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戦国タイマン録  作者: やしゅまる


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第30話「兄弟拳盟」

小谷城にて拳を交わした竜也と長政。

 その奇妙な「拳の契り」は、同盟の証として誰よりも固い絆を築いた。



 同日の夜、城中は宴の席となった。

 大広間には豪勢な料理が並び、酒が注がれ、浅井・織田双方の武将たちが盃を交わしている。だが、最も目立っていたのは他ならぬ竜也と長政であった。


 「おう、長政! 今日の拳、最高だったぜ! てめぇは本物だ!」

 「竜也殿こそ! あれほど真っ直ぐな拳を受けたのは初めてだ!」


 二人は肩を組み、盃を掲げて笑い合う。

 浅井家臣たちは呆気にとられ、織田方の武将たちは苦笑を浮かべる。豪快すぎる拳兄弟ぶりに、場の空気が押され気味だった。


 「……殴り合った後に肩を組むとは、これぞ竜也殿か」

 「はは、あの二人の勢いにゃ誰も割って入れねぇよ」


 織田勢の武将たちはぼやきつつも、竜也の人間味にどこか感化されていた。



 一方、竜也組の面々――新次郎と大助もまた、浅井兵たちと膝を突き合わせていた。

 「なぁ、あの竜也殿って普段からあんな感じなのか?」

 「おうよ。拳で全部決める無茶苦茶な兄貴分さ。でもよ……あんたらが見た通り、本気で仲間を信じてる」


 新次郎の言葉に、浅井兵たちは頷く。

 大助は大助で、盃を片手に兵たちの腕を掴み、豪快に笑った。

 「おら、力比べだ! 誰でもかかってこい!」

 「はははっ、なんだこいつら!」


 互いに拳や腕力を交わし合ううちに、兵たちの心にも「竜也殿はただの無法者じゃない」という噂が広まっていった。



 やがて夜も更け、竜也は酔いも手伝って長政と並んで城の庭に出た。

 月明かりの下、二人は肩を並べ、拳を握りしめる。


 「義兄弟ってのはよ、裏切らねぇもんだろ?」

 「無論。浅井の名にかけて、義は貫く」


 長政の声は真摯で揺らぎがない。

 竜也は豪快に笑い、拳を突き出す。長政も応じ、拳と拳が再びぶつかり合った。


 「ハッ、いいねぇ! お前とはずっと拳を交わせる気がするぜ!」

 「私もだ、竜也殿。たとえ戦国の荒波に呑まれようと、義は違えぬ!」


 その言葉に竜也は胸を熱くし、月夜の下で高らかに笑った。



 広間に戻った信長は、二人の様子を遠くから見ていた。

 「……義を重んじる長政と、拳で全てを語る竜也。乱世にあって、どちらが先に折れるか……見ものよ」


 信長の眼差しは冷徹でありながらも、ほんの少しだけ愉快そうに揺れていた。



 こうして織田と浅井の同盟は固く結ばれた。

 竜也は義兄弟として長政に慕われ、竜也組も浅井兵に受け入れられる。


 だが、この拳の盟約がやがて血で試されることを――この時の竜也はまだ知らなかった。


 「よっしゃ! 次はどんなでっけぇ戦が来るんだ!? 早く拳を振るいてぇぜ!」

 竜也の豪快な叫び声が、宴の夜空に響き渡った。

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