきっちり仕返ししないといかんと思っておったでのう」


「だったら失格にするなり直接やりゃいいだろ。お前は姫様なんだから俺一人どうにだってできるはずだろ?」


「そっ、それは……だって盗んだのは妾だし……でも悔しいし……」


 うわ、めんどくせ。


「今面倒くさい奴だと思ったじゃろ!お主は本当に憎たら── にゃにをするのじゃ!」


「ごめーとーう。正解者にはほっぺた引っ張りの刑をプレゼントー」


「い、いふぁいいふぁい!やめふのひゃ!」


 なんかからかいたくなんなーこいつ。

 メルとはまた違うから面白いな。だけど、この程度で俺のイタズラが終わるわけがない。お前の仕返しがこれなら、俺はさらに利用させてもらって仕返しをするとしよう。

 手を離すと姫様はむくれてにらんできた。


「黙って見てろ。未知のものを知りたいんだろ? 俺が持ってんのはまさしくそれだ。お前に、あり得ないものを見せてやるよ」


「……相手もかなりのやり手みたいじゃぞ?」


「それも込みで宣言する。次の試合で俺が使うのは、身体強化以外は、飛空だけだ。 お前に飛空の偉大さを見せてやるよ」


 当然「何言ってんだこいつ」みたいな顔になった姫様の横を通りすぎて入場口へと向かう。

 だが、服の裾を引っ張られたので振り向くと、まっすぐ俺を見据える姫様がいた。


「妾の名はベルウィエッタじゃ!お前でも姫様でもない。ベルウィエッタかベルと呼ぶがよい」


「……へえ、いいのかよ?」


「お主は優勝するのであろう?ならば遅いか早いかの違いじゃ。 しかし!優勝以外では絶対に認めんからな!」


 俺はやはり面倒くさい奴に目をつけられたのだと再確認し、ニヤリという擬音がぴったりな笑顔を一度向けて、再び歩き出した。


「約束は守れよ? ……ベル」


 俺って全然気づいてなかっただけで、けっこういい格好しいなのかもしれないなぁ。

活動報告でコラボのおしらせをいたします!

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