会議室の“沈黙” 第3話:声が“響く”場所
『ワンチーム』の助言を受け、新しい会議の形を試すことになった高橋たち。
彼らの職場は、どんな変化を迎えるのでしょうか。
エピソード「会議室の“沈黙”」、完結編です。
その数日後のことだった。
高橋は、別々のメンバーが担当している機能間の連携に、潜在的なリスクがあることに、自身の経験から気づいた。
(これはまずいな…。早めに会議を開いて、担当者同士の認識を合わせておかないと)
高橋が、関係者のスケジュールを調整するために、カレンダーツールを開こうとした、その瞬間だった。
『ワンチーム』から、ポップアップ通知が届いた。
『警告:タスク間の依存性分析により、高リスクの競合が予測されます。30分の連携会議を推奨します』
「…!」
高橋が息をのむと、通知は文章を続けた。
『推奨参加者:佐藤理恵様、高橋健太様、鈴木守様』
『議題と関連資料:自動生成済み(添付ファイルをご確認ください)』
『候補日時(全員の空き時間):本日15:00-15:30』
そして、その通知の最後は、こう締めくくられていた。
『この会議を設定しますか?【はい/いいえ】』
高橋は、ただ「はい」のボタンをクリックした。
瞬時に、関係者のカレンダーに会議の予定が登録され、資料付きの招待状が送信される。
高橋がやるべきだった全ての管理業務が、ほんの数秒で終わってしまった。
彼は、椅子に深くもたれかかり、天井を仰いだ。
人間がやるべきことは、最後の「意思決定」だけ。
それ以外の、面倒で、時間のかかる全ての準備を、この物言わぬアシスタントは完璧にこなしてしまう。
会議室を支配していたあの息苦しい沈黙は、もうない。代わりに生まれたのは、全員の声がちゃんと響き合う、対話のための時間だった。
高橋は、その劇的な変化に、静かな感動を覚えていた。
チームの未来は、間違いなく明るい。そんな確信が、彼の心を温かく満たしていた。
エピソード「会議室の“沈黙”」、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
会社の会議も、やり方次第で、優しさを生み出す場所にできるのかもしれませんね。
さて、次に彼らを待つ課題は「新入社員の孤立」です。
また明日から、新しいお話が始まりますので、お楽しみに!
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