表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国タイマン録  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/47

第17話「竜也、突入!」

豪雨の中を突き進んだ織田軍は、ついに桶狭間の谷を抜けた。

 前方に翻るのは――金糸を織り込んだ今川義元の大旗。

 その周囲には、槍衾を組んだ精鋭部隊が幾重にも壁を築いている。


 「う、動けねぇ……!」

 織田兵の足が止まった。数千の兵を相手にするにはあまりに分が悪い。

 大雨で混乱していた敵軍も、さすがに本陣近くでは統制が取れていた。

 槍の穂先が雨粒を弾き、ぎらりと光る。


 その空気を切り裂くように、竜也が吠えた。

 「ビビってんじゃねぇッ! 俺らが道ァ拓く! 全員ついて来いッ!」


 泥を蹴立て、竜也組の若者たちが突進する。

 「おうッ!」「竜也殿に続けッ!」

 仲間の叫びが雨を突き破る。



 最初に立ち塞がったのは、槍を構えた今川の武将だった。

 「無謀な小僧め、ここを通すと思うか!」

 鋭い突きが、竜也の胸を狙う。

 だが竜也は一歩踏み込み、左腕で槍の石突きを掴んだ。


 「こんな棒切れで俺を止められるかよ!」

 筋肉が唸り、槍の柄がバキリと折れた。

 竜也の拳が武将の兜に叩き込まれる。鉄が歪み、武将は泥に沈んだ。


 仲間たちも次々と拳を振るい、敵兵を倒していく。

 「拳で押し切れッ!」「織田の喧嘩見せてやれ!」

 雨と血が入り混じり、戦場は混沌と化した。



 だが、敵の反撃は苛烈だった。

 竜也組の一人、若武者・新次郎が背後から槍に狙われる。

 「ぐっ……!」

 振り返る暇もなく、穂先が喉元に迫る。


 「バカ野郎ッ!」

 竜也が咄嗟に飛び込んだ。己の体を盾にし、槍を腕で受け止める。

 鉄の穂先が甲冑を突き破り、肉を裂いた。鮮血が雨に溶ける。


 「竜也殿ッ!」

 仲間の叫びが轟く。


 竜也は歯を食いしばり、槍を掴んだまま怒号した。

 「こんなもん……折れろォッ!」

 全身の力を込め、拳でへし折る。折れた穂先は地に突き刺さり、敵兵は恐怖に目を見開いた。


 「俺は言ったよなァ! 誰一人、死なせねぇってよ!」

 竜也の目は炎のように燃えていた。



 その背中を見て、仲間たちは奮い立った。

 「竜也殿が庇ってくれた!」「俺らも応えるぞ!」

 竜也組の拳が次々と敵をなぎ倒す。

 織田兵も士気を取り戻し、竜也の背に続いた。


 豪雨は戦場を洗い流し、槍衾が崩れ始める。

 「う、うろたえるな! 本陣を守れ!」

 敵将の怒号も、竜也の咆哮にかき消されていった。


 「どけぇッ! 俺らの拳で道は拓けるッ!」



 その光景を後方から見ていた信長は、思わず笑った。

 「……あの拳は嵐だ。竜也が暴れるほど、敵の陣形が崩れる」

 雨に濡れた顔に、不敵な笑みが浮かぶ。

 「面白い。あの拳が俺を義元の首へ導く――!」



 竜也は拳を血で濡らしながらも立ち止まらなかった。

 新次郎を背に庇い、仲間たちを鼓舞し、ただ前へ。

 「ここまで来たら退く気はねぇ! 俺らで信長を義元まで届けるんだッ!」


 仲間たちが拳を突き上げ、応える。

 「おうッ!」「竜也殿に命、預ける!」


 雨が戦場を覆う中、竜也の拳は雷鳴のように敵陣を切り裂いた。


 ――今川義元本陣まで、あとわずか。

 竜也組の喧嘩は、いよいよ佳境を迎えようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ