見えない“ありがとう” 第3話:心のシワが伸びる時
こんにちは!
エピソード5、ついに完結編です。
お客さんからの「ありがとう」の声が、少しずつ潔さんの元に集まり始めました。
頑固な職人の心に、その声は届くのでしょうか。
数日が過ぎた夜。
潔さんは、その日も疲れ切って、店の片付けをしていた。
ふと、カウンターに置きっぱなしにしていた自分のスマートフォンが目に入る。文に半ば無理やりインストールさせられた「@SHOP」のアイコンが、静かに光っているように見えた。
(どうせ、何も来てないだろうが…)
自嘲気味に、彼はアプリを開いた。
すると、画面の隅に、見慣れない手紙のアイコンがあり、そこに「3」という小さな数字が点灯している。
恐る恐る、アイコンをタップする。
そこには、彼が「おべっかだ」と切り捨てたはずの、お客さんからのメッセージが、並んでいた。
『諦めていたシミだったので、感動しました。またお願いします!』(星野文具店 星野様より)
『こんなに綺麗になるとは。明日からまた、気持ちよく仕事ができます』(斉藤様より)
『子供の制服、いつも丁寧にありがとうございます。本当に助かっています』(山田様より)
そこに書かれていたのは、飾り気のない、しかし、心からの感謝の言葉だった。
潔さんは、食い入るように、その短い文章を何度も、何度も読み返した。
自分の仕事が、誰かの感動になり、誰かの明日への活力になり、誰かの日常を支えている。
その当たり前の事実が、温かい実感となって、乾いた心にじんわりと染み渡っていく。
気づけば、彼の目から、熱いものが一筋、頬を伝っていた。
翌日。
文が店の前を通りかかると、潔さんが、いつもより少しだけ背筋を伸ばして、アイロンをかけていた。
文が「こんにちは!」と声をかけると、彼は、一瞬だけこちらを向き、照れくさそうに、しかし、確かにこう言った。
「…いらっしゃい」
その声は、いつもより、ほんの少しだけ、優しく聞こえた。
エピソード5、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
潔さんの心の頑固なシワが、綺麗な蒸気で、すっと伸びていくような、そんな温かい結末が描けていれば嬉しいです。
さて、商店街には、まだまだ色々な悩みを持った店主がいます。
次回からは、老夫婦が営む、小さなパン屋さんの物語が始まります。お楽しみに!
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