二人だけのパン屋さん 第3話:焼きたての“自信”
こんにちは!
エピソード6、完結編です。
お客様からの「声なきリクエスト」という、確かなデータを得た千代さん。
彼女は、夫の健一さんに、そのデータを見せます。
二人のパン屋さんに、新しい朝がやってきます。
「お父さん、見て。どうやら、お客さんは、塩パンが食べたいみたいですよ」
千代さんが、少し興奮した様子でスマホの画面を見せると、健一さんは目を丸くした。
そして、次の瞬間、少年のように、ぱあっと顔を輝かせた。
「塩パンか! そうか、そうだったのか! それなら、俺の一番得意なパンだ!」
二人は、その時、気づいた。
怖かったのは、失敗することそのものではない。
「お客様に、何を求められているのか分からない」という、暗闇の中にいるような不安が、怖かったのだ。
数日後の土曜日。
「こむぎベーカリー」の店先には、千代さんが書いた、少しだけ震えた文字の看板が置かれていた。
『店主のわがまま。本日限定、塩パン焼きました!』
こんがりと焼き色のついた塩パンは、@SHOPのお知らせを見た近所の人たちで、お昼過ぎにはあっという間に売り切れてしまった。
「すごく美味しかったです! また、絶対に焼いてくださいね!」
「この味を待ってたんですよ!」
お客さんからの、温かい言葉のシャワーを浴びて、健一さんと千代さんは、照れくさそうに、しかし、心の底から嬉しそうに顔を見合わせた。
閉店後、千代さんが@SHOPを開くと、いつもの優しい声がした。
「千代さん、健一さん。新しいパン、大成功でしたね。お客様の笑顔が、たくさん見えましたよ」
新しいパンを焼く喜びと、誰かに喜んでもらえる幸せ。
データという名の確かな「自信」が、二人に、忘れかけていた大切なものを、もう一度思い出させてくれた。
エピソード6、最後までありがとうございました!
データは、冷たい数字ではなく、人を勇気づける温かい応援になる。
そんなメッセージが伝わっていれば嬉しいです。
さて、次に商店街を襲うのは、もっと現実的で、どうしようもない「お天気」の問題のようです。
次回から始まる新エピソードもお楽しみに!
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