見えない“国境線” 第3話:国境線が“消える”時
『ワンチーム』が提示した、衝撃的なシミュレーション結果。
それを受け、関係者による緊急会議が開かれます。
果たして、彼らは手を取り合うことができるのでしょうか。
エピソード「見えない“国境線”」、完結編です。
緊急対策会議が招集された。
会議室に入ってきた営業部の冴木の顔に、以前のような自信はなかった。
事業部長が、メインスクリーンに映し出された『ワンチーム』のシミュレーション結果を、厳しい顔で見つめている。
「…冴木くん。
君の言う“情熱”が、会社にこれだけのリスクをもたらす可能性について、何か意見はあるかね?」
これはもう、佐藤の「開発部は大変だ」という主観的な訴えではない。
会社全体の利益に関わる、経営判断の問題だった。
冴木は、初めて、自分の受注が引き起こす「痛み」を具体的に理解した。
開発部が疲弊するだけでなく、既存の他のクライアントにまで迷惑をかける可能性がある。
それは、営業部の成績にも、いずれ跳ね返ってくることだ。
「…申し訳ありません。
開発の皆さんの状況を、これほどとは…」
冴木は、深く頭を下げた。
データという「共通言語」を前に、彼らは初めて、同じテーブルについて建設的な対話を始めた。
最終的に、クライアントに事情を説明し、6ヶ月での段階的な納品という、現実的なプランで再交渉することが決まった。
会議の後、冴木が開発フロアにやってきた。
彼は、高橋や鈴木のデスクに歩み寄り、もう一度、頭を下げた。
「この度は、本当に申し訳なかった。
これからは、必ずリソース状況を確認してから、お客様と話をするようにします」
その誠実な言葉に、高橋たちも静かに頷いた。
彼らの間にあった、見えない「国境線」が、少しだけ、溶けていくのが分かった。
システムがもたらしたのは、単なるデータではない。
部署や立場を超えて、互いを思いやり、一つのチームとして未来を考えるための、「優しさ」の土台だった。
エピソード「見えない“国境線”」、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
対立をなくすために必要なのは、感情ではなく「共通言語」としてのデータなのかもしれませんね。
さて、次に彼らを待つ課題は「埋もれてしまう個人のアイデア」です。
また明日から、新しいお話が始まりますので、お楽しみに!
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