声に出せない“SOS” 第2話:“得意”の処方箋
プレッシャーのかかる仕事に、一人で苦しむ高橋。
上司の佐藤も、その変化に気づきながら、どう声をかけるべきか悩んでいました。
そんな時、あのシステムが静かに動き出します。
その日の午後。
佐藤は、マネージャー専用のダッシュボードを眺めていて、ハッとした。
『ワンチーム』から、彼女だけに見える「インサイトレポート」が届いていたのだ。
『分析レポート:高橋健太様について
・直近3日間のコードコミット(保存)頻度が、平均値より22%低下。
・キーボードのタイピングにおける修正率(バックスペースキーの使用率)が41%増加。
・チャットログにおいて、「すみません」「問題」「難しい」等の単語使用率が増加傾向にあります』
それは、高橋が「声に出せずにいるSOS」を、データが静かに可視化した瞬間だった。
佐藤がどうすべきかと思案していると、まるで彼女の心を見透かしたかのように、『ワンチーム』が動いた。
チーム全体のタスクボードに、新しい緊急タスクが追加される。
【タスク名:プロジェクトロゴとUIコンセプトの緊急ブラッシュアップ】
そして、佐藤にだけ、プライベートな通知が届いた。
『提案:上記タスクは、迅速かつ高品質なデザインスキルが求められます。
高橋様のスキルプロファイルは、本タスクの最適任者であることを示しています。
一時的に担当変更することで、現在のタスクにおけるパフォーマンス低下のリスクを緩和し、かつ緊急の要望にも応えることが可能です』
佐藤は、そのあまりに自然で、優しい解決策に、静かに感嘆した。
彼女はすぐに高橋の席へ向かう。
「高橋くん、ごめんなさい、急な話で。
クライアントから、どうしても今日中に、UIコンセプトをもう少し良くしてほしいって要望が入っちゃって。
デザインセンスが必要なこの仕事、高橋くんしか頼める人がいないの。
今の作業を一時中断して、こっちを助けてくれないかしら?」
それは、彼の能力を高く評価し、頼りにしているという、紛れもない事実だった。
高橋は、少し驚いた顔をしたが、「わかりました。やります」と、力強く頷いた。
お読みいただき、ありがとうございます!
直接「大丈夫?」と聞くのではなく、その人が一番輝ける場所をそっと用意する。
『ワンチーム』の、なんとも粋な「処方箋」でしたね。
この優しいおせっかいは、果たして高橋の心に届くのでしょうか。
次回、ついにこのエピソードも完結です。明日もまた、よろしくお願いします!
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