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戦国タイマン録  作者: やしゅまる


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第43話「虎を討ちし拳」


 戦場に沈む夕陽は、血のように赤かった。

 甲斐の虎――武田信玄が竜也の拳に沈んだ報が広がるや、武田軍の兵たちは雪崩を打つように退き始める。誰もが耳を疑い、目を疑い、だが目の前に横たわる巨体が現実を突き付けていた。


 「虎が……負けた……」

 「信玄公が、あの虎が……!」


 混乱と恐怖が武田の兵を呑み込み、戦場は一気に崩壊する。


 竜也は荒い息を吐きながら、血に染まった拳をゆっくりと下ろした。両腕は痺れ、骨は悲鳴を上げている。それでも親分の顔には、獰猛な笑みが浮かんでいた。

 「……終わったか」


 背後から駆け寄る足音。新次郎と大助が、肩を貸すように竜也を支える。

 「竜也殿! ご無事で!」

 「無茶しやがって……だが、やったな!」

 竜也は口元の血を拭い、うなずいた。

 「……虎を沈めりゃ、もう道は開ける」



 やがて竜也は織田の本陣へと戻ってきた。血と土にまみれた姿の彼を見て、兵たちは道を開ける。誰もが敬意と畏怖を込めた眼差しで竜也を見つめていた。


 「戻ったぞォォ!」

 新次郎の声が響く。次の瞬間、馬上から豪快な笑い声が轟いた。


 「はっはっはっは! 竜也ァァ!」


 軍勢の先頭に立っていたのは、織田信長その人だった。甲冑を煌めかせ、燃えるような眼で竜也を見据えている。

 「聞いたぞ! 虎を倒したそうじゃねえか!」


 竜也は肩で息をしながら拳を突き上げる。

 「ああ……俺の拳で、虎は沈んだ!」


 信長はたまらず馬を降り、竜也の胸倉を掴んだ。兵たちが息を呑む。だが次の瞬間、信長は豪快に竜也を抱きしめた。

 「でかしたァ! 乱世を終わらせる拳よ、お前は!」


 竜也は血塗れの顔で笑い返す。

 「俺はただ、仲間と民を守りてぇだけだ。けど……この拳が乱世をぶっ壊せるなら、それでいい!」


 その言葉に信長はさらに笑う。

 「よくぞ言った! 竜也、お前の拳を借りりゃ、この織田軍、天下に敵なしだ!」



 その場にいた将兵たちの士気は一気に爆発した。

 「おおおおおっ!」

 「虎を討った! 天下は目前だァ!」


 徳川家康もまた、感嘆の声を漏らす。

 「……これが竜也殿の拳……。もはや乱世の行方は見えたな」


 甲斐の大地を震わせた戦いは、ここで完全に決着した。武田軍は総崩れ。指揮官を失った兵たちは次々と武具を捨て、逃げ惑う。


 竜也は最後に戦場を振り返り、拳を高く掲げた。

 「聞けェェ! この拳で、乱世を終わらせるのは竜也組だァァッ!」


 新次郎も大助も、兵たちも、その声に呼応する。

 「押忍ーーーーッ!!!」


 叫びが大地を揺らし、戦場全体に響き渡った。

 その瞬間、甲斐の虎を討ちし拳が、天下統一への道を切り開いたのだった。


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