あなたの声と、お店の物語 第2話:あなたの声を聞かせて
こんにちは!昨日の続きです。
活気のない商店街で、主人公の文は藁にもすがる思いで、謎のアプリ「@SHOP」をインストールしました。
スマホから聞こえてきたのは、穏やかな声でした。
アプリを開くと、画面は真っ白。
しばらくして、ふわりと文字が浮かび上がった。
『はじめまして、星野さん。これから、あなたのお店のお手伝いをします』
そして、スマホのスピーカーから、女性とも男性ともつかない、穏やかで落ち着いた合成音声が聞こえてきた。
「こんにちは、星野さん。お店のことを少し、教えていただけますか?」
「えっ、声!?」
思わず、文は素っ頓狂な声をあげてスマホを落としそうになった。
「…は、はい」
誰もいない店内で、スマホに向かって返事をするのが、なんだかとても恥ずかしい。
「ありがとうございます。では、最初の質問です。あなたのお店の、一番の『自慢』は何ですか? 思いつくままに、話してみてください」
「じ、自慢…?」
文は戸惑いながらも、独り言のように話し始めた。
「そうねぇ…祖父の代から続く、この店の雰囲気、かしら。手紙を書きたくなるような、たくさんの種類の便箋とか、インクとか…。お客様にぴったりの一本を、時間をかけて一緒に探すこと、ですね…」
「素敵ですね。『時間をかけて一緒に探す、手紙を書きたくなるお店』。覚えました」
アプリが自分の言葉を肯定してくれたことに、文は少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
「では次に、お店の商品を教えてください。スマートフォンのカメラで、お店の棚をゆっくりと動画で映していただけますか?」
言われるがまま、文はカメラを起動し、店の中をゆっくりと歩き始めた。
万年筆が眠るガラスのショーケース、壁一面に広がる色とりどりの便箋棚、インク瓶が宝石のように並ぶコーナー…。
ただ、いつも見ているだけの光景を、スマホのレンズ越しに巡っていく。
撮影を終えると、アプリの画面で小さな円がくるくると回り始めた。
やがて、ポン、と音がして、万年筆の棚の画像が表示された。
「ありがとうございます。分析が終わりました。確認しますね。こちらは、『万年筆・高級筆記具』の棚でよろしいですか?」
「はい、そうです」
次に、ファンシーなノートやシールが並ぶ棚の画像に切り替わった。
「では、こちらは…『キャラクター文具』の棚ですね?」
「ううん、ちょっと違うかな。そこは『子供向けの、わくわくする文房具』の棚、って感じ」
「承知しました。『子供向けの、わくわくする文房具』の棚ですね。修正しました」
音声でのやり取りは、思ったよりもずっと簡単だった。
まるで、お店のことをよく知る友人と話しているような気分だった。
「ありがとうございました。準備はこれだけです。あとは、私たちにおまかせください」
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
音声と動画だけで、お店の登録が終わってしまいました。
でも、本当にこんな簡単なことで、何か変わるのでしょうか?文の半信半疑な気持ち、分かりますよね。
次回、ついにエピソード1完結です。
小さな奇跡が、彼女の店に訪れます。
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