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戦国タイマン録  作者: やしゅまる


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第41話「虎、咆哮す」

内藤昌豊が倒れた戦場に、重苦しい沈黙が訪れた。

 竜也の拳が嵐をも砕き、土煙の中に昌豊が沈んでいる。

 その姿を見た武田軍はざわめき、恐怖と動揺が広がった。


 「馬場殿に続き……内藤殿までも……!」

 「なんだあの拳は……!」


 竜也組の仲間たちは歓声を上げるが、竜也は肩で荒い息をしながら血塗れの拳を見下ろしていた。

 「……まだ、来るな」

 そう呟いた瞬間、風が鳴った。


 甲冑の重みをものともせず、悠然と馬上に現れた男。

 扇を閉じ、鋭い双眸で戦場を見渡す。

 甲斐の虎――武田信玄、その人であった。


 「……馬場、内藤。見事な最期であった」

 低く響く声は、大地そのもののように重い。

 信玄は扇を腰に差し替えると、ゆっくりと拳を握った。


 「拳で嵐を砕くか。ならば、この虎の咆哮を受けてみよ!」


 その一言で、武田軍の兵たちは沈黙した。将が動く。乱世の虎が、自ら拳を振るう――。



 「竜也殿! やばいです!」

 新次郎が叫ぶ。隣で大助も青ざめていた。

 「あれが信玄だ! あの虎と拳を交えるなんて……!」


 だが竜也は血に濡れた口元を歪め、にやりと笑った。

 「……いいじゃねぇか。虎だろうがなんだろうが、拳で倒す。それが俺だ」


 言葉が終わるや否や、信玄が馬を降り、巨体を揺るがせて前に出る。

 豪壮な甲冑の下から伸びる両腕は、丸太のように太く、拳は岩塊のごとき重さを宿していた。


 「いくぞ、竜也!」

 信玄が吼え、拳を振るう。


 ドゴォォォォンッ!!


 大地が裂けた。

 重戦車の突撃のような拳が地面を砕き、土煙と衝撃が戦場を包む。


 「うおおっ!」

 竜也は横に跳んでかわす。だが、直後に二撃目が襲いかかった。


 「ぐっ……!」

 腕で受け止めるが、衝撃は凄まじい。竜也の身体が宙に舞い、土に叩きつけられた。


 「親分ッ!」

 「竜也殿!」


 仲間たちの叫びが響く。



 竜也は血反吐を吐きながらも、地面に拳を突き立てて立ち上がる。

 「……効くなぁ、虎の拳ってやつはよ」

 笑って見せるが、腕は痺れ、全身が軋んでいた。


 「まだ立つか」

 信玄の瞳が鋭く光る。

 「良い。ならば本気でいこう」


 次の瞬間、信玄の拳が唸りを上げた。

 「虎王撃――ッ!!」


 振り下ろされる拳は、まるで山岳そのものが落ちてくるような重圧。

 空気が震え、兵士たちが悲鳴を上げる。


 竜也は真正面から拳を構えた。

 「上等だァァッ!」


 拳と拳がぶつかる寸前、竜也組の仲間たちが叫ぶ。

 「竜也殿ォ! 負けるなぁぁ!」

 「親分、ぶっ飛ばせェェ!」


 戦場全体が揺れるほどの轟音が響いた。


 ドゴォォォォォォンッ!!


 土煙が爆発し、視界が真白に閉ざされる。



 煙の中、竜也は膝をつきながらも拳を突き出し、信玄と押し合っていた。

 「ぐっ……ぐおおおおおッ!」

 「まだ持ちこたえるか……竜也!」


 両者の拳が軋み、骨が悲鳴を上げる。

 次の瞬間、爆発的な衝撃が弾け――竜也の身体が再び吹き飛ばされた。


 「竜也殿ォォッ!」

 仲間の絶叫が響き渡る。


 血を吐きながら地面を転がる竜也。

 それでも立ち上がろうと、膝に力を込める。


 「……守る拳……か」

 竜也はふと、仲間たちの顔を思い浮かべる。

 その瞳に再び炎が宿った。


 立ち上がった竜也の目を見て、信玄は口元を吊り上げる。

 「よかろう。次で決する! 受けてみよ、竜也!」


 信玄の全身がうなりを上げ、右拳に莫大な力が収束していく。

 戦場全体が震える。


 竜也も拳を構え、血塗れの顔に笑みを浮かべた。

 「……来いよ、虎ァ! 次で決めてやる!」


 そして――。


 「虎王撃――ッ!!」


 信玄の必殺の正拳が放たれ、戦場が白光に包まれる。

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