表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国タイマン録  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/47

第24話「国境の激突」

朝もやの立ちこめる美濃国境。川を挟んで睨み合う両軍は、互いに鬨の声を上げていた。


 「出陣じゃああッ!」

 織田軍の太鼓が打ち鳴らされ、軍勢が一斉に前進を始める。


 先陣を任された竜也組は、黒地に白拳の旗を掲げて走り出した。泥を蹴り上げながら、全員の拳は固く握られている。


 「行くぞォォッ!」

 竜也の咆哮に仲間たちが続く。その姿は、まるで荒野を駆ける猛獣の群れのようだった。



 敵陣から一人、屈強な武将が名乗りを上げる。

 「我こそは斎藤家家臣、稲葉良通! かかってこい!」


 立ちはだかったのは鎧に身を包んだ大男。槍を構え、竜也組を待ち受ける。


 「俺が行く!」

 真っ先に飛び出したのは新次郎だった。木刀を捨て、拳を握りしめる。


 「タイマンで証明すんだよ!」

 稲葉の槍が唸りを上げ、新次郎の頬をかすめた。だが新次郎は恐れず踏み込み、腰を沈めて拳を突き上げる。

 「おらぁッ!」

 ドゴォッ! 鉄兜に拳がめり込み、稲葉が後方に吹っ飛ぶ。地に倒れ、しばらく立ち上がれなかった。


 「やったぞ、新次郎!」

 仲間たちが歓声を上げる。



 続いて立ちはだかったのは、二刀を携えた俊敏な武将。

 「斎藤家の森可成だ! 誰でも来い!」


 「俺がやる!」

 次に名乗り出たのは剛力の大助。剣は持たず、拳だけで挑む。

 二刀の連撃が大助を襲う。だが彼は構わず腕で受け止め、痛みに顔を歪めながらも吠えた。

 「これが拳の重さだッ!」

 渾身のフックが森の腹を打ち抜き、武将が膝から崩れ落ちた。


 竜也組は次々に武将と一騎打ちを繰り広げ、拳で敵を退けていく。兵たちは驚愕し、竜也組の名を叫び始めた。

 「な、何だあの連中は!」

 「拳だけで武将を倒しおった!」



 その時、斎藤軍の本隊が川を渡り、雪崩れ込むように押し寄せてきた。数千の軍勢が鬨の声を上げ、槍と刀を突き出して迫る。


 「竜也殿!」

 新次郎が振り返る。仲間たちも疲弊し始めていた。


 だが竜也は一歩前に出て、口の端を吊り上げた。

 「ようやく来やがったか……大軍ごとまとめてブッ倒してやるよ」


 敵兵が一斉に襲いかかる。だが竜也は怯まず、地面を蹴り砕いて突っ込んだ。


 「うおおおおッ!」


 拳が振るわれるたび、兵が吹き飛び、鎧ごとへし折られる。突進してきた槍兵の列をまとめて薙ぎ払い、馬上の武者を拳で叩き落とす。


 ドゴォッ! バキィッ! 骨と鉄の砕ける音が戦場に響き渡る。


 「こ、こいつ一人で軍を押し返してるぞ!」

 「ば、化け物だ!」

 斎藤兵が恐慌に陥り、後退を始めた。



 竜也は拳を血に染めながらも、まだ闘志を失わなかった。背後では仲間たちが必死に戦い、各々が武将を打ち破っている。


 「竜也殿! 俺らもやれる! 拳で勝ち抜ける!」

 新次郎の叫びが飛ぶ。


 竜也は振り返り、仲間の姿を見て笑った。

 「上等だ! これが竜也組の拳だ!」


 その瞬間、織田軍の全体が勢いづいた。兵たちは竜也組の姿に奮い立ち、斎藤軍を押し返す。


 戦場は、竜也の拳を中心に揺れ動いていた。



 夕暮れ、川辺は死体と血で赤く染まっていた。だが織田軍は押し勝ち、斎藤軍を後退させることに成功した。


 戦場の真ん中に立つ竜也の姿は、誰の目にも焼きついていた。


 「斎藤義龍……次はてめぇの番だ」


 竜也は血まみれの拳を握り締め、夜空を睨みつけた。

 乱世を拳で切り拓く戦いは、まだ始まったばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ