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戦国タイマン録  作者: やしゅまる


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第23話「美濃への道」

桶狭間の勝利から半月。

 清洲城の広間には家臣たちが集められ、織田信長が前に立っていた。鋭い眼光を光らせ、声を張り上げる。


 「次の標的は美濃だ!」


 場がざわめく。美濃斎藤家――尾張の北を塞ぐ強大な敵。織田にとって避けては通れぬ相手だ。

 「美濃を制せば尾張は安泰、この乱世において我らの勢威は一気に広がる!」

 信長の檄に兵たちの士気は沸き立ち、広間は熱気に包まれた。


 その時、一人の使者が駆け込んできた。

 「し、失礼いたします! 美濃より、斎藤義龍殿からの挑発状にございます!」


 広間が静まり返る。信長が使者から書状を受け取り、声を張った。

 「“織田の猿と、その拳法者を討ち果たす”」


 兵たちの視線が一斉に竜也へ集まる。

 「拳法者……?」

 「竜也殿のことか!」

 「美濃でも噂になっておったのか!」


 竜也は鼻で笑い、拳を鳴らした。

 「ほう、今度は大将自ら俺を指名か。上等だ! タイマン張ってやろうじゃねぇか!」


 信長は笑みを浮かべた。

 「義龍はお前を恐れている。拳ひとつで戦を変える男……奴もそれを知っているのだ」

 「恐れてんのか挑んでんのか、どっちにしろ拳で答えるだけだ」

 竜也の眼光は獣のように鋭く輝いた。



 出陣の日。

 織田軍は城を発ち、北へ進軍した。列の先頭には竜也組の旗――黒地に白い拳が描かれた即席の旗が翻っている。


 「見ろよ、竜也組だ!」

 沿道の民が声を上げる。子どもたちが拳を突き上げ、大人たちも手を振る。竜也組は照れ笑いを浮かべつつも、胸を張って進んだ。


 新次郎が横に並び、竜也へ声をかける。

 「竜也殿。俺たち……あんたに追いつけるくらいの拳を打てるようになりてぇ」

 竜也は口の端を吊り上げる。

 「だったら戦場で証明しろ。タイマンで武将をぶっ飛ばせば、誰も笑いやしねぇ」


 その言葉に仲間たちの拳が固く握られた。



 やがて国境付近に差し掛かると、斎藤軍の旗が見え始めた。数千の軍勢が川を挟んで陣を敷き、鬨の声を上げている。


 「来たな、織田の猿ども!」

 「拳法者を討ち取れ!」


 敵兵たちの罵声が響く中、竜也は一歩前に出て声を張り上げた。

 「おい義龍! てめぇが拳で勝負すんじゃねぇのか! 群れで喚いてんじゃねぇぞ!」


 斎藤軍の陣からざわめきが起こる。誰もが竜也の叫びに息を呑んだ。

 その圧に押され、川向こうの兵が思わず後ずさる。


 信長が肩を揺らし、笑った。

 「見事だ、竜也。敵の大軍すら声で揺さぶるか」

 「へっ、ビビって逃げる奴ぁ拳を食らう前に終わりだ」



 その夜。

 焚き火の赤に照らされながら、竜也組は輪になって拳を突き合わせた。

 新次郎が声を上げる。

 「明日、俺たちは先陣を務める! それぞれ武将とタイマンだ!」

 「おう!」

 「拳で証明するぞ!」


 竜也は焚き火越しに仲間たちを見回し、ニヤリと笑った。

 「いいか。俺たちの拳は乱世に挑む狼煙だ。誰が相手でも関係ねぇ。群れなんざ関係ねぇ。一人ひとりが拳で勝って証明しろ」


 仲間たちは拳を突き上げ、夜空に叫んだ。

 「竜也組! 天下を拳で切り拓け!」


 その声は闇夜を震わせ、明日の激突を予感させるものだった。


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