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弟子になりました!!

暑さでしにそうですw



 いつからなんだろう。私が、力じゃなく速度で戦うようになったのは。

 いつからなんだろう。私が、私でなくなったのは──


 っと、私、メルティナはこんな哲学っぽい事を考えるタイプではないのですが……あはは、たまには考えたっていいんじゃないかな?

 恥ずかしながら昔から私は「おしとやか」とか「聡明」って感じからかけはなれてまして……なんていうか体を動かして、興味のあるもの片っぱしから突っかかっていくタイプだったんです。そんな私だから勇者の物語を読んだ時の衝撃ったらなかったんです!ドラゴンと一対一で戦って国を救ったり、戦いの最中、敵の攻撃をものともせず一瞬で加護飲料を飲み干して「さあ、ここからが本番だぜ」みたいにカッコいいセリフを言う勇者様に憧れちゃいました。

 それからというもの勇者テシヲク様みたいにすごいスピードで誰よりも速く、カッコいい魔法剣で敵を倒せるように特訓しまくりました。でも、思えば、この時から私は少し道を間違えていたのかもしれません……いつの間にか勇者テシヲク「みたいに」から勇者テシヲク「に」に変わっていたんですから。


 私はある程度戦えるようになったら、故郷を出てきちゃって、修行のためにこの王都ジヲクチヲクで酒場の依頼をこなしていました。いろんな依頼を受けていて、大分強くなったころ、私は力を試したくてウズウズしていたんです。


 そんな時、酒場で突っかかられた私は──


 そこからは、今思えば恥ずかしい限りの事。修行も依頼もやめて、ドラゴン退治の依頼を待つばかり。

 カンタローさん、いえ、師匠が言うように、「私」はどこにいたんだろう……


 でも。


 今は違うんです!

 師匠が私を諭してくれたから、「私」は「私」でテシヲク様じゃないなんてことにも気づけなかった私とサヨナラできたんです!


 ああ、昨日のあの洗練された師匠の戦い。師匠の思いやり溢れる言葉の数々。きっと私は一生涯忘れないですよ!

 もうあの時の師匠ってばカッコよすぎです!泣いてる私にそっと近づいて、私が泣き続けてても胸を貸してくれて……キャー!!思い出せば出すほどカッコいい!


「って、きゃあっ!」


 ベッドの上で悶えてた私はそのまま床に落ちちゃいました。でも私たち冥族はみんな体が丈夫ですし、体の作りが違うので力も外見よりずっと強いんです。で、何が言いたいかっていうと、まあさして痛くないんです。それに、こんなことで痛がってたら冥族の名折れですから。

 今の私の目標は騎士でも勇者でもありません。いえ、騎士にはなりたいんですが、さらに先の目標として師匠の言うように、冥族である私として戦えるようになったら、いつか師匠に背を預けてもらえるくらいの騎士になるのが私の夢であり目標となったんです!






「おはよう、メル」


「あっ!おはようございます師匠!」


 朝、着替えを終えて部屋から出るとちょうどカンタローさんと鉢合わせました。


「うーん、その師匠ってのなんか違和感あるなぁ……歳もそんなに離れてないのに」


「いえっ!泣いた私のために胸まで貸してくれた師匠を呼び捨てになんてできませんっ!」


 そう言うとカンタローさんは顔を赤くして言葉に詰まっていた。はうぁ!思っていた以上に師匠がかわいいです!


「そか。それじゃ師匠の呼び名に恥じないようにしなきゃな」






 それから朝食を食べ終えた私たちは加護飲料を何本か手に、表に出てそのまま王都の外の草原に向かいました。近くに森もあるので、モンスターもいます。


「さて、これから大会までの間に俺はモンスター相手に技の調整とかをする。その間、メルは魔力を纏める特訓をしていてもらう」


「魔力をですか?それなら私は……」


「外に魔力が漏れてる程度の練度じゃダメなんだよ。俺もそうだったが外に漏らさずあますことなく自身に還元できなきゃ意味がない」


 さすがは師匠、有無を言わさない口調でした。


「外から見たとき魔力を移動、収束した時のみ見えるくらいまでにするのがベストだ。やり方は今から教えるからあとは練習あるのみだ」


「はい!」


 そう言うとカンタローさんはなんだか考え事を始めた。時々「どう教えるのが……」とか「大丈夫かな……」とか小声で言っていたから、私にどう教えるのか悩んでるのかな。


 見ててください!今はまだカンタローさんの足元にも及ばない私だけど、いつか必ず師匠の背を守れるくらいに強くなって見せますから!

 だから、追い付いた時には、師匠、私を……


「そう言えば……俺も師匠に腹を空かしたモンスターの前に放り出されたり魔力収束が完璧にできるまで飯抜きとか四六時中いつでもいきなり殺しかかったりするから魔力感知を続けろとかやらされたけど……この世界の弟子ってそれくらいの修行するもんなのかな?」


 ……え?


 小声だから全部は聞こえなかったけどなんかいますごい内容が聞こえたような気が……


 き、気のせいだよね!


「……じゃあやはり順序的にはやり方教えたら武器無しでモンスターの前に放るべきかな。俺も師匠にやらされたし……」


「し、師匠!それふつうじゃありません!私魔法技は得意じゃないのでそれやったら死んじゃいます!」


「ん?そうなの?それじゃ止めとくか……」


 気のせいじゃなかった!あ、危なかった……て言うかそれだけのことを弟子にやらせる人って、カンタローさんの師匠って一体……いや、聞かないでおきましょう。聞いてみたらもっとひどい修行メニューになっちゃったら目も当てられませんし。

 なんというか、カンタローさんの強さの秘密が私は見えた気がしました。


「これじゃ、私が師匠に追い付ける日はいつになるんだろ……」


 ううん、私はそんなこと言ってる暇はないの!

 さすがにカンタローさんがやってた死んじゃうくらいの修行は嫌ですけど、それでも少しずつでもキツい修行も大丈夫なくらいにならなきゃ、師匠に生きているうちに追い付けないんですから!


「じゃあともかくまずは魔力の効率のいい収束と還元とを教えるから、あとは大会までの間にとにかく反復練習だ」


「はいっ!」


 いつか、きっと。

 私がカンタローさんに相応しくなったら、私が想いをカンタローさんに伝えたら、私のこの師匠はどんな顔をするんでしょうね。


「なんか、楽しみです」


「ん?そうか!その意気やよし!それなら修行内容を二倍くらいキツくしてやるか!」


「わーっ!違うんです違うんですー!」






「あやつ、なかなかそそるのう……」


「!?あれ……?」


 そのとき、わずかな声が聞こえたきがしましたが、周りにはだれもいませんでした。




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