会議室の“沈黙” 第1話:沈黙の時間
さて、今日からは新しいエピソードが始まります。
今回のテーマは「会社の会議」です。
私たちの職場にも潜む、身近な問題。高橋たちは、どう向き合っていくのでしょうか。
水曜日の午後1時。
株式会社テックフォレストの週次定例会議が始まった。
広い会議室には佐藤理恵が率いるチームのメンバー10名と、彼女の上司である事業部長までが顔を揃えている。
しかし、その人数とは裏腹に、部屋を支配しているのは重たい沈黙だった。
報告者の若手が、何時間もかけて準備したであろう資料をスクリーンに映し出す。
「…以上が、先週の進捗となります。現状、オンスケジュールです」
彼がそう締めくくると、事業部長が腕を組んで、わざとらしく唸った。
「うーん…。君の報告書の3ページ目、『問題点の洗い出し』という項目だがね。この『洗い出し』という言葉は、少し受け身な印象を与えないかね?『課題の明確化』といった、より前向きな表現にできないか」
また始まった、と高橋健太は心の中で天を仰いだ。
部長は、報告内容の技術的な本質を理解していない。
だから、いつもこうして、どうでもいい言葉尻や表現の揚げ足を取ることで、自分が会議に参加していることを示そうとするのだ。
「は、はい!修正いたします!」
報告者が慌ててメモを取る。
他のメンバーは、スクリーンと自分のノートPCを交互に見ながら、この不毛なやり取りが早く終わるのをただ待っている。
佐藤は、この会議のために、一体どれだけの時間が失われているのかを計算して、暗澹たる気持ちになった。報告資料を作る時間。
そして、ほとんど発言しないメンバーが、この会議に参加している1時間。
その全ての時間を、開発や設計に使えたとしたら。
この会議室の沈黙は、チームの活力を静かに、しかし確実に蝕んでいた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
「形骸化した会議」という、とても現実的で、多くの人が経験したことのある問題ですね。
この状況を、あの賢いアシスタント『ワンチーム』は見過ごすのでしょうか。
続きは、また明日の更新で!
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