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電車

作者: 桂螢

電車に乗るのは高校生以来である。


昨年、挫折を二つも味わった。

自動車で人身事故を起こしてしまった。

しかも、二十四時間三百六十度接客を強いられる介護職を五年も続けたのに、力尽きてパンクしてしまった。せっかく取得した介護福祉士という国家資格を捨てることになったが、ノイローゼになって命を断つよりも、よっぽどマシである。思い切って、子どもの頃からかすかに憧れていたデザイナーに転職し、一からやり直すことにした。喜ばしいことに、芸術は介護に比べると、圧倒的に私に適した仕事であり、清々しささえ感じるくらいだ。


趣味を仕事にした代償として、給料が下がってしまったが、これくらいは納得と我慢はできる。それに加えて、人身事故の加害者になり、散々な目に遭ったことも手伝い、車を廃車することに踏み切った。そんなわけで、およそ二十年振りに毎日電車に乗ることになったのだ。


一人でいることを好む私は、知らない人々と一定の時間同じ場所にとどまらなければならない電車は、正直そんなに好きではない。高校時代の嫌な思い出も追憶してしまうことも時折ある。突然仲間はずれにされたこと。友人だと思っていたのに、孤児院育ちも、他の特定のクラスメイトが私のことをそしっていたのも、全て嘘だったことが発覚し、激昂し絶交したこと。相思相愛だと思っていたが、別のクラスメイトに略奪され、しばらく茫然自失したこと。自分でもこんな地獄の三年間を、よく耐えたなと感心する。振り返ると当時からすでに、絵描きだけが孤独な私を救い、広大で自由な世界へと誘ってくれていた。


嫌な思いをしている誰かを、少しでも癒やす絵を描き続けたい。明日も早起きし、遅刻せずに電車に乗って出勤しよう。

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