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戦国タイマン録  作者: やしゅまる


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第18話「信長と義元」

嵐の戦場を切り裂き、竜也組は今川本陣目前まで突き進んだ。

 豪雨に煙る視界の先、金銀の糸を織り込んだ絢爛たる大旗が揺れている。

 その旗の下、座すは駿河の大大名――今川義元。


 「ついに……見えたぞ!」

 竜也は血に濡れた拳を握りしめ、叫んだ。

 背後では仲間たちが息を切らしながらも、その背を追っている。

 誰もが限界を超えていたが、竜也の背中だけが揺るぎない道標となっていた。



 義元本陣の守備は、今川の精鋭中の精鋭。

 重装備の武将らが槍と太刀を手に、鉄壁の防御陣を築いていた。

 「愚か者どもめ! 本陣に踏み込めると思うな!」

 怒声と共に、刃が竜也組に迫る。


 「上等だッ! まとめて相手してやらァ!」

 竜也が飛び込む。

 敵武将の太刀を前腕で受け止め、火花が散った瞬間――逆の拳で兜を砕いた。

 「次ィッ!」

 回し蹴りで二人目を吹き飛ばす。


 仲間も拳と蹴りで応戦し、周囲に乱戦が広がった。

 「竜也殿に続け!」「俺らが道を拓くんだ!」


 だが数は圧倒的に敵が多い。

 次第に竜也組は囲まれ、押し潰されそうになった。


 「竜也! 横から来てる!」

 仲間の声に振り返れば、数名の敵兵が信長へ突進していく。


 竜也は咆哮した。

 「誰も邪魔すんじゃねぇッ!」


 拳を振り抜く。

 衝撃で雨水が弾け、敵兵の列がまとめて吹き飛んだ。

 「信長ァッ! ここまで連れてきたぞ!」

 振り返り、主君へ道を示す。



 信長は馬上で微笑んだ。

 「竜也、見事だ。ならば――この一太刀で天下を拓く!」


 彼は馬を駆り、義元の御座へと突入した。


 そこにいた義元は、煌びやかな甲冑を纏い、扇を手に悠然と構えていた。

 「小勢で我が本陣に至るとは……だが所詮は無謀よ。首を差し出すがいい」


 「ほざけ、太平の化粧大名!」

 信長は馬から飛び降り、刀を抜いた。

 稲光が刃を照らし、雷鳴が二人を包む。


 ――信長と義元、歴史的な一騎打ちが始まった。



 竜也は仲間たちと周囲の敵を押さえ込む。

 「こっから先はタイマンだ! 信長と義元の勝負に口出しすんじゃねぇ!」

 敵兵が突っ込んでくるたびに、竜也の拳が雷鳴のように轟き、叩き伏せる。


 仲間たちも必死に応戦した。

 「竜也殿を守れ!」「信長様の勝負を邪魔させるな!」

 拳と刃が雨中で火花を散らし、地面は泥と血で染まっていく。



 一方、信長と義元の刀が火花を散らした。

 義元の太刀筋は重厚で、鎧の下から繰り出される力強さは大名の威厳を示していた。

 「尾張の小僧が、この義元に挑むか!」

 「小僧だと? 天下を握るのは俺だ!」


 刃が何度も交差し、雨が二人の顔を打つ。

 竜也は戦いながらも、その光景から目を逸らさなかった。

 ――これが、本物の天下を懸けたタイマンだ。



 ついに決着の時が訪れる。

 義元の太刀が振り下ろされた瞬間、信長は身を沈め、刃を弾いた。

 空いた懐に、鋭い一閃が走る。


 「これで終わりだァッ!」

 信長の渾身の斬撃が義元の鎧を裂き、鮮血が飛び散った。


 「ば、馬鹿な……!」

 義元は呻き、地に崩れ落ちた。


 ――今川義元、討ち死に。



 その瞬間、竜也は拳を振り抜いて最後の敵兵を倒し、叫んだ。

 「やったぞォッ! 信長が勝ったァ!」


 仲間たちが拳を突き上げ、雨を突き抜ける咆哮が戦場に響く。

 敵兵の列は動揺し、やがて総崩れとなって逃げ散っていった。


 信長は義元の亡骸を見下ろし、振り返った。

 「竜也……お前の拳が、俺をここまで導いた。これで乱世は変わるぞ」


 竜也は血と雨に濡れた拳を握り、応えた。

 「おう……! これがタイマンの勝ち方だ!」


 雨が上がり、空の向こうに光が差し始めていた。


 ――乱世の幕開けを告げる勝利だった。


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