あなたの声と、お店の物語 第1話:届かなかった声
はじめまして、作者です。今
日から新しい舞台「商店街編」が始まります。
主人公は、少し古びた文房具屋を営む星野文。
活気のない商店街でため息をつく彼女の元に、一通の不思議なメールが届きます。
土曜日の昼下がり。
『ほしふる商店街』のアーケードに差し込む光は、床のタイルのところどころが剥げた跡を頼りなげに照らしている。
観光地の喧騒から一本脇道に入っただけのこの場所は、まるで時間の流れが違うみたいに、ひっそりと静かだった。
「星野文具店」の店主、星野文は、ガラスのカウンターに肘をつき、大きなため息をひとつ吐いた。
彼女の背後には、祖父の代から受け継いだインクの匂いを染み込ませた棚が並び、色とりどりの便箋や、軸の美しい万年筆がひっそりと出番を待っている。
人付き合いは好きなのに、この静けさの中にはその相手もいない。
店の窓から外を眺めると、若い夫婦らしき観光客が、商店街の入口でガイドブックを広げていた。
女性の方が「こっち、何かあるのかな?」と興味深そうに商店街を覗き込む。
文の心臓が、かすかにトクン、と期待に跳ねる。
「…でも、何のお店か分からないもんね」
男性の言葉が、ガラス越しでも聞こえてきそうだった。
二人は結局、賑やかな駅前の方向へと歩き去っていく。
ああ、まただ。
美味しいお豆腐屋さんもある。
腕のいいクリーニング屋さんだって。
そして、うちの店にだって、ショッピングセンターにはない、特別な一本がきっと見つかるのに。
その声は、誰にも届かない。
その日の夜。
閉店後の店で、古いパソコンに向かって帳簿をつけていると、ポーン、と軽い音がしてメールの受信を知らせた。
差出人は、なし。件名にはこうあった。
『ほしふる商店街の皆様へ。未来への小さな一歩のご提案』
怪しい。
文はすぐに削除しようとした。
けれど、なぜか指が止まる。
「基本無料」「いつでもやめられます」という言葉と、「あなたの『お店の物語』を、探している人に届けませんか?」という一文が、心の柔らかい場所をちくりと刺した。
(このままじゃ、何も変わらない…)
文は、意を決してメール内のリンクをクリックし、言われるがままに、自分のスマートフォンに「@SHOP」というアプリをインストールした。
アイコンは、@マークに小さな屋根がついたような、可愛らしいデザインだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
新しい物語、いかがでしたでしょうか。
シャッター街になりかけた商店街の、少し切ない日常。文がインストールした謎のアプリ「@SHOP」は、彼女の救いとなるのでしょうか。続きは、また明日の更新で!
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