思い出のレシピ 第1話:消えゆく“味”
こんにちは!
物語も佳境です。
今回は、商店街で長年愛されてきた、ある「味」のお話。
どんなに美味しいものでも、作る人がいなくなれば、消えてしまう。
そんな、少し切ない現実が、商店街に影を落とします。
ほしふる商店街の名物といえば、多くの人が、そのコロッケを思い浮かべるだろう。
「おかずの店 きくち」。
その店先で、店主の菊池ハツさんが揚げる、少しだけ甘めの味付けのポテトコロッケは、長年、この街の胃袋と心を支えてきた、思い出の味だ。
学校帰りの小学生が、百円玉を一枚握りしめて買いに来る。夕飯のおかずに困った主婦が、家族の人数分を求めていく。
その光景は、商店街の当たり前の日常だった。
しかし、その当たり前が、永遠ではないことを、誰もが薄々感じ始めていた。
店主のハツさんは、今年で80歳。
その彼女が、最近、店先で商品を取ろうとしてふらつき、軽く腰を痛めてしまったのだ。
幸い、数日で店には復帰できたが、その一件は、商店街の仲間たちに、一つの避けられない現実を突きつけた。
(…ハツさんが、もし、本当に店に立てなくなったら)
あの、サクサクの衣と、ほんのり甘いジャガイモの味は、もう、二度と食べられなくなってしまうのかもしれない。
ハツさんには、子供はいるが、皆、遠い都会で家庭を築いており、この小さな惣菜屋を継ぐ気はない。ハツさん自身も、それを望んではいなかった。
「私の代で、この店も、この味もおしまい。それでいいのさ」
見舞いに来た文に、ハツさんは、縁側でお茶をすすりながら、寂しそうに、しかし、どこかさっぱりとした口調で言った。
文は、かける言葉を見つけられなかった。
どんなに@SHOPが便利でも、後継者がいない、という現実だけは、どうしようもない。
店の歴史も、そこにしかない味も、作る人がいなくなれば、ただ、静かに消えていくだけだ。
商店街から、一つの大切な灯火が、今、静かに、そして、確実に消えようとしていた。
お読みいただき、ありがとうございます!
後継者不足。これは、日本の多くの場所が抱える、本当に深刻な問題ですね。
ハツさんのコロッケの味は、このまま失われてしまうのでしょうか。
続きはまた明日!
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