二人だけのパン屋さん 第1話:焼けないパン
こんにちは!
今日から新エピソードです。
クリーニング店の潔さんの心がほぐれ、商店街には少しずつ温かい空気が流れています。
今回は、パンの焼ける良い香りが漂ってきそうな、老夫婦が営む小さなパン屋さんが舞台です。
『ほしふる商店街』のちょうど真ん中あたりに、小さなパン屋「こむぎベーカリー」はある。
店主の健一さんと、妻の千代さんが二人で切り盛りする、昔ながらのお店だ。
夕方、店じまいを始めた健一さんが、パン作りの専門誌をめくりながら、大きなため息をついた。
「千代さんや。やっぱり、俺も、新しいパンを焼いてみたいなぁ。ほら、この塩パンとか、あんバターサンドとか…」
その言葉に、レジを締めていた千代さんは、優しく、しかし、きっぱりと首を横に振った。
「だめですよ、お父さん。新しいパンを焼いても、売れ残ったらどうするんですか。ただでさえ、材料費も上がっているのに」
これは、ここ最近、二人の間で繰り返されている、小さな、そして終わりのない口論だった。
新しい挑戦に胸を躍らせる夫と、堅実な経営を願う妻。
どちらの気持ちも、痛いほど分かる。
そこへ、ひょっこりと顔を出したのは、文だった。
「健一さん、千代さん、こんばんは! あ、塩パン! 私も食べてみたいなあ」
「文ちゃんかい。だろ? きっと、うまいのが焼けると思うんだが…」
嬉しそうに同意する健一さんの隣で、千代さんは困ったように微笑むだけだった。
挑戦したい気持ちと、失敗への不安。
その間で、パン生地のように膨らんだ二人の想いは、発酵しきれずに、しぼんでしまいそうだった。
お読みいただき、ありがとうございます!
新しい挑戦への憧れと、失敗への不安。パン屋のご夫婦の悩みも、とても共感できますね。
この優しくて、もどかしい膠着状態を、あのアプリはどう解決するのでしょうか。
続きはまた明日!
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