第45話「拳の天下布武」
安土の天を突く城郭に、戦国の雄たちが集っていた。
虎を討ち、甲斐を平定した竜也の拳。その名声は瞬く間に日本中へ広がり、いまや誰もがその存在を無視できぬものとなっていた。
広間に並ぶのは織田信長をはじめ、徳川家康、柴田勝家、羽柴秀吉ら織田家中の重臣たち。さらに、かつては敵対していた諸大名の使者までもが顔をそろえている。
「本日の議題は一つ」
広間の上座に立つ信長が、鋭い眼光を放つ。
「竜也の拳を、天下布武の象徴とすることだ!」
その言葉に一瞬ざわめきが走ったが、すぐに静まり返る。皆、虎を沈めた拳の威光を知っているからだ。
竜也は場の中央に立ち、拳を握った。
「……俺は武士でもなけりゃ大名でもねえ。ただの喧嘩屋だ。だがこの拳で、虎を沈めたのは事実だ」
新次郎が横で笑う。
「竜也殿、もう誰も“ただの喧嘩屋”なんて言いやしません。今じゃ“乱世を砕いた拳”ですから」
大助も腕を組み、うなずく。
「この場に集まった大名たちが、それを証明してんだろ」
◆
信長が歩み寄り、竜也の肩を叩いた。
「竜也、お前の拳はただの武ではない。戦を止め、国を治める力だ。俺の天下布武に必要なのは、まさにその拳よ」
竜也は苦笑いを浮かべる。
「俺はただ、タイマンで生き抜いてきただけだ。けど……もしこの拳で民が笑える世を作れるなら、それでいい」
その言葉に広間がざわついた。誰もが胸を衝かれたのだ。
家康が口を開く。
「竜也殿の拳があれば、もはや誰も戦を仕掛けまい。ならば我らが従うのは当然だ」
続いて羽柴秀吉が立ち上がり、満面の笑みを浮かべる。
「虎を沈めた拳に敵対するなんざ無謀の極み。ならばその拳の下で働かせてもらおうや!」
次々と、各地からの使者たちが膝を折り、竜也に従属を誓った。
「上杉も、毛利も、島津も……皆が拳の前に刃を納める。これこそ乱世の終わりだ!」
◆
竜也は拳を見つめ、静かに言った。
「俺は“俺が最強だ”なんて言う気はねえ。ただ、拳を交えてきたから分かる。強え奴も、弱え奴も、みんな血の通った人間だ。……なら、拳で繋がる天下でもいいじゃねえか」
新次郎と大助が誇らしげに頷く。
「親分……」
「そうだ、拳は人を壊すだけじゃねえ。人を繋ぐもんだ」
信長が高らかに宣言した。
「聞け! 本日をもって、竜也の拳を天下布武の旗印とする! この織田軍、いや、この国は拳の下に一つとなるのだ!」
その瞬間、広間が轟いた。
「おおおおおっ!」
「乱世は終わった! これからは拳の世だ!」
竜也は拳を突き上げ、叫んだ。
「拳の下にこそ、平和がある! これからは戦じゃねえ、拳で語る世を作るんだ!」
大地を揺らすような歓声が安土の城下にまで響き渡った。
こうして竜也の拳は、武の象徴として天下に刻まれたのである。




