一人だけの“砦” 第3話:みんなの“地図”
『ワンチーム』が生成した、未知なるシステムの「設計図」。
それを手に、高橋は障害の原因究明に挑みます。
果たして、彼はチームの危機を救えるのでしょうか。
エピソード「一人だけの“砦”」、完結編です。
「…わかったぞ!原因はここだ!」
『ワンチーム』が生成した「設計図」を食い入るように見ていた高橋が、叫んだ。
彼は、ドキュメントに書かれていたシステムの構造を頼りに、複雑な迷路の中から、見事にバグの根本原因を突き止めたのだ。
彼の修正によって、システムは正常に復帰。
クライアントからの感謝の連絡に、チームは安堵のため息をついた。
数日後。すっかり元気になって出社した鈴木に、佐藤は今回の経緯を話した。
そして、『ワンチーム』が作ったドキュメントを見せた。
「鈴木さん。あなたの知識と経験は、会社の宝です。
でも、あなた一人が背負うには、あまりに重すぎる。だから、このドキュメントを元に、あなたの知識を、チームみんなの“地図”にさせてもらえませんか」
鈴木は、ドキュメントに静かに目を通していた。
そこには、自分が忘れていたような古い修正の意図や、判断の根拠までが、正確に言語化されていた。
自分の頭の中にしかなかった、職人としての人生そのものが、そこにあった。
彼は、自分が不在の間にチームが陥った危機を想像し、そして、自分の知識がチームを救ったという事実に、静かな責任感と、誇らしさを感じていた。
「…わかった。手伝おう」
その日から、会議室では、鈴木と高橋が、楽しそうにドキュメントを修正・追記する姿が見られるようになった。
高橋は思う。
本当のチームワークとは、ただ一緒に仕事をするだけではない。
一人ひとりが持つ知識や経験を、みんなの「地図」として共有し、誰か一人がいなくても、誰もが道に迷わないようにすることなのだと。
一人の天才が守る「砦」は、もうない。
代わりに、チームには、全員で未来へ進むための、確かな「地図」が手に入った。
エピソード「一人だけの“砦”」、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
知識は、独占する「砦」ではなく、共有する「地図」であるべき。
そんなメッセージが伝わっていれば嬉しいです。
さて、次に彼らを待つ課題は「交渉力の個人差」です。
また明日から、新しいお話が始まりますので、お楽しみに!
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